第11噺「お泊まりドッキリ大作戦(前編)」
セレネside
「夏休みまでそろそろ一か月半切りましたが、夏休み前には今年度の候補生認定試験があります」
「あ、昔僕も参加したあのお泊まり会?」
「ええ、名付けて「ドキドキ☆お泊まりドッキリ大作戦」です☆」
「何そのテレビ番組みたいなタイトル」
第11噺「お泊まりドッキリ大作戦」昼休み、学園の理事長室にいた僕にメフィストはそう言った。いつもの定位置である膝の上でおやつタイムを楽しみながら、メフィストの話をそのまま聞く。因みに今日のおやつは萬福楼の月餅だ、うまし。今度白虎に教えよっと。
「候補生に上がると、より専門的な実戦訓練が待っている為、試験はそう容易くはありません」
「そういえば昔僕も騙されたよねぇ……;」
「あの時ビックリして思わず私を召喚して泣きついてきましたね、いやぁあの泣き顔は本当に可愛かった☆
まぁドッキリ主催者上困りましたけどね、頼られるのは嬉しかったですけど。」
「うわぁあああ過去を掘り返すのやめてぇえええッ!!」
だってあの頃はまだ小学一年生だったし泣くくらいは許してよッ!!
普段悪魔と遊んでる僕にとって、悪魔に襲われるなんてほぼ初めての経験に近かったんだからねッ!?
「ということで来週から一週間、試験の為の強化合宿………つまり毎年恒例のお泊まりドッキリを行います」
「ってことは僕も参加?」
「ええ、訓練生と混じって参加して下さい。呉々も、襲ってくる悪魔に驚いて私を召喚しないように☆」
「だから掘り返さないでってばぁあああッ!!」
†††††††††
―放課後:祓魔塾―
「――……これで合宿についての説明は以上だ。
後は取得希望“称号”をこの用紙に書いて、月曜までに提出してくれ」
メフィストから聞いていた内容を獅朗ちゃんから聞き、希望称号についての紙が全員に配られる。
燐兄は早速称号について竜君達に教えてもらっているようだ。
因みに称号には騎士(ナイト)、竜騎士(ドラグーン)、手騎士(テイマー)、詠唱騎士(アリア)、医工騎士(ドクター)の5種類ある。
祓魔師に必要な技術の資格のことで、どれか一つでも称号を取得すれば祓魔師になれるのだ。
よーし燐兄に便乗して僕も混ざろっと。
「竜君達は何取るのー?僕は手騎士と竜騎士!」
「アホか、手騎士は才能ないと取れへんやろ」
「勝呂、セレネを舐めねぇ方が良いぞ。ソイツどんな悪魔でも喚び出せるからな、
こないだ祓魔薬局の青竜に掃除手伝ってもらってたし。」
「はぁ!?ホンマかッ!?あの四神にかッ!?」
「薬局の皆は友達だよ?他にも悪魔の友達なら軽く百人いるよ!」
「ひゃ、百人て……どうなっとんのやコイツの能力;」
うーん、でもこれが僕の取り柄だしなぁ……運動神経無いし。次の魔法円・印象術の授業でならそれを発揮出来るけど、大抵の塾の勉強ではあまり活躍出来ないんだよねぇ。まぁ普段の生活では大活躍だけど、管狐に宿題任せたり。
そうこうしている間にチャイムが鳴り、僕らは次の授業の為に1108号室へ向かった。
―魔法円・印象術―
「これから悪魔を召喚する」
机を全て後ろに下げ、スネ〇プと雰囲気が似た先生は床に魔法円を書き出した。
そういえば先生の名前ってイゴールだよね、なんかペル〇ナ思い出す。
僕が教室入った時に「ようこそベル〇ットルームへ」って言ってくれないかなぁ、勿論目玉親父の声で。
書き終えたスネ〇プ先生は右手の包帯を取り、痛々しい右手から流れ出た血を魔法円に垂らす。
「テュポエウスとエキドナの息子よ。求めに応じ、出でよ」
円を中心に靄が渦巻き、円から腕が伸びてきて屍番犬が現れる。
うわぁ、硫黄の臭いが凄いや。鼻にツンとくるなぁ……アスタロトなら臭い抑えてくれるのに。
「悪魔を召喚し、使い魔にすることが出来る人間は非常に少ない。悪魔を飼い馴らす強靭な精神力もそうだが、天性の才能が不可欠だからだ。そこの小さい子供の様にホイホイ喚び出せる訳ではない。」
「スネ〇プ先生ー僕が先生の屍を召喚しちゃって飼い始めたからって根に持たないで下さーい!」
「だからそのあだ名はやめろと言っているだろう、人の使い魔を温厚にしよって……屍が温厚になるなど聞いたことがないぞ」
他の皆は僕とスネ〇プ先生のやり取りに呆然としている。
まぁ僕達前から知り合いだしねぇ、理事長室で会話するくらいだけど。
「今から召喚の才能があるかテストする」
スネ〇プ先生は魔法円の略図が描かれた紙を配り、その紙に血を垂らして思いつく言葉を唱えろと僕達に言った。
え………うーんどうしよう、僕が魔法円まで使って喚び出したら大変な事になるんだけど……;
僕も含め皆が悩んでいると、いずにゃんが堂々と唱え出した。
「“稲荷神に恐み恐み白す、為す所の願いとして成就せずということなし!”」
おお、いずにゃん白狐二匹かぁ……もしかして何処かの神社の巫女さんなのかなぁ?
