第12噺「お泊まりドッキリ大作戦(中編)」
セレネside
「…はい、終了。プリントを裏にして回してください、今日はここまで。
明日は6時起床。登校するまでの1時間、答案の質疑応答をやります」
雪兄の終了の合図を聞いて、皆どっと疲れが出たようだ。今の時刻は夜の9時、晩御飯を食べ終えてから今ままでずっと勉強尽くしだったのだ。
因みに晩御飯はお姉ちゃんと燐兄特製ビーフシチュー。ものっそい美味しかった、おかわり戦争勃発してた。
この寮にはクーラーなど殆ど無い。
今いる部屋には一応扇風機を置いていたのだが、初夏のこの時期には流石にキツい。勉強が終わり扇風機の前を占領した僕は座り込む。
ブイーン……
「わ れ わ れ は う ちゅ う じ ん だ ぁ あ あ あ」
「なんて懐かしいことしてはりますのセレネちゃんッ!!」
「ちょ…ちょっと僕夜風にあたってくる……」
「おう、冷やしてこい……」
ヤバい、燐兄が僕なんて言ってる。これは重症だ。だからもう少し小休憩挟んだ方がいいって雪兄に言ったのに………「兄さんは普段から勉強しないから今の内にたっぷりさせとかないと」って;
「朴、お風呂入りに行こっ」
「うん」
「お風呂!私も!」
「セレネも行くでしょ?」
「うん行くー!おっ風呂♪おっ風呂♪」
よっし久し振りにお風呂で落ち着けるッ!!
前に嫌な思いしたからね、さっちゃんは反省するべきだと思うよ。おっさんと子供とか絵面的にアウトだよ。(※詳しくは妹の憂鬱part2でry)
さっちゃんがジッと此方を見ていたけど無視して、しーちゃん達と一緒にお風呂場へ向かった。
※セレネはお風呂へ向かったのでサタンsideに切り替わります、男共の下ネタに注意です。
…………アイツ俺の視線気づいてて無視しやがった、いつか覚えてろよ。そういやアイツ尻尾いいのか?アイツも尻尾あっただろ。
「うはは女子風呂かぁ、ええなぁ……こら覗いとかなあかんのやないんですかね!」
「志摩ッ!!お前仮にも坊主やろッ!!」
「また志摩さんの悪いクセや…;」
「そんなん言うて二人共興味あるくせにー!」
「セレネがいない間暇だな…」と思っていると、ピンク頭(アイツ曰く志摩次郎)が面白そうな話をしていた。
『良いんじゃねェの?面白ェこと考えるじゃねェかピンク頭、覗きは青春の一つだと思うぜェ?』
「あ、さっちゃんさんもそう思いはります?なら一緒に覗き行きまへん?」
『俺は餓鬼の裸なんざ興味ねェよ、俺が好きなのはナイスバディの姉ちゃんだ。』
「流石大人やわぁ、俺もグンパツの女の子大好きや!あのラインが堪らへん!!」
『お前分かってんじゃねェか。「上は大水下は大火事」漢にとって正解はなァんだ?』
「据え膳食う前における脳と本能」`・ω・)キリッ
「……志摩君、さっちゃんさん、一応此処に教師がいるのをお忘れなく。
あと時渉先生も入浴中なので絶対に他の男に見せるわけにはいきません。」
おいコイツ自分の恋人だけ強調したぞ、普段キレない奴がキレると怖いっていう典型的なタイプだな。
「え、もしかして時渉先生と付き合うとるんッ!?羨ましッ!!王道な美男美女カップルやないですかこのぼっちの敵ッ!!」
『俺の前でイチャイチャしたら目の前で彼女犯すぞこの黒子眼鏡がッ!!』
