第3奏
レイside
ジョースター家に訪れて、3日が経った。
あれからセレネと私は仲良くなり、ディオがセレネとどう接するのか気になって、
様子を見ていたのだが……
「クソッ!今回も失敗かッ!!」
「ふふーん、詰めが甘いんだよディオは!」
「なんだと…ッ!!#」
仲良し………なのか?これ。
ディオはジョナサンを地に落とそうとするが、セレネにそれを阻止される…ということが、繰り返し行われている。
今回はディオがジョナサンの懐中時計を隠そうとしたのだが、セレネが懐中時計をネックレスにして、ジョナサンに肌身離さず持っておくようにと伝えたので、それは失敗に終わった。
悔しがっているディオを見て、悪戯に成功した子供の様な笑みを浮かべるセレネ。
「悪戯仕掛人とまで呼ばれたこの僕に、物を盗むという初歩的なものが通じると思っていたのかい?」
「何ィ?悪戯仕掛人…だと?アイツらが怯えて話していたのは……お前だったのか!?」
そういえば…この間近辺に住む男共が“悪戯仕掛人”と呼んでいた人物がいたな、あれはセレネのことだったのか。
妙に怯えていたが、一体何をしたのだろう。
「そうだよ、けど元々悪さをしたのはアイツらの方さ!
女の子を苛めていたから成敗してやったんだよ。」
やられたらやり返す、倍返しだッ!!と言って楽しそうに笑うセレネ。
……男が怯える程倍返ししたのか?;
まぁでも、よくやった。
女の子を苛める奴は私も許さん。
「男が怯える程の事をしたのかお前は;
一体何をしたんだ?」
「えーっと確か…ダニーにお尻噛ませてズボンに穴を開けたり、ひっつき虫を靴の中に敷き詰めたり、ピカピカのタイルの床に水を撒いて相手を滑らせてその先にあるセメントに直撃させたり、それから……「もういい、もうやめてやってくれ。」」
予想以上の倍返しだった。
流石の私も野郎共に同情してしまった。
地味な様に見えて何気に惨い悪戯だな。
てか滑らせてセメントに直撃させるとかトムとジェ〇ーかよ。
「えー、ここからが面白いのに…」
「まだあるのかッ!?」
「……流石悪戯仕掛人とまで呼ばれただけあるわね。」
「いや、悪戯という度を越えていると思うぞ?;」
そう言ったディオは遠い目をしている。
まさか長男であるジョナサンよりも、妹のセレネの方が厄介だったなんて思いもしなかっただろうからね、うん。
「フフッ、そんな僕を驚かせることは出来るかな、ディオ?」
セレネは、「僕に勝ってごらんよ」と言わんばかりの挑発的な笑みを浮かべる。
「フン、このディオを挑発するとはな……後で後悔することになるぞ?セレネ」
セレネはこの時まで、ディオの事を甘く見ていた。
………後にディオのターンがやってくるとも知らずに。
††††††††
セレネside
「もうジョジョの食器を下げたまえッ!!」
「えッ!?」
父はいつまでもテーブルマナーを覚えないジョナサンを見て、いい加減堪忍袋の緒が切れたようだ。
「父さん、それはやり過ぎなんじゃ…「いや、セレネ…私はジョジョを甘やかし過ぎていたと悟った。ディオ達を見たまえ!!二人のテーブルマナーは完璧だぞッ!!」」
しまった……ジョナサンのテーブルマナーの事までは考えていなかった。
ディオの方をチラリと見ると、僕の視線に気づいてニヤリと笑った。
僕は女の子だからテーブルマナーは出来て当然だけど、ジョナサンは男の子だからとまだ多目にみてもらえていたのに…。ジョナサンの食べ方が汚いのは事実なので反論出来ない。
ジョナサンはバタァンッ!!と勢いよく扉を開け、自室へ走って行ってしまった。
僕が食べ終わって食間を出ると、ディオが壁に寄りかかり待っていた。
「フン、今回は俺の勝ちだな。」
「アハハ……やられたよ;」
「テーブルマナーまでは頭が回らなかったんだろう?」
「………;」
「フッ…図星か。」ニヤリ
ディオは僕の反応を見て、満足そうに笑みを浮かべる。
くっそぉお、何も言えない!!
あぁそうさ図星さッ!!
この間までは物理的な悪戯ばかりだったから、コッチの方までは頭が回らなかったよッ!!
