第27噺「お酒は二十歳になってから」
※セレネ取扱説明書
・絶対にアルコールを与えてはならない
(相手をどう思ってるかとかをドストレートに言うようになる、素直過ぎる)
・負傷や精神面で弱ってる、酔っている時に悪魔を近づけてはならない(特に契約してる悪魔)。
・以上の事が起きた場合すぐにマトモな人間が傍にいてあげること。酔うと精神が不安定になり、それに反応した悪魔がセレネに近づく者を誰彼構わず攻撃する。
特に契約している悪魔は近寄らせないこと。下手すれば契約者を捕食しようとするからである。
―京都出張所―
「…………おいシュラ、此処にある袋の中身……全部ジュースじゃねぇか?」
「え、やっべ生徒全員に私らの酒が……ああ今夜の楽しみがああぁ……」
「それ、アイツにも渡したのか?」
「アイツ?あぁ黒猫か、アイツ突然帰ってきたと思ったら二人分持ってどっか行っちまったぜ?」
「なんで追わないんだ馬鹿野郎ッ!!アイツはセレネの分まで持っていったんだぞッ!!」
「は?………っておい何処行くんだよ獅朗ぉおおおおおッ!!」
第27噺「お酒は二十歳になってから」サタンside
ど う し て こ う な っ た 。まさかジュースがチューハイだったとは……あのデカパイ良いミスしてくれたぜ、これで酒飲め……じゃねェよ今それどころじゃねェよ。
俺は頬を赤らめてほにゃーとしているセレネを見て溜め息をつく。ホントどうするよコレ。
なんで一口で酔うんだよ、しかもチューハイだぜ?度数低いのにここまで酔う奴そうそういねェよ。にしてもコイツいつもよりベッタリだな、こりゃ大人になっても飲ませねェ方がいいな。いつ男に食われるか分かったもんじゃねェ。
「えへへーさっちゃん大好きー!我儘で俺様だけどいっつも傍にいてくれるしー!」
『なんだよ急に、ストレート過ぎだろお前。』
「でもねぇ、お父さん殺したことだけは許せないんだー。興味湧いて近寄って来たのは分かってるんだよ?悪魔なんだからそういうのは仕方ないって分かってるんだけどねぇー……やっぱりそれだけは許せないの、僕の大切なお父さんだったから」
『…………』
「それでもねぇ?なんでだろう……何故か嫌いになれないんだ、さっちゃんのこと。お父さん殺されたのに、それでもさっちゃんが大好きなんだぁ…」
『セレネ……』
「もう自分でも……ワケ…分かんな………Zzz…」
………どうやら寝ちまったみてェだな。
にしてもそれ、もし本当なら…………
『もうとっくに……俺に堕ちてるってことじゃ
…………ッ!?』
ドクンッなんだこれ……なんだこのウズウズする感じ………
前の風呂の時の比じゃねェ、セレネを見てると涎が止まらねェ。アルコールで酔い赤くなった頬、熱っぽい息、火照った体はまだ幼くプニプニしていて柔らかくて……思わず齧りつきたくなるような………なんて旨そうなんだ。そういや虚無界にいる吸血鬼辺りが「若い餓鬼の肉は新鮮で旨い」って言ってたな。
俺がそう思いながらセレネの頬へ触れると、セレネは俺の手に擦り寄ってくる。
『………』
少しだけ…というようにセレネの手をとりペロリと手首を舐めると、「ん……」とピクリと反応する。そこからツツー…と袖辺りまで舐め、俺に寄りかかって寝ているセレネを軽く押し倒し、喉仏まで口を運ぶ。
大口を開けて齧りつこうとしたその時、思いがけないセレネの一言でピタリと止まる。
「お姉…ちゃん……」『……ッ!!』
…………俺は今、何をしようとした?
俺は何も考えずに本能のままに食おうとした。
もしコイツが寝言を言わなければ……正気に戻らずそのまま喉仏に齧りついて貪って、若い肉の味を堪能しながら骨までしゃぶっていたことだろう。そう思うとゾッとした、何だったんだ今のは……コイツは一体
“何”だ?
「……正気に戻ったか、魔神のお前でも正気じゃなくなるんだな」
『聖騎士(藤本)………』
砂利を踏む足音と共に現れたのは、聖騎士だった。
聖騎士は俺の隣まで来て止まり、手を差し伸べてきたのでそれを掴んで立ち上がる。
「お前がセレネに噛みつきそうだったから飛び蹴りしようとしてたんだけどよ、急に止まったからやめたわ。いやー良かった良かった!」
『飛び蹴りってテメェ……ッ!!』
「ニャハハハハッ!!まぁ正気に戻ったんだから良いじゃねぇかッ!!」
『それより、今のはなんだったんだよ。お前は知ってたんだろ?このこと。』
「俺も詳しいことは分かんねぇが……多分、自由に悪魔召喚出来ることへの対価みてぇなもんじゃねぇかと俺は思ってる。」
対価か………確かにコイツの能力の高さに疑問を持ったことはあるが、それがデフォルトになりすぎてあまり気にしたことは無かった。
「そもそも体が小学生のまま時が止まってんのに、上級悪魔をホイホイ喚び出せる訳がねぇんだよ。そんな小さい体に高い能力は普通は納まらねぇ、でもセレネは他の餓鬼と違って精神が大人……いや、そこらの大人より大人なんだよ。寛容さっつーのかな?相手のことを理解しようとする心、それは大人でも難しいことだ。現にセレネは悪魔の事を理解してやってる、だから悪魔とリンクしやすいってのもあるんだろう。」
『…………なんでだ?まだ12歳の餓鬼だろ?なんでコイツは誰彼構わず相手を受け入れるんだ?』
「んなこと俺が知るかよ、後は……
血筋か」ボソッ『あ?小さくて聞こえねェよなんつった?』
「なんでもねぇよ、ほらもう遅いんだしさっさと帰ろうぜ。
餓鬼はもう寝る時間……って、そっかもう寝てんな。ニャハハハハッ!!」
なんて呟いたか問いただしたかったが、流石に餓鬼をこれ以上遅くまで外に出しとくのも危険ってことで、俺はセレネをおぶっている聖騎士の後ろを着いていき、帰路へと向かった。
To be continued…