第28噺「悪魔の血」
〈ねぇ、気づいてるんでしょう?〉
初の京都での任務の夜、レイはストレスで眠れない体に鞭を打ち無理矢理眠りについた頃……何処からか自分とよく似た声が聞こえてきた。
折角眠れていたのに起こすとは……「コイツ斬ってやろうか」と若干殺意が湧いたが、眠いのであまり相手にしないでおこうと瞼を閉じたまま背を向け、「誰…?」と掠れた声で問う。
〈あら、声を聞いても分からないのかしら?こんなにソックリなのに〉
レイはその言葉に疑問を感じ、重い瞼を開け相手の方を振り向いた。
そこにいたのは黒髪金目、羊の様な角と……父親と全く同じ色をした、自分と瓜二つな悪魔だった。
第28噺「悪魔の血」レイside
とりあえずこんな状況で寝たままだとマズイので、私は起き上がり周りを見回す。どうやら此処は私の知っている場所ではないようで、辺りは暗く遠くが見えない。傍には床に炎で刻まれた大きな魔方陣が描かれており、魔方陣を囲む様に鎖やら南京錠がジャラジャラと大量に巻き付けてあるが、その内の幾つかの南京錠は床に落ちていた。
落ちていた南京錠は上の半円部分が熔けている………恐らく炎で焼き熔かしていったのだろう。
魔方陣の中心にいる悪魔が此方を見つめていて、暗闇の先から伸びた鎖についている手枷で両手を拘束されているようだ。
「此処は何処なの?」
〈…………〉
「……貴女は誰?」
〈………………〉
この野郎……私の眠りを妨げた上に無言を貫くとはどういうことだ、斬っていいかなコイツ?
「さっきから喋らないけど…………何か言ったらどうなの?」
〈……その様子だと、まだ気づいてないみたいね〉
「何……?」
〈私の事は貴女自身が気づかなければならない事よ………そうね、此処は貴女の精神世界とだけ言っておこうかしら〉
一体何を言ってるんだコイツは、私の精神の中?
そう疑問に思っていると、段々と視界がボヤけてくる。
〈そろそろ時間みたいね、また会いましょう。早く私に気づかないとどんどん浸食が進むわよ〉
「ちょっと待って、結局あんたが誰か分かってなッ………!!」
〈私は貴女の……〉
「ッ……!!」
ガバッなんだったんだ今のは………夢?
いや、夢にしては鮮明過ぎる。夢は普通曖昧なもので、大抵は起きる頃には忘れていることが殆どだ。
にしてもあの悪魔は一体何者なんだろうか……私の中に悪魔が寄生しているわけじゃないし、そんな悪魔と接触した覚えもない。
それにあの容姿……父さんにソックリだった。
父さんに何か関係があるかもしれない、これは調べてみる必要があるな。
そう思っていると、襖の向こうからよく知っている声が聞こえてきた。
「レイ、起きてる?」
「ん、起きてる。入っていいよ」
私の返事を聞いた雪男は、スッと襖を開け私の隣まで来て座る。
「おはよ、今日はやけに早いね。どうしたの?」
「うん、昨日のことなんだけど…」
「あぁ、あのワゴン車ね。」
昨日私達はシュラの使い魔のナビゲーターを頼りに、不浄王の左目の行方を追っていた。しかし辿り着いた先にあったワゴン車はフェイクだった……つまり外れを掴まされたということだ。
「藤堂もやってくれるよね、左目を片目に入れた状態なのに喰べた腐の悪魔の力で囮を作るなんてさ。完璧に悪魔の力を使いこなしてる」
「あんな奴野放しにしていられない、こんな事する奴はいつか絶対自分に返ってくる筈だ」
「因果応報ってヤツね……悪い行いをしていると、その分自分が報いを受ける日が来る」
二人で藤堂へ悪態をついていると、雪男は立ち上がり「じゃあそろそろ戻るね、ごめん早くに起こして」と言って部屋へ戻ろうとする。私はそれを見て咄嗟に雪男のズボンの裾を掴んだ。
「……?どうしたの?」
「あ、ごめんその………まだ起きるには時間早いし、一緒に…寝ない?」
一 体 何 を 言 っ て る ん だ 私 は「えッ……///」
「あ、いや別に変な意味じゃなくてッ!!
その………妙な夢見たから……傍にいてほしいな…と……」
そう言ってしどろもどろになっている私を見て雪男ははにかみながら笑い、私の布団に入ってくる。
「なんか…また眠くなってきた……」
「流石に早起きし過ぎたかな、まだ朝五時だもんね。本当にごめんね早く起こしちゃって;」
「いやいいよ、私も変な夢見てたから丁度良かったし。皆が起きるまで二度寝する?」
「んー……そうしようかな」
そう言って私達はすっかり寝る気満々になり仰向けになる。
「そういえばレイ」
「んー?」
「さっき言ってた妙な夢って……何?」
「…………」
まだ、今の段階では雪男には言えないかな。
「いや、そんな凄い夢じゃないから大丈夫だよ。大したことなかったから」
「そう?なら良いんだけど……何かあったらすぐに言ってよ」
「………うん、ありがとう」
ちゃんと原因が分かってきたら、貴方にちゃんと話すよ。だからそれまで、もう少しこのままでいさせて。まだこの温もりを…感じていたいから……
To be continued…
後日談↓
ガラッ
「おいレイ、今日の予定……………って、雪男ッ!?」
「ん……ハッ!!(゜ロ゜)と、父さんッ!?」
「お前らお取り込み中か?ついに一歩踏み出すのかおい?」ニヤニヤ
「そもそも嫁入り前の乙女の部屋にノック無しで入ってくるとは何事ですかッ!!」バキィイッ!!
「痛ってぇええッ!!いや扉じゃなくて襖ぁああああッ!!」
「どっちにしろ許可得てから入りなさいこのベタなお約束野郎がぁあああッ!!」
オマケ↓
NGシーン
「最近行き詰まってた分ちゃっちゃと終わらせるぞー!よーいアクションッ!!」パァアンッ!!
藤堂へ悪態をつきながら私が布団の横にスペースを作ると、雪男は布団へ入り二人でくっついて温もる。
「なんかまた眠くなってきたね」
「流石に早起きし過ぎたかな、まだ朝五時だもんね。ごめんね早くに起こしちゃって」
「いやいいよ、私も丁度目が覚めたところだったから。皆が起きるまで二度寝する?」
「んー……そうしようかな」
「はいカットォオオオオオッ!!お前ら恥じらいはどうしたッ!!
それでも高校生かお前らッ!!そんなところで熟年夫婦発揮するなぁあッ!!」
「「あ」」
終われ(^q^)