第14噺「魔神の里帰り(一応R指定)」
「よぉメフィストー、こないだの書類持ってき………ってどうしたその顔ッ!?」
「あぁ藤本か、書類はソコにでも置いておけ。私は今それどころではない」
候補生試験が終わった次の日、藤本は締め切りギリギリになって書類を提出しに来たので怒られると思っていたのだが、今はそれどころではないようだ。メフィストは物凄く険悪な表情で机に片肘をつけ、頬杖をつきながらもう片方の手でトントンと指で机を叩いている。
「一体何があったんだよ、阿修羅みてぇな顔して。どのホラー映画も顔負けだぜ」
「阿修羅とは失礼なッ!!実は先程、父上が虚無界へ里帰りに行ったのだ……セレネを連れて。念の為アマイモンに偵察へ向かわせた」
「ハァッ!?Σ(°Д°;)」
第14噺「魔神の里帰り」
セレネside
やっほー皆、僕は今何処に来てると思う?
え、メフィストがさっき言ってた?あははーじゃあ皆分かってるよねー此処が何処か、あはは……;
ヒュウウウゥゥ………
「…………来ちゃったよ虚無界;」
『お前の体頑丈だよなァ、普通の人間なら虚無界来ただけですぐにお陀仏だぜ?流石ハーフだなァ』
「えッ!?そんな危ない橋渡らせないでよッ!!」
ちょっと何実験紛いなことしてんのッ!?下手したら僕死んでたんじゃ……って痛い痛い首噛まないで血出てるよ!!器回復させるくらいなら虚無界ゲート喚び出さなきゃ良かったじゃんッ!!
「本当に何もないっていうか……寂しい所だね」
『だろ?だから暇で仕方なかったんだよ。俺の城案内するから着いて来い』
「えっ城?ってデカッ!?何このラスボス臭漂う城ッ!!」
目の前に聳え立つ城は、まるで悪魔城ド〇キュラに出てきそうな雰囲気だった。
ギイイィ……
「お帰りなさいませ父上」
「うわぁあアスタロトッ!?ていうか自分の父親にだけ敬語なんだ……;」
『よォお前ら帰ったぜー、まァまた2〜3日したら物質界に戻るけどな』
城の中には高位の悪魔がうじゃうじゃいて、扉の近くにいたアスタロトがさっちゃんに傅く。さっちゃんと僕がレッドカーペットを歩いていくと悪魔達が避けて道を作っていき、その先にあったのは……魔神が座るに相応しい豪華な玉座だった。
さっちゃんは玉座にドカリと座り、頬杖をついて悪魔らしい表情でニヤリと笑う。
『何突っ立ってんだァ?お前も此処に座れ』
「へっ!?ちょッ……!?」
そう言ったさっちゃんにグイッと腕を引っ張られ、僕はさっちゃんの膝に座らされる。ソコから見える景色は、所謂魔王目線の眺め。沢山の悪魔が傅いているこの状況に、僕は何が何だか分からなくて頭にハテナを浮かべる。
「……遂に虚無界まで来たかチビ、兄上や父上に気に入られて……ホント規格外だよお前は」
『んなこと言ってるお前だって、この餓鬼気に入ってんだろ?』
「グッ………返す言葉も御座いません;」
「何この状況、此処には無理矢理連れて来られただけなのに………;」
「あの、サタン様……」
傅いていた悪魔の一人(因みにアスタロトは僕達の隣に立ってる)が挙手した。
あ、よく見たら吸血鬼だ。へぇ、虚無界では羽根普通に出してるんだ。さっちゃんは『おう、どうした?』とフレンドリーに吸血鬼に聞く。
「その美味しそうな子どmゲフンゲフン、その人間の子供は一体……?匂いからしてハーフのようですが」
ちょ、今美味しそうって言ったよね!?やめて食べないでね!?そういえば前に吸血鬼の友達が若い子供の方が美味しいとか言ってたッ!!
『あァ“コレ”はな、この俺と初めて契約を交わした人間だ。コイツから話持ちかけてきたんだぜ?中々面白いだろォ?』
ちょ、下顎撫でるのやめて擽ったいよ!!こんな大勢の前でお腹に腕回すのやめてッ!!
僕の頭に顎を乗せながら、『因みに俺の器作ったのコイツな』とさっちゃんが言った途端、ザワザワと皆が驚きの声を上げる。
「あんな子供が!?」
「そういえば聞いたことがある、あのサマエル様を使い魔にした子供がいると………」
『まァこんな奴だから俺や八候王の何人かがコイツを気に入ってる、誰にも取られたくねェ程にな。そこで俺はある事を考えた』
そう言ったさっちゃんの所に「びゅーん、シュタッ!」と効果音を言いながら、アマイモンが他の悪魔達の頭上を飛び越えてやって来た。どうやら皆に紛れて聞いていたらしい。
「あれ、アマイモン来てたの!?」
「はい、兄上からセレネの様子を見てこいと言われたので見に来ました。僕も心配だったんですけど………大丈夫みたいですね。」
「いやこの状況の何処が大丈夫なの!?確かに殺される心配は無いけどさぁッ!!」
『セレネを八候王の誰かに嫁がせる。そうすりゃ誰にも取られることはねェだろ、アマイモンもサマエルに伝えとけ』
「え、ちょッ!!何勝手に決めてるのッ!?ていうかこないだの冗談じゃなかったのッ!?(詳しくは妹の憂鬱part1後日談でry)」
『コイツが欲しけりゃ、他の奴より先に全力で堕とせってな』ニヤリ
そう言って、さっちゃんは悪どい笑みを浮かべる。いやだからさ、勝手に決めないでよ。八候王の婚約者とか嫌だよ僕。自分達の年齢考えてみてよ、12歳と数万歳の結婚て。ロリコンどころじゃないよもう次元が違うよッ!!ヨボヨボのおじさんじゃん!!いや皆若々しいけどッ!!
