おまけ「逆転懲戒」
懲戒尋問を終えた後、燐はメフィスト達と共にキャンプをしていた森へ戻ってきた。
「条件1、“半年後の祓魔師認定試験に合格すること”………色々条件は出ましたが、寛大なご沙汰で大変結構でした」
「何が寛大だ、これからどうすんだよ;」
藤本がメフィストにそう言うと、「それは……ほら」と言ってシュラの方を向く。シュラが自身を見るメフィストに疑問を抱いていると…
「頼むシュラ……俺に剣を教えてくれッ!!」
シュラの目の前には、膝をつき額を地面に擦り付け、土下座している燐の姿があった。
「半年で出来る所まででいい……頼むッ!!」
メフィストは燐のその姿を見たシュラに、「ネッ☆」と舌を出しペコちゃん顔になりウインクする。
「ネッ☆じゃねーよ!!何奴もコイツもアタシに押しつける気かッ!?」
この間の藤本の剣の頼み事といいメフィストの押し付けといい……シュラは二人の上司に怒りを覚える。だが燐の態度を見て怒りを抑え、小さな溜め息を漏らして笑みを浮かべた。
「まぁ、この間よりはマシな面になったじゃねぇか……分かった、お前を弟子にしよう」
シュラは自分の未熟さに涙する燐を弟子として迎え入れることを決め、自宅の鍵を使い帰っていった。「さて、我々も帰りますか」と言うメフィストの言葉に、藤本とサタンも一緒にゾロゾロと扉へと向かっていく。そんな中、未だに土下座のまま顔を上げない燐を見たセレネはしゃがんで燐の顔を除きこむと、燐は必死に涙が出そうになるのを堪え歯を食い縛っていた。燐は皆に自分が泣く姿を見られたくなくて、ずっとその体勢のままいるのだろう。
「………りーんちゃんッ!!」ガバッ
「うわぁあッ!!セレネッ!?」
そんな姿を見たセレネは燐に抱きつき、燐は倒れそうになるがセレネをしっかりと抱き止め体勢を整え、セレネが立って燐が膝立ちの状態になり同じくらいの目線になる。
「危ねぇだろセレネ!お前が怪我したらどうす「涙引っ込んだ?」え?………あ」
突然の出来事に涙が出そうになったのがおさまった燐は、目をぱちくりとさせセレネを見つめる。
「燐ちゃん、さっき言ったでしょ?どんな事があっても、僕は燐ちゃんの味方だよって!」
「…………でもお前、そんなこと言ってたら…お前までアイツらに嫌われるぞ」
「大丈夫だよ、僕は気にせず皆に話しかけ続けるから!そんな理由で燐ちゃんから離れるわけないでしょ?」
「セレネ……」
「大丈夫、燐ちゃんを一人になんてさせないよ……大丈夫。」
“大丈夫”、その安心する魔法の言葉を言いながら自身の頭を撫で続け微笑みかける義妹を見て、燐は衝動的になってセレネを抱き締める。
「セレネ」
「うん、此処にいるよ」
「セレネ……」
「大丈夫」
「セレネッ……」
「大丈夫だから」
「……………………Eins、Zwei、Drei☆」ボフンッ
「うわぁあッ!!」
「えっなんだッ……!?」
そう言ってメフィストがパチンと指を鳴らすと、ボフンッとセレネはピンクの煙に包まれ、メフィストの腕の中に収まる。
「さぁ奥村君、貴方もお家へ帰りなさい☆いつまでそこに座っている気ですか?」
「ちょっとメフィスト吃驚したじゃんッ!!」
「私はただフラグをへし折っただけですよ、これ以上ライバルを増やしたくないので★」
「へ?ライバル?」
「(あれ、俺今……あっぶねぇッ!!下手したらロリコンの仲間入りしちまう所だったッ!!)」
『悪魔キラーかお前は;』
「??」
セレネは大人組の呆れ顔にハテナを浮かべている、悪魔ばかりにフラグを立たせる少女は最早フラグ職人の域だ。
「奥村君、明日から貴方には特別カリキュラムに入ってもらいます。落ち込んでいる暇はありませんよ?」
「…………」
「仲間ともう一度和解したいのなら、早くその炎をコントロール出来るようになりなさい。出来なければ、貴方は一生友達が作れないままになるかもしれませんよ?それでもいいんですか?」
―それが嫌なら、死ぬ気で習得なさい―
メフィストは真剣な瞳でそう言い、燐はその眼に一瞬たじろぐ。そんな燐を見たメフィストはすぐにいつもの胡散臭い笑みに戻り、「ではまた☆」と行ってセレネ達と共に扉を潜り帰っていった。
「…………しえみ……皆………」
燐は仲間達の事を思い浮かべ、一人雨の中空を見上げた。
To be continued…