「そんな事する前に祓いますよ」ニッコリ
俺達が雪男にぼっちの嫉妬オーラを出していると、風呂場から腐の眷属の気配がした。
『……………おい雪男、先に行ってるぞ』
「え?何が……「キャァァアアアッ!!」……ッ!!風呂場からッ……行きますよ皆さんッ!!」
「えぇッ!?ちょ、先生早ッ!!」
俺は雪男より先に部屋から出て風呂場へと向かう。
『いよいよ始まったか』
女の悲鳴を合図に、楽しいドッキリが始まった。
†††††††††††
セレネside
「セレネあんた尻尾あったのッ!?」
「うん、僕のお父さんが悪魔だったんだ」
「わぁ……真っ白でふわふわ………触っても良い?」
「良いよ!あんまり強く握らないでね?」
しーちゃん達三人共、僕の尻尾に興味津々だったので触ることを許可した。
「因みにお姉ちゃんのは真っ黒だよ」
「え、時渉先生もあるのッ!?先に湯槽に浸かってて分からなかったッ!!」
「…………私のは触らないで下さいね、尻尾に触れられるのは慣れていないので。」
そう言って自分の尻尾をきゅっと軽く抱き締めるお姉ちゃん。お姉ちゃん尻尾だけ僕より異様に敏感だからなぁ……前に獅朗ちゃんが気になって触ったら、お姉ちゃんの両肩が跳ねて獅朗ちゃん血の海になったもんね。あまりの光景に「流石にやり過ぎた」ってお姉ちゃんが言ってた。
「うわぁ柔らかーいッ!!」
「先がフサフサして触り心地良いね!あれ、出雲ちゃん?」
「(こんな可愛い尻尾があるなんてなんなのこの小動物ッ…!!///)も、もふもふ……」
「どうしたのいずにゃん顔赤いよ?」
「……………セレネ、来るよ」
「へ?今ッ!?お姉ちゃんそれ早くなi… ガシャァアンッ!! うわぁホントに来たッ!!」
ガシャァアンと窓を割って派手に侵入して来たのは………通常より少し大きめな屍番犬だった。
「「キャァァアアアッ!!」」
わーお女の子らしい悲鳴久しぶりに聞いた気がするー、僕の周り祓魔師の関係者ばかりだったから悪魔に遭遇しても「なんだ屍かよタイミング読めよKYだな」とか言って軽々と倒す人ばかりだったからさ。
僕とお姉ちゃんは極力戦闘に関わらないように、三人の様子を窺う。あ、朔ちゃんに屍番犬の体液かかったッ!!いずにゃん動揺してるけど召喚に影響出ないかな?
「(助けるッ……朴はあたしのたった一人の友達なんだからッ!!)“稲荷神に恐み恐み白す、為す所の願いとして成就せずということなし!”」
いつもの様に白狐のミッチャンとウッチャンを召喚したいずにゃん、でもなんだか様子がおかしい…?
「あたしがッ…!!」
その時、出雲の頭の中でこの間の出来事がフラッシュバックする。
―私、出雲ちゃんの後ろに隠れてばかりだね―
「ッ……!!」
―出雲ちゃんだってこのままじゃ駄目だってこと、本当は分かってるでしょ?―
「だってあたしッ……もう独りになりたくなッ……!!」
たった一人の友達の言葉に、出雲の心が揺れた。
「汝め、なんだその心の有り様は……汝は我等に相応しくないッ!!」
「キャアッ!!」
ミッチャン達何やってるのッ!?なんで襲いかかってッ……いずにゃんが危ないッ!!こんな時はえーっとうーんと…そうだ!!
「“神木出雲に仕える者よ
真の姿を我の前に示し、我に力を貸せ!!
