第8噺「怪奇現象の正体」
セレネside
「よし、じゃあ行ってくるねべリアル!サマエルとさっちゃんに宜しくッ!!」
「行ってらっしゃいませお嬢様、今日はおやつを用意してありますので早めにお帰り下さい」
「はーい、行ってきまーすッ!!」
第8噺「怪奇現象の正体」今日は久しぶりに仕事を依頼された。
最近南十字公園で「何かが木に隠れた気がしたが何もいなかった」とか、「風も吹いてないのにスカートが揺れた」とか、「体に何か当たったが周りには誰もいなかった」等の報告があがっており、悪魔の仕業ではないかということで祓魔師に依頼が来たのだ。
しかしその悪魔は子供、それも小さな女の子の前にしか姿を現さないらしい。それで仕方無く今回は僕が行くことになったのだ。
メフィストは「もしその悪魔に更生の見込みがあるのなら、好きにして下さって構いません」と言ってくれた。
…………僕が飼いたがるのを分かっているからだろう。
だって動物好きだもん、獣型の悪魔なら大歓迎だよッ!!いつでもカモンッ!!地下室のお友達と仲良くねッ!!
そう思っている内に、南十字公園についた。
今日はこの公園周辺を立入禁止にしてあるので、どんな悪魔が現れても容赦なく退治出来る。
どんな悪魔だろうとワクワクして公園へ足を踏み入れた瞬間………ゾクリと背筋に悪寒が走った。
何かに見られている。
何処かで同じ様な視線を感じた事がある気がするが、思い出せない。ここまで堂々と気配を隠さずに僕をじっと見てきた奴なんて、今まで誰もいなかった。しかしこのイヤァな感じは、見なくてもどんな奴か分かる。
そう、こういう視線を送ってくる奴は大抵…
「うぉぉおおお幼女だぁぁあああッ!!」「うわぁぁあああデジャヴぅぅうううッ!!」そう、ロ リ コ ン だ 。(デジャヴの詳細は純愛幻想曲第1奏でry)
その視線の“何か”は、急に僕にタックルする程の勢いで抱き締めてきて頬擦りしだす。
「ああああこのスベスベもちもち肌たまんねぇええ低身長でポニーテールとかどんな萌だよちっぱいは正義ッ!!( ゚∀゚)o彡゚〇っぱい!〇っぱい!」
「ちょっと何処触ってんの止めてよちっぱいは余計だよ、ていうか獣型じゃなくて霊(ゴースト)ぉぉおおッ!?」
まるでマ〇イちゃんに突進していくアラ〇ギ君の様に興奮している霊から離れ、僕はぜーぜーと呼吸しながら自身を落ち着かせる。
この霊ロリコンな上にオタクだ、こういうオタクが霊になると厄介なんだよなぁ………他の霊と比べて執念が凄いからね、自分のやりたかった事を実行しようとする危ない不審者へと変わるからね。一般人に見えない事を良いことに。
「じゃあまさか、木に隠れたってのは…」
「幼女を影から見つめて(;´Д`)ハァハァしてた」
「スカートが風もないのに揺れた」
「幼女のスカートを捲った、苺パンツだった。」
「体に何かが当たった」
「すぐ傍まで近づいたら思わずぼっk「背徳感は?」正義ッ!!」
駄目だコイツ早く何とかしないと。
うーん、攻撃的なタイプじゃないし……ここは成仏させるのが一番良いよね。
「えーっと、とりあえず名前と職業教えてくれる?僕は時渉セレネ12才、祓魔師だよ。
成仏せずにずっと此処にいるのはなんで?そもそも死因は?」
「へぇーセレネちゃんかぁ可愛い名前…っていきなり職質かよ、何処の警察だよお前。俺は田中佑典(ゆうすけ)18歳高3。」
名字は平凡なのに名前だけ妙に格好いいな。
ていうか霊でゆうすけって…幽遊〇書の幽〇思い出すなぁ(笑)
「重度のロリコンのせいで名前負けしてる残念なオタクになってるよ;」
「因みに五年前卒業するまでに仕事見つけようとハロワ行く途中で、
可憐な幼女に見惚れてトラックに轢かれて死んだ自宅警備員だ。」
なんて嫌な死因なんだ……;
ていうかトラック来てるのに気づかないって、いくらなんでも酷すぎない?
