第1奏
レイの友人であるセレネは、ドーレ港に来ていた。
お気に入りの曲をイヤホンで聞きながら、目的地へ向かっていたのだが――……
†††††††††††††††
セレネside
「…」
見られてる。
感じる視線は二つ。
一つは念能力者というのは分かるのだが、敵意を感じないので良しとする。
もう一つは……
ピクッ
僕はピタリと歩みを止め、イヤホンを外した。
…このいやぁな視線は前にも感じた事がある。
こういう視線を向けてくる奴は大抵……
ポンッ
眼鏡をかけた鼻息の荒い男が、僕の肩に手を置き声をかけてきた。
「ねぇ」
僕は内心で溜め息をつきながら、クルリと振り返る。
「何ですか?」
「君………一万ジェニーでどう?」
ロ リ コ ン だ 。(しかも変態)
男は遠くに見えるホテル街の方を指差している。
僕は養豚場の豚を見る様な冷めた目でその男を見つめた。
「……興味無いです。」
「あ、少なかった?じゃあ三万ジェニーでどう?」
「僕は急いでいるので、他をあたって下さい」
「そんなこと言わずにさぁ」ひょいッ
男はこの場から去ろうとした僕の両脇に手を入れ、軽々と僕を持ち上げた。
「へっ…!?ちょっとッ…!!」
「はーいお兄さんと一緒に行こうねー」
「このロリコンッ…!降ーろーせぇええッ!!!」ジタバタ
「おい」
「あ?誰だお前」
「お前こそ誰だよ」グイッ
「うわぁッ!!」
突如現れた青年は僕らのやりとりを見ていたのか、僕の両脇腹に手を入れて自身へ引き寄せた。
「コイツ俺のなんだけど?」
青年は眼光を鋭くさせ、獣の様な目で男を睨みつける。
「ッ…」ダッ
男はその鋭い眼に怯え、走って逃げていった。
僕は去っていく男を見てホッとし、青年に礼を言う。
「ありが………!?」ビクッ!!
じーー……
青年は僕をガン見してきた………しかも真顔で。
「……;な、何?」
「あ、ゴメン。やっぱ妹って言った方が説得力あったかなぁと思って」12〜14歳位にしか見えないし。
「むぅ……僕16歳だよ?」
「え、同い年?全然見えねぇ」
「〜〜ッ!!!///」
青年は赤面する僕の反応を見て笑い、面白がっている。
どうやら先ほどのもう一つの視線…念能力者は彼だったようだ。
「はは、ワリィワリィ!」
「兎に角ッ!!さっきは助けてくれてありがとう。一般人に念を使ったらマズイし、どうしようかと思ってたんだ。」
「気にすんなって。それよりさ、ザバン市ツバシ町ってどっちに行けばあんの?」
ピクッ…
「……ハンター試験受けるの?」
「ご名答。もしかしてお前も?」
「うん。僕場所知ってるから一緒に行こう?」
「サンキュ、俺…ゼロっていうんだ。」
「僕はセレネ、宜しく!じゃあついて来て。」
ゼロ……レイは、自身がレイだということをあえて言わなかった。
(だってそっちの方が面白いじゃん)ニヤリ
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―飯処ゴハン―
ガラッ
「へいらっしぇいッ!!ご注文は?」
店に入ると、店長がそう訊ねてきた。
「「ステーキ定食」」
「!?」バッ!!
セレネはゼロが合言葉を知っていたことに驚き、咄嗟にゼロの方を向いた。
「「……」」
二人はお互いをジッ…っと見つめる。
「焼き加減は?」
ゼロはセレネの方を見てニヤリと笑い、店長の問いに答えた。
「弱火でじっくり」
「お客さん奥の部屋へどうぞー!」
「……知ってたんだ」ボソッ
「ああ、どっかの誰かさんのお陰でな」ニヤリ
そう言ってゼロはセレネの方を見る。
「?」
「さ、早く行こうぜ」スタスタ
「ちょッ…!!待って!!置いていかないでッ!!」
†††††††††††
―ハンター試験会場―
ゼロside
チーンッ!
