第1.5噺「魔神との契約(後編)」
セレネside
燐兄は驚いて腰を抜かし、僕はあまりの出来事に目を見開いて固まった。そんな僕らの様子を見て、サタンはニヤニヤしながら話し出した。
『よォ!息子、元気ィ?可愛い我が子の為にこの俺様自ら迎えに来てやったぜ〜』
「何そのフレンドリーさ、シリアスな雰囲気台無しじゃん」サタンの軽い言い方に思わずツッコんでしまった。
何その軽さ、緊張してた僕の気持ちを返せ。
……あれ、なんで僕の方を見てビックリしてるの?僕何か変なことした?;
『……まさかこの俺にツッコむ奴がいるとは』
「そりゃあツッコむよあの軽さなら。そもそもサタンの目的って何?燐兄迎えに来たとか言うけど。」
『あ?んなもん物質界が欲しいからに決まってるだろうが』
「いやもっと根本的な話だよ、願望とかあるんでしょ?」
『願望…』
サタンはその言葉に反応し、少し黙りこんだ後に話してくれた。
本当は物質界が気になるから来たいのに自分に見合う器が無いから来れなくてムシャクシャすると。
それを聞いた僕は、ある一つの可能性が浮かんだ。
そういえば、メフィストの書斎にあった本に昔一部の地域で使われていた悪魔召喚術が載っていた。
器を召喚者が作って、召喚する悪魔にその器に憑依してもらうという方法。僕の体質ならこの方法でいけばサタンの器を作れるかもしれない。
「……僕なら作れるかもしれないよ、君の器。」
『は…?』
「ねぇ、サタン……僕と契約しない?」
『この俺と契約だとォ!?正気かお前ッ!?』
「僕が君の器を用意する変わりに、君は獅朗ちゃんから出ていくこと。そして物質界に危害を加えないこと、それが契約内容だよ。衣食住の保障もする、どう?結構良い話だと思うんだけど。」
『…………』
「あれ?おーい、サタン?」
『……クックックック…………ギャッハハハハ!!お前面白ぇ奴だなァッ!!この俺と契約?人間…しかも小娘が!?アッハハハハハ腹痛ェ久々に腹が捩れッ…ギャハハハハハッ!!』サタンはヒィヒィ言いながらお腹を押さえて大笑いしている。酷いなぁ、そこまで笑うことないじゃないか。
サタンは笑いながら先程まで掴んで持ち上げていた燐兄の頭を離す。
……今思いっきりゴンッ!!てイヤな音したよ。
燐兄気絶しちゃったよ、もう少し優しく降ろしてあげてよ可哀想じゃないか。自分の息子なんでしょ?;
一頻り笑い終わると、サタンは僕に近づいて来てニヤリと笑った。
『この俺に契約を持ちかけてきた人間は初めてだぜ……気に入った。お前、名前は?』
「………時渉 セレネ」
『セレネ、お前の話にノッてやる。使い魔になるわけじゃねぇが面白そうなことがあれば協力してやるよ。もしお前がつまんなくなったら…そうだなァ……その時は骨一本も残さずお前を喰い尽くしてやる』
精々俺を楽しませてくれよ?そう言ってサタンは僕の首筋に噛みついて、契約の印をつけた。
To be continued…