《白狐》ッ!!”」
「「「!!」」」
僕がそう唱えると、ミッチャン達は僕の傍に瞬間移動し、二匹含めいずにゃんも動揺する。
「え!?今の何!?」
「相手の使い魔を召喚する方法だよ。
正式な契約をしている使い魔は喚び出しにくいけど、いずにゃんみたいにまだ完全には契約してない使い魔なら喚び出せるんだよ。
これ知ってる人あんまりいないけどね;」
「……………流石召喚士といったところか?」
「お願いだからその通り名はやめてミッチャン;」
これで二匹の気は紛れた、朔ちゃんの方は……
「“清らかなる生命の風よ、失いし力とならん”」
お姉ちゃんは詠唱し、体液がかかり炎症を起こしている朔ちゃんの腕と頬に手を翳して傷を癒す。
「杜山さん、緑男からアロエを出して下さい」
「は、はいッ!!ニーちゃんサンチョさん出せる!?」
「ニーッ!!」
緑男の体からアロエが生えてきて、お姉ちゃんはそれを綺麗にもぎ取って朔ちゃんの頬と腕に貼る。
「お前らどうしたッ!?ってうわぁなんだコイツッ!?」
「あ、燐兄やっほー。にしても君何処から来たの?誰のワンちゃん?あ、もしかしてスネ〇プ先生の… グルルルルルッ!! うわぁあ図星ッ!?」
屍番犬は自身の主がバレそうになるのを誤魔化す為に僕に襲いかかって来た。あ、体液ついた。まぁ悪魔のハーフだからあんまり効かないけどね。
そう思っていると屍番犬は僕を傷つける気は無いのか、僕の頬をペロペロと舐めてきた。
「わぁちょっと…あはははッ!!擽ったいってもう……ってうわぁああッ!!」
屍番犬はそのまま僕に体重をかけてきて、僕は重みに耐えきれず体勢を崩しドサッと倒れてしまった。
「ちょ、重いよ退いてッ!!尻尾踏んでるッ!!踏んでるからッ!!え、何口近づけてるの?なんで口元持っていっt… ガブッ 痛っったぁああああッ!!」
僕が尻尾を噛まれたのを見て、燐兄は「ヒッ…」と小さい悲鳴をあげ自身の尻尾を掴み、お姉ちゃんは無言で尻尾を掴む。
「いや掴んでないで助けてよ燐兄ッ!!」
「ワカ…ギミ……?」
僕の言葉で燐兄の存在に気づいたのか、屍番犬は燐兄の方へ突進していって押し倒した。なんとか開放された僕はお姉ちゃんの元へ向かう。僕の痛みを察してお姉ちゃんが頭をポンポンと撫でてくれた。あ、涙腺緩んできた。僕は痛みに小さく「うぅー…」と唸りながらお姉ちゃんにきゅっと抱きつく。
「うっ…苦し……ゲホッ」
「オ許シヲ……コレモ…然ルオ方ノ……計ライニヨルモノ……」
「え、喋った!?このワンちゃん悪魔なのに人間の言葉喋ったよ凄い!」
「いやそれどころじゃねぇよッ!!」
だって獣型の悪魔って動物の鳴き声しか出せないじゃん普通、この子頭良いよッ!!
良いなぁ欲しいなぁ…ス〇イプ先生に頼んでもくれないよねぇ。
なんて思っていると、ガラッと扉を開けてさっちゃんが入ってきた。
『セレネ』
「ん?ってうわッ!!」
さっちゃんは入ってくるなり突然僕の四次元ランドセルを投げてきて、僕はなんとかキャッチする。
「ちょっとさっちゃんいきなり投げないでy…『いいから早くあの糞犬撃て!』ああそういうことか!」
僕はランドセルから素早くガトリングを出し、屍番犬に向けて乱射した。勿論燐兄には当てないから安心してッ!!
「(コイツ…素じゃ敵わねぇッ……)限…界……」
燐兄が降魔剣を抜こうとした。
その前に僕がそれを阻止する。
「燐兄ジッとしててねーッ!!」
「は…?ってうぉおッ!?」
ズガガガガガガガッ!!