「白狐を二体も…見事だ、神木出雲」
「凄い出雲ちゃん……私全然ダメだ;」
「当然よ!あたしは巫女の血統なんだもの!」
あ、やっぱり巫女さんと関係あったんだ。確かに雰囲気が神社の関係者っぽいよね。
ていうかあの二匹なんか見たことある気が…………あ、そうだ!
「思い出したッ!!ウッチャンとミッチャンだッ!!」
「あぁ貴様か、久しいな……ってその名前で呼ぶなと何度言ったら分かるんだッ!!
ウッチャンナ〇チャンみたいだからやめろ、御饌津神(ミケツノカミ)と保食神(ウケモチノカミ)だッ!!」
「え、あんたなんでミケ達の事知ってるのよッ!!」
「いやぁ小さい頃管狐喚び出そうとしたら間違えて喚び出しちゃって……;」
「間違えて喚び出せるレベルじゃないわよコイツらはッ!!;」
そこは軽く流してくれると嬉しいなぁ、僕もまさかミッチャン達が出てくるとは思わなかったし。
あの後説教食らったんだよねぇ、主にミッチャンから。ウッチャンはフォローにならないフォローをしてくれたけど。
僕らがそうやって話し込んでいる内に、他の皆は魔法円に血をつけて喚び出そうとしたみたいだけど……男子群は全滅、女子群はしーちゃんだけが喚び出せたようだ。緑男の幼生……なんかしーちゃんらしいなぁ。地の眷属って皆無邪気なの多いよね、王に似るのかな?アマイモンは良くも悪くも無邪気だし。
大抵の眷属は王に似ると思う、今まで会ってきた悪魔達って皆そうだったし。
「時渉、後やっていないのはお前だけだ」
「えーっとスネ〇プ先生………僕が魔法円まで使うと大変な事になりますよ?;」
「危険になれば紙を破けばいい、早くしろ。いつも昼休みに中庭でやっているようにすればいい」
「うぅ……何が出てきても知らないからね?;」
そう言って僕は血を垂らし、指をスッと上げて暇な時に喚ぶ台詞を唱える。
「“かっくれんぼすーるひーとこーのゆーびとーまれ♪はーやくしーないーとゆーび切ーるぞー!”」ワサワサワサワサワラワラワラワラ……
暇な時と同じように喚び出せば、魔法円の略図から悪魔達がワラワラと湧き出てきた。
〈俺いっちばーんッ!!〉
〈はいはーいボクもーッ!!〉
〈人間の子供と遊ぶのは久しぶりじゃなぁ〉
〈そうねぇ、昔は子供も私達のこと普通に視えてたものねぇ。あの頃は楽しかったわぁ…〉
〈おやチビちゃん昨日ぶり、今日は何して遊ぶんだい?〉
「「「…………………」」」
あー、やっぱり皆固まっちゃった。スネ〇プ先生まで放心状態だよ、どうしようこの状況;
今の状態を例えるなら百鬼夜行。世間では妖怪と呼ばれているものや西洋のリリムや吸血鬼と、ポピュラーなものから果てはタナトスや鳳凰等の大物悪魔まで選り取り見取りだ。
あれ?まだ誰か出てくる…?
「幼女ぉぉおおおおッ!!」
「うわぁあああなんで出てくるのぉおおお学園にいたんじゃないのぉおおおッ!?」
「幼女の声が聞こえたらぁあああ応えてあげるが世の情けぇえええッ!!」
「田中君まで呼んでなぁあああいッ!!」
その後は田中君の登場に皆我にかえって僕を田中君から救出してくれた。
その時に皆から聞いた話では、田中君は学園に出る幽霊と噂になっているらしい。
「初等部に現れるロリコンゴースト」という名で七不思議に載っているそうだ。
…………やっぱり退治しとくべきだったのかなぁ?
まぁ襲っている訳ではないようだし、「多目にみてあげよう」と思った僕であった。
↓おまけ
「“おーにごっこすーるひっとこーのゆーびとーまれ!”アマイモンも鬼ごっこするー?」
「鬼ごっこってなんですか?」
「鬼役の子が逃げる人にタッチして、タッチされた人が鬼役になってを繰り返す遊びだよ!
因みに鬼を挑発するなら……“おーにさーんこっちら♪手ーのなーる方ーへ♪”」
「ははぁなるほど、こうですか?」
「そうそう、お尻を相手に向けて振った方が相手がよりムカつくからね!」
※アマイモンが燐兄の前に現れる霊捜索話でやる挑発を教えたのはセレネでした(笑)
To be continued…