「あの時の幼女はマジで可愛かった、天使かと思ったよ。
髪を大きなリボンでポニーテールにして、白いワンピースを着て、サンダル片手に持って裸足で人気のない線路の上を歩いていたんだ。まるで一枚の絵みたいだったよ、俺の好きな要素てんこ盛りで正に理想の幼女。そうそう、君みたいな……」
そ れ 小 1 の 僕 じ ゃ ん 。うわぁあああ恥ずかしいからやめてぇえええあの日お姉ちゃんが久しぶりにデザート作ってくれてルンルン気分で替え歌歌ってたんだよぉぉおおッ!!
「あの時の幼女はお前かぁあああッ!!」
「うわぁあああ髪型変わらなさ過ぎてバレたぁあああッ!!」
「あの時の萌えが忘れられないんだよ俺もっと萌えを堪能したいんだよぉぉおおッ!!」
「だからって僕に抱き着いて頬擦りするのやめてぇええッ!!」
僕は一旦田中君(あだ名命名)から離れ、落ち着いてから考える。
萌えが足りないのなら萌えを与えれば良いじゃないッ!!目には目を、歯には歯を、萌えには萌え………って田中君には萌えないけど!!幼女に言われて萌える台詞を言えばきっと成仏してくれるさッ!!
僕はオタク知識をフル活用して、田中君に構える。
「ひとりでできるもんッ!!」
「もっとッ!!」
「一緒に…寝よ?」
「甘い、もっとだッ!!ドンとこいッ!!」
僕は一体何をやっているんだ、羞恥心でおかしくなりそう。いや、考えちゃ駄目だ。ここは賢者タイムだ。
「ぽんぽんがいたいの!」
「良いぞもっとやれッ!!」
他に女の子が言って萌える台詞…そうだ、
「暦お兄ちゃん!!」「ぐはぁあッ!!お、お兄ちゃん…だと?そこは俺の名前で言ぇぇええッ!!」
「佑典お兄ちゃんッ!!」「ふぐぉおッ!!それだ、幼女妹だぁぁあああッ!!」
「佑典お兄ちゃんのえっちッ!!えっちぃのはキライですッ!!」「うぉおおおヤバいイきそうッ!!」
メフィストも僕が小さい頃悶えたこの台詞………これで…どうだぁぁあああッ!!
「僕大きくなったら佑典お兄ちゃんのおよめさんになるぅううッ!!」「ぐはぁああああああッ!!」そう叫んだ途端、田中君の姿がボヤけていく。
「ありがとなオタク幼女、今最高にいい気分だ。
最後の……良い萌えだったぜ、その調子で究極の幼女を目指してくれ!」
そんな事を言いながら、田中君は良い笑顔で空へ昇っていった。
「えええええ、呆気なッ!!」
なんだったんだ今の戦いは。
ていうか究極の幼女とか目指す気ないんだけど。
見た目は小学生のままだけどもう幼女というより少女の年齢なんだけど……まぁいっか、片付いたんだし。
「さて、仕事も終わったことだし……メフィストに報告書出しておやつにしよっと♪」
僕はまた前の様に替え歌を歌いながら、おやつの為に帰路を急いだ。
「♪:僕も帰ーろお家へ帰ろ♪
電車に轢かれてバイ・バイ・バイ♪」
―後日―
「幼女ぉおおおッ!!」
「うわぁああまだ成仏してなかったのぉおおッ!?」
「やっぱまだお前の萌え見たいぃいいッ!!」
「だから頬擦りやめてぇえええッ!!」
「惚れたぜ街角のエンジェルッ!!」
「何そのキャッチフレーズみたいな台詞エンジェルって言うと僕の知人思い出すからやめてぇええッ!!」
その後もう悪戯はしないということを約束してこの世に留まるのを許しましたとさ。
だからって僕の学園に住むのやめてくれないかなぁ……。
後にこの霊が学園七不思議にカウントされることを、この時の僕は知らない。
To be continued…