第4奏
セレネside
「ごめんなさい遅れちゃって!待ったかしら?」
「大丈夫だよエリナ、僕達も今来たところだから。」
「じゃあいつもの河原へ行こう!」
最近僕とジョナサンは、エリナと共に河原で遊んでいる。
元々僕とエリナは親友だったのだが、この間ジョナサンから「ある女の子に葡萄が入ったバスケットを貰った」と聞き、その子の特徴を聞いた僕はすぐにそれがエリナだと分かった。どうやらジョナサンはエリナに葡萄のお礼が言いたいらしく、その子の事を知らないかと僕に聞いてきたのだ。ジョナサンにエリナを紹介した所、二人はすぐに仲良くなり、それからは三人でよく河原で遊んでいる。
……まぁ、ジョナサンはエリナの事が好きみたいだし「二人で遊びに行きなよ」って言ったんだけど、ジョナサンはエリナと二人きりになると緊張して話しづらいらしく、一緒に同行してほしいそうだ。
「ワンッワンッ!!」
「あはは、君もいるよね、ごめんねダニー。」
ダニーは「分かればよろしい」といったような表情で頷き、ジョナサン達の方へ駆けていった。
「あら?ジョナサン、何をしているの?」
「どうしたの?」
「ジョナサンが何か彫っているみたいなの、でも何故か見せてくれなくて…」
エリナにどうしたのか事情を聞くと、ジョナサンは先程から木の幹に何か彫っているようだが、何故か自分には見せようとしないのだそうだ。
僕はジョナサンに「見せてあげなよ」と言うと、「怒らない?」とエリナに聞いてきた。エリナが「怒らないから見せて」と言うと、ジョナサンは隠していた手を退けて、木の幹に彫っていたものを見せた。
「……!!」
「まぁッ!!ジョナサンったらいけない人ッ!!///」
ジョナサンが彫っていたのは、「ジョジョ、エリナ」と書いてハートで囲っているものだった。
所謂、相合い傘の様なものである。
「これが僕の気持ちだよ、エリナ……僕と、付き合ってくれるかい?//」
「………ッ!!///ええ、喜んで!//」
「フフッ、良かったねジョナサン!念願の夢が叶って!」
「ちょ、セレネ!!それは言わないでくれよッ!!//」
「あはは!だって本当のことじゃないかッ!!……エリナを幸せにしてね、ジョナサン。」
「ああ、神に誓って約束するよ!」
そう言って、笑い合っている二人は幸せそうで、とても微笑ましかった。
だから、僕は二人に夢中で気づかなかったんだ。
―――僕らの事を遠くから見ているディオの存在に。
†††††††††††
ディオside
「……フン、そういうことか。」
ジョジョの奴、最近やけに機嫌が良いと思ったら好きな女が出来ていたのか……しかも両思いとは。
セレネもとんだ甘ちゃんだな、毎回ジョジョに同行までして……そんな奴に構ってないで家で大人しくしていればいいものを。
………いや、家にいたとしても俺が被害を受ける事が増えるだけか。まぁ別に嫌ではないのだが…って何を言っているんだ俺は。
にしても、ジョジョに彼女が出来るのか……。
アイツの事だ、今よりもっと浮かれるに決まっている。このままではアイツを地に落とすどころか、天までまっしぐらじゃあないか。
ふむ、どうしたものか………。
「…………!」
俺はある事を閃き、「そうだ」と呟いてニヤリと笑った。
††††††††††††
セレネside
あれからジョナサンとエリナは上手くいっているようだ、この間も二人で何処かへ出かけていたし、もう僕が傍にいなくても平気そうだ。
なんだか少し寂しかったので八つ当たりとばかりにディオに悪戯を仕掛けたのだが、普段は怒って追いかけてきて鬼ごっこが始まるのに、ディオは悪戯に引っ掛かっても何も言わず、僕をジッ…と見つめてきた。
「え………な、何?;なんで追いかけて来ないの?」
「なんだ、構ってほしいのか?」
「へ!?いやそういうわけじゃ……ただ、なんか調子狂うなぁと思って。」
「フン、お前が今俺に悪戯を仕掛けたのは、最近ジョジョがいなくて寂しいからだろう?」
そう言ってディオは僕にスタスタと近づいてきた。
僕は動揺して後退りしたが、壁にぶつかってしまい逃げ場がない。
「むうぅ……そうだよ寂しかったんだよッ!!だから八つ当たりしたのさッ!!悪い!?//」
「とうとう白状したなセレネ、これまでの悪戯に比べたら小さかったからな。なんだあの仕掛けは?八つ当たりという罪悪感からあんな申し訳程度の悪戯を仕掛けたのか?普段のお前なら、最低でも三つ連続で引っ掛かるようにする筈だ。」
「あそこまで華麗に連続で引っ掛かるトラップは最早芸術の域だ」と言うディオに、僕は驚いた。僕のトラップをそこまで真面目に見ているのはディオくらいだ。まさか評価してくれる人がいるなんて思ってもいなかったよ、ていうかなんでそんなに分析しているのか謎だ。
「安心しろ、直にジョジョも帰ってくるようになるさ。」
「……?どういうこと?」
僕はその言葉の意味が分からなくてディオに問うと、「さぁな」と悪意の隠った笑みではぐらかされた。僕はその表情にムカついて、僕の事を壁に手をついて見下ろしているディオの顔面に向かって、思いっきりジャンプして勢い良く頭突きを食らわせた。
「いッ……!!セレネ……貴様ァアッ!!」
「ヤバい逃げろッ!!;」
僕が頭突きしたところが赤くなっているディオから逃げ出して、いつもの鬼ごっこの様な状態になった。
先程の空気から普段のディオに戻ったことにホッとしている自分がいる……それが何なのか分からないが、僕はあまり気にしないことにした。
「今が幸せならそれでいいや」と思ってしまった自分に、後で後悔することになるとも知らずに。
To be continued…