第7奏
セレネside
戻ってきたらいつでも寿司を作れるように酢飯をセットした後、僕とゼロは魚を探す為に川へ向かった。
しかしヌメーレ湿原だからか、普通の魚が中々見つからず、奇妙な色や形をした魚ばかりである。
「うわぁどうするよコレ、マトモなの一匹もいねぇじゃねぇかよ。このピンクの魚なんて不味そうだぜ?表面ネマネマしてるしよぉ…;」
「うーん、味見していくしかないのかなぁ…?でもこんな色の魚食べたくないよねぇ……」
僕達が別の場所も探してみようとしたその時、僕はふと右にある草むらが気になって視線を向けた。
するとそこにいたのは………
頭が魚で体がムキムキマッチョな未確認生命体だった。「ちょっ…ちょちょちょちょっとゼロッ!!何あれッ……!!」
「ん?何…………はッ!?なんだあれッ!?魚……なのか?体が人間ってどういうことだよ、しかもマッチョとか気持ち悪ッ!!前隠せよまe……」
ゼロがそう言った瞬間、半魚人?はクルリと此方を向き、ジッ…と見つめてくる。
「え?な、何だ?;」
「ゼロが気持ち悪いなんて言うからでしょッ!?…ってコッチに近づいてくる!!」
半魚人(仮)はジリジリと此方へ近づいてきて、僕らは思わず後退る。トンッと背後の木にぶつかった瞬間、それを合図に半魚人(仮)は手を大振りにし、物凄い勢いで………ってうわぁあああコッチに走って来たぁあああッ!!
こんな状況ですることは一つしかないよね!?
僕らはお互いを見て頷き、一目散に走り出した。
「「逃げろぉぉおおおおッ!!」」「ぎゃぁぁあああまだ追いかけて来るぅうううッ!!」
「ごめんなさいごめんなさい気持ち悪いなんて思ってごめんなさぃいいいいッ!!」
「魚だから当たり前だけど無言だから怖ぇええええッ!!」
暫く走っていると、道が二つに別れていた。
「こうなったら二手に別れよう!!」と言って、僕らは別々の道へ走った。
しかし、何故か半魚人(仮)は僕だけを追ってきた。
「うわぁあああなんでぇえええええッ!?僕何もしてないのにぃいいいッ!!」あまりの展開に心が折れそうになったけど、それでも走る足を止めずになんとか頑張って二次試験会場まで戻ってきた。
「メンチさん助けてぇええええッ!!」「あら意外と帰ってくるの早……
ってぎゃぁぁああ何ソイツぅうううッ!!」メンチさんの顔を見て少し気が緩んでしまい、僕は小石に躓いて転んでしまった。普段ならこんなミスしないのに………ってうわぁあああ半魚人(仮)がジャンプして突っ込んで来るぅううううッ!!
ドォオオオンッ!!「うわぁああなんでコイツ腰振ってんの気持ち悪ぃいいい退いてぇえええ!!ていうか前隠してぇえええッ!!」
「ぎゃぁぁああ受験生の女の子に何してんのよこの女の敵ぃいいいッ!!」バキィイイッ!!
メンチさんのお蔭で半魚人(仮)はノックアウトされ、僕は漸く解放された。
「ふぅ、これでコイツは当分起きないわね。で、何なのコイツ?76番、どういうことか説明しなさい!!」
「それが僕にもさっぱり分からなくて……さっき川で魚を探してたらこの半魚人(仮)がいたんです。」
メンチさんは「ふーん」と言いながら半魚人(仮)をジロジロと観察し(前はちゃんと隠しました)、僕の方を見てこう言った。
「コイツ多分新種よ、今までこんな変なの見たこと無いもの。
貴女試験早々新種見つけるなんて凄いじゃない、おめでとう」
「へ?」
な ん で す と ?ていうかこんな変なのの第一発見者って全然嬉しくないよ、こんな生き物いてたまるかッ!!
「コイツの生態は専門家に任せて調べてもらうけど、
貴女が発見したんだから貴女が名前つけないと。どうする?」
「え、僕がつけるのッ!?;」
「当たり前じゃない第一発見者なんだから。」
「えーっと……じゃあ田中君で。」
「田中君って………まぁいいわ、それで報告しておくわね。お疲れ様、試験に戻っていいわよ。」
とんでもない事が起こったせいで試験の事をすっかり忘れていたが、
ゼロがマトモな魚を捕ってきてくれていたお蔭で二次試験はなんとか二人で通過出来た。
……まさかその後二次試験合格者が僕らだけと言われるなんて、今の僕らは知るよしもなかった。
To be continued…