「むうぅ……この仕返しは倍にして返すからねッ!?」
「良いだろう、受けて立ってやる。またお前の悔しがる顔を見たいからな」ニヤリ
僕はそう言ってしたり顔をするディオにムカついて、「アッカンベー」と舌を出し足早にディオの元から去り、ジョナサンの部屋へと向かった。
†††††††††
コンコン
シーン………
………返事がない、ただの屍(ry
「ジョナサン?入るよー?」
僕は扉を開け、ジョナサンがいるであろうベッドへスタスタと歩いていく。
ていうか電気つけようよジョナサン、薄暗いよ。
「……」
「………」
「おーいジョナサーン」
「………」
「ジョーナサーン、父さんに叱られて拗ねているジョナサーン「お願いだからそれ以上言わないでくれッ!!;」……やっぱり起きているじゃないか」
寝たフリを決め込んでいたジョナサンは、僕の言葉に反応しガバッ!!と起き上がった。
「何しに来たんだい?セレネ」
「ちょっとジョナサンを元気づけようと思ってね。」
そう言って僕は隠し持っていた釣糸の先をクイッと引いた。
「It a magic!」
僕の真上の天井につけられていた釣糸が引っ張られ、天井が小さい円上にパカリと開き、そこから色とりどりの飴が入った小さな透明な瓶が降ってきて、僕の右手にポスリと落ちた。
「じゃーん!!」
「えッ!?今のどうやったんだい!?何処から降ってきたの!?」
「フフッ、それは企業秘密だよ!」
ジョナサンには部屋が薄暗いので、さっき天井が開いた所は見えていない。
……実はこの邸には、僕のトラップがそこかしこに仕掛けられている。
勿論誰の許可も得ていない、僕がこっそり作ったものだ。
まぁバレたことはあったが、そのトラップで今の様に相手にプレゼントを渡したりもするので、父からは咎められることはなかったから問題ない。
「これ、ジョナサンにあげる」
「え……いいのかい?」
「うん、ジョナサンお腹空いてると思って。これで元気出してね!」
「セレネ……」ジーン…
ジョナサンはウルウルとした目で、僕に抱きついてきた。
「ありがとうッ!!セレネだけだよ僕の味方をしてくれるのはッ!!」
「当たり前さ、僕の片割れの双子を放っておけるわけないだろう?お兄ちゃん♪」
「お、お兄ちゃんって……///;」
ジョナサンは僕がお兄ちゃんと呼ぶと照れる、あまり呼ばれ慣れていないからだろう。
「………」
「セレネ?」
「ごめんねジョナサン、僕が君に指摘しなかったから……」
「セレネが謝ることないよ、僕が直さなかったのが悪いんだから。」
「でもッ……そのせいでディオと比べられてッ……!」
「大丈夫。」
そう言って、ジョナサンは自身の額を僕の額にコツンとくっつけた。
「僕はまたすぐに立ち直るさ、セレネが心配してくれるのは嬉しいよ?でも、これは僕自身の問題だ。自分の力で解決しないと意味が無いだろう?だから、セレネがそんなに頑張らなくてもいいんだよ。」
「………うん」
「落ち着いたかい?」
「……ん、大丈夫。ありがとねジョナサン。」
僕達は昔から、どちらかが焦っている時や心が不安定になっている時は、お互いの額をくっつけ合った。
お互いの意思を確認するように、「僕は此処にいるよ」と、互いの存在を確かめ合うように。
そうすると、不思議と心が落ち着いてくるのだ。
大人になっても、どちらかに恋人が出来ても……これだけは一生変わらない。
「まぁ、ディオに倍返しはするけどね!」
「結局するんだ!?」
「だってこのままじゃ悔しいんだもんッ!!」
「アハハ、セレネらしいね;」
そうこう話している内に僕達は眠くなり、久し振りに二人で一緒に寝た。
え、その後どうしたかって?
「勿論ディオにはきちんとお返ししておいたよ、ディオが庭へ来た瞬間スプリンクラーの水を大噴射させてびしょ濡れにしたり、そのあと追いかけられて曲がり角に曲がった瞬間足を引っかけて転ばせたり、お風呂まで走ってディオが入ってきた瞬間石鹸を足元に飛ばしてディオが転んでホカホカのお風呂に落ちたり、それから…「セレネ……貴様ァアッ!!」」 ザバァアッ!!
只今絶賛追いかけっこ中です。
ディオはお風呂に落ちたので湯気がたっている。
……ヤバい、そろそろ次に移らないと!
「さぁーて次の仕掛けはー♪」
「もういい加減にしろォォオオッ!!!」
To be continued…