「愛は執着の妄想なんて言ってるクセになんで結婚させるのッ!?」
『あァ?人間の男に取られるくらいなら俺の息子達と結婚させた方が取られる心配ねェからに決まってんじゃねェか』
「政略結婚なんて嫌ぁぁあああッ!!」
その後、半泣き状態の僕を常識のある何人かの悪魔が僕の気持ちを察してあやしてくれた。流石に中学生にもなって高い高ーいは恥ずかしかったけど、見た目小学生だから仕方ないと思う。ていうか半泣きの僕を見て笑ってたさっちゃんには暫く無視を決め込もう、うん。
††††††††
あれから日が暮れ、今ではすっかり夜。
僕は使用人に客室へ案内してもらい、現在はベッドの中。もう時間も遅いし寝ようと思ったんだけど………
「…………どうしよう、眠れない;」
あれー、可笑しいな?今まで一人でも眠れたのに……なんでだろう、ちっとも眠れない。いや最近はずっとさっちゃんと一緒に寝てたけどさ……って、それじゃん。僕いつの間にか一人で眠れなくなっちゃった!?いつもさっちゃんと寝てるから、それに慣れちゃって一人で寝るのが怖くなってるッ!?
さっきお風呂一緒に入った時『別に俺と同じ部屋で良いだろ』って言われて丁重にお断りしちゃったからなぁ……今更言いにくいなぁ;
まぁでも眠れないものは仕方ない、さっちゃんの所に行こう。そう思い僕は部屋を出て、薄暗い廊下を歩く。
「うーん何処だろう、近くの部屋にいるとは言ってたけど……もう当てずっぽうでいこう、えいッ!!」
そう言って僕は適当な扉を開いた。
確かにさっちゃんはいたけど……これは…………
「はぁっ……サタン様ぁ………」
「あっあぁッ!は、激しっ……あぁああッ!!」
「もっと私にっ…サタン様のを下さいませっ……」
ぐぁぁあああああああああああああああああああああああああああああッ!!
「…………………………」パタンッ
僕は見た目賢者モードで急いで扉を閉め、一目散にがむしゃらに走り去った。偉い僕、よく耐えたッ!!誰か口に出して叫ばなかった僕を誉めてッ!!そういう行為をすることは事前に伝えといてよぉぉおおお見ちゃったよぉぉおおおおッ!!
頭の中で葛藤しながら走り続けていると、曲がり角で突然現れた誰かとぶつかり、ポスッと抱き止められる。
「ふぉおおビックリしたッ!!アマイモン!?」
「はい、僕です。どうしたんですか?そんなに慌てて」
「いやその、一人じゃ眠れないからさっちゃんと一緒に寝ようと思ったんだけど……その……部屋に…」
「あぁ、父上の夜とg「いやぁああ態々口に出さないでぇえええッ!!」………一人じゃ眠れないんですか?」
「うぅ……中学生にもなって恥ずかしいけど;」
「……だそうですよ、父上」
「あれ、いつの間にッ!?」
バッと後ろを振り返ると、いつの間にかさっちゃんがいた。
『餓鬼かお前は………いや餓鬼だったな。最初から素直に言やァ良いじゃねェか、ほら俺の部屋行くぞ』
「え、だってさっちゃんの部屋ってさっき……」
『あの部屋はアイツらのだ、俺の部屋は最上階にある』
「さ、最上階……なんでそんな面倒くさい所に?」
『分かってねェなァ、ラスボスの部屋は最上階って昔から決まってんだろ?』ニヤリ
…………あぁ、RPGでラスボスが最上階にいるお約束が出来たのはさっちゃんが原因か。僕はそう悟りながらさっちゃんの部屋へ向かい、一緒にベッドへ入った。
「スー……スー………」
『……寝るの早すぎだろお前、ベッドに入って2〜3分しか経ってねェぞ?;』
人間の敵地で、その上魔王が隣にいるというのに安心して眠る少女を見て、サタンは思わず呆れてしまう。『コイツは俺がラスボスだというのを忘れてないか?』と。サタンは自身の腕を枕にして眠るセレネを体の上へ乗せ、頭を自身の胸へ預けさせる。
『安心しきった顔しやがって……俺がいなきゃ眠れないってどういうことだよ、誘ってんのかよおい』
そう言ってサタンはセレネのお腹に乗せていた自身の手を下へやろうとした……が、
「ん……お父……さん………」
『…………………俺はイフリートじゃねェっつーの』
セレネの父親を覚えていたサタンは下へやろうとした手を止め、セレネの頭を優しく撫でた。その時魔神が何を思っていたのかは、誰も知らない。
↓おまけ
里帰り最終日、その頃のアマイモンin遊園地
「おーにさーんこっちら、手ーの鳴ーるほーうへ」
「一々尻振るなムカつくッ!!」
「婚約者に教えてもらいました」
「は?婚約者!?」
To be continued…