エレベーターから降りると、豆顔の人が番号札を配っていた。どうやらマーメンというらしい。
「お、ラッキー。77番……お前は?」
「76番だよ」
「南無か……把握した。」チーン。
「ちょ、その覚え方やめて!?」??(゜ロ゜;
二人で雑談していると、小太りの鼻ペチャなおっさんが近づいて来た。
「君達、新顔だね」
「へっ…?そうだけど……何で分かったの?」
「俺は10歳の頃から35回も受けてるからな。つまりハンター試験のベテランってわけだ!」
「35回もッ!?」
「……それ自慢する様なことじゃねぇよな?;」
どんだけ受けてんだよ、いい加減諦めろよ鼻ペチャ。それはベテランじゃねぇ落ちこぼれっていうんだ。
「俺はトンパ。こんな所に子供が受けに来るなんて珍しいからな、つい話しかけちまったんだ」
「出来れば可愛い女の子に話しかけられたかったな。」
「ちょ、失礼なこと言わないッ!!」
「ハハハ…;そうだ、お近づきの印にこれやるよ…お互いの健闘を祈って乾杯しようぜ!」
そう言ってトンパは俺達に缶ジュースを渡してきた。若干温いがこんな場所だ、仕方ないだろう。
「サンキュ。」プシュッ
俺は缶の蓋を開けた瞬間、ピタリと止まった。
「………セレネ、それ飲むな。これは下剤入りジュースだ」
「え…!?」
「なッ…!!(コイツ何で分かったんだ!?)」
俺はセレネの分をひったくり、トンパに向き直る。
「こんなもん俺に……ましてや女に飲まそうとすんじゃねーよ」
ドボドボドボ
「うわ冷てッ!!!」
俺はトンパに二つのジュースをドバドバと頭からぶっかけてやった。
「行こうぜセレネ」グイッ
「う、うん;」
俺はセレネの腕を引っ張りトンパから離れた。
あのおっさん胡散臭いと思ったら……案の定クロだったな。あの匂い、一時間以上は下痢止まんねぇだろうな………そもそも毎回アレ用意してんのか?
あんなことする為だけに金使うとかどんだけ新人潰したいんだよ。
まぁ、ジュース頭からぶっかけてやった俺もあまり人の事言えねぇかな(笑)
なんて事を思っていると……後ろからネットリとした視線を感じた。
「うッ……何このねっちょりとした感じ;」
「ねっちょりて何だよ;」
「この感じ……まさか「セレネ◆」ぎゅぅうう
うわぁぁああッ!!!」
突然後ろからピエロルックの男がセレネに抱き着いてきた。
あれ……ピエロ?ってこいつ蜘蛛の4番ヒソカじゃねぇかよッ!!!
え、まさかこいつロリコン?ソッチ系の人なの?
「ちょっとッ!!いきなり抱き着いてくるなんて心臓に悪いじゃないかお兄ちゃん!!」
「お兄ちゃんッ!?!?」??(゜ロ゜;
はぁッ!?あのヒソカが兄だと!?マジかよ!!!確かに髪と瞳の色は同じだけどさ………
ぜんっぜん似てねぇッ!!!
「いいじゃないか、久しぶりに会ったんだし◆」
「この間家に来たばかりじゃあないか;」
セレネはやれやれといったふうに溜め息をつく。
コイツも苦労してんだな……そりゃあこんな兄もったら大変だよな、うん。
「ところで………君、誰だい?」ニッコリ
「人に名前を聞く時は普通自分から名のるもんだろ?」ニッコリ
「二人共その黒い笑みしまってぇえッ!?」??(゜ロ゜;
「クックック◆ごめんごめん、僕はヒソカ。見ての通り奇術師さ◇君は?」
「俺はゼロ、コイツと同い年だ。」
「へぇ………ゼロか。君、良いオーラしてるね◇美味しそうだ…◆」
「え"…」
ジリリリリリッ!!!
その時、突然ベルの音がした。
音のした方を見ると、変な形をしたベルを持ったダンディな男が立っていた。
「これより、ハンター試験を開始致します。」
To be continued…