僕のガトリングで見事に蜂の巣になった屍番犬は、最初に入ってきた窓から逃げていった。あーあ、飼いたかったなぁあのワンちゃん。尻尾噛まれた恨みは晴らすけど。
「兄さんッ!!」
「ゆ…きお……遅ぇぞ…ッ!!」
屍番犬と入れ替わりの様に入ってきた雪兄達は、辺りを見回して現在の状況を確認する。
「時渉先生、朴さんは……」
「杜山さんの緑男からアロエを出してもらいました、命に別状はありません」
「良かった……しえみさん、屍系の魔障は対処が遅れると命取りになる可能性があります。ですからこの処置は正しいです、しえみさんがいなかったらどうなっていたか……」
しーちゃんがアロエを出さなかったら朔ちゃんは危険だったもんね、お手柄だよしーちゃんッ!!
「杜山さん……ありが…とう」
朔ちゃんのお礼を聞いてキョトンとした後、しーちゃんは嬉しそうに笑った。
「うん!」
さて、ワンちゃんも去った事だし部屋に戻ろうか!と思って脱衣所の棚を通ったら、ブツブツと何か聞こえてくる。気になって見てみると、いずにゃんがしゃがみこんで泣きながら小さな声で呟いていた。
「悔しいッ……こんな姿…誰にも見せられないッ…!」
いずにゃんは朔ちゃんを助けられなかったことを根に持っている、しかも使い魔のミッチャン達を従えることも出来なかったから……いずにゃんのプライドはもうボロボロだ。
「…………いーずにゃん!」
「へ?わぁッ!!なっ何ッ!?」
僕は泣いているいずにゃんにダイブして抱き締めた。
「いずにゃんが過去に何があって動揺したのか知らないけど……僕はいつでもいずにゃんの味方だからね!だってもう友達だもんッ!!」
「と、とも…友達……?」
「………フン、相変わらず世話の焼ける奴だ。
まぁ“今までのこと”もあるからな、特別に許してやる。だが、もうそろそろ誰かを信頼しても良いんじゃないか?お前の友達とかいうあの娘もこの塾の輩も、信頼に値すると我は思うがな…此奴も含めて。」
「ミケ……」
「出雲泣かないでー!!出雲が泣いたらボクも釣られて……うわぁああんッ!!」
「ええッ!?ちょっとウケッ……あぁもう分かったわよ泣き止むからッ!!これで良いでしょッ!?」
そう言っていずにゃんは涙を手で拭い、腕を組んだ。うん、やっぱりいずにゃんはこうでなくちゃ!なんて思っていると、突然服がバサリといずにゃんの上から降ってきた。上を見上げると………あ、燐兄だ。どうやら自分の服を態々脱いだようだ。
「それ着て早く行け!」
「え?あ………///」
いずにゃんは今自分が下着姿のままだった事を思い出し、顔を赤らめて無言で服を着て皆の方へ行ってしまった。それを見送った二匹はそのまま元の場所へ還る。
これで一件落着だね、さぁ皆の元へ戻ろう!そう思って歩き始めた瞬間、ガシッと肩を掴まれる。振り返ると、そこにいたのはさっちゃんだった。あれ、これ説教食らうパターン?嫌だよ説教なんて、尻尾噛まれたのは勘弁してよコッチも痛いんだよ。
『お前それ…』
「やっぱり尻尾の事言われるよね;
僕だって痛いんだから説教はやめてy『なんつゥ面倒なもん付けられてんだよお前』へ?」
『あの糞犬の飼い主知ってんだろ?何処の手騎士だ?』
「え、なんで分かるのッ!?付けられてるって何がッ!?」
『……何でもいいから悪魔召喚してみろ』
「えっ何それ怖い……“惚れたぜ街角のエンジェルッ!!”」
僕は適当に田中君でも喚び出そうとしたのだが、シーンとしていて何も起こらない。
「……あれ?“おーにさーんこっちら!手ーの鳴ーる方ーへ!”“まっくろくろすけ出っておーいでー!出ーないーと目ー玉ーをほーじくーるぞー!”」
シーン………
「…………ま、まさか…;」
『お前、退魔の呪印付けられてるぞ。その様子だとこの試験終わる頃までは消えないだろうなァ』
「つまり、悪魔召喚出来ない?;」
な ん で す と ?
To be continued…