第2奏
ディオside
あれからジョースター卿がやってきて、その場の騒ぎは一先ず収まった。
俺達は屋敷の中へ案内され広間へ行くと、使用人達が一列に並び集まっていた。
「疲れただろうディオ君、レイ君!ロンドンからは遠いからね。
君達は今から私達の家族だ。私の子供、ジョジョ達と同じ様に生活してくれたまえ」
ジョースター卿はジョナサンとセレネの頭を一撫でした後、クルリと俺達の方を向く。
「彼らは家事をしてくれる皆だ。私は海上貿易の仕事をしており、時々家をあけることもある。
その時は彼らに全てを任せているんだ。」
使用人達が一礼したのを、俺は横目でチラリと見る。
使用人達のことはどうでもいい、俺が今気になっているのは……
「ジョースター卿、御好意大変感謝致します。
失礼ですが……先程の件を詳しく伺っても宜しいですか?」
先程の件……そう、あのセレネがダニーを浮かせた事についてだ。
「あぁ、私もその事について話そうと思っていた所だ…来たまえ。」
そう言って、隣の客間へ入ったジョースター卿の後を、俺達はついていった。
†††††††
ジョースター卿が言うには、セレネには不思議な力があるらしい。
生まれつき風を操ることが出来るらしく、先程のあれは風でダニーを浮かせたという。
それを聞いた俺達は驚き半信半疑だったのだが、セレネが目の前で花瓶を浮かせ、花びらがくるくると俺達の周りを舞った事により本当だと確信した。
「それを目撃した協会の一部の人々は、天使の様だとか神に愛されし子だとか言っていたが…「父さんッ!!それは言わなくたっていいだろう!?」ん?あぁそうか、セレネは気にしていたね。」
「そんなこと言われたって僕は普通の人間なんだから困るだけだし、それに…僕は僕だ、それ以外の何者でもない。」
そう言った時のセレネの淡い金色の瞳は、より一層輝いて見えた。
……なるほど、特別な力を持っているからといって、見せびらかして「俺凄いぜアピール」するような馬鹿ではないということか。
「ジョジョ、ダニーの事はもういいね?」
「はい…僕も急に知らない犬が走ってきたらビックリすると思うし、気にしていません」
「そういうわけだ。ディオ君、レイ君……ちょっと変わった子だが、どうかセレネと仲良くしてやってほしい。」
そう言ってジョースター卿は、「ほら…」と言ってセレネを俺達の方へ押す。
セレネは姉さんの傍へ近寄り、「宜しく、お姉ちゃん!」と言って姉さんと握手をする。
……なんか姉さんが複雑な表情をしている。
どうせ「お姉様って呼んでくれないかな」とか思っていたんだろう。
姉さんと握手を終えた後、セレネは俺の傍へ近寄ってきた。
そういえばコイツ、あの時俺の考えている事に気づいていたな……。
風を操るだけじゃないのか?もし人の考えが読めるのなら、かなり厄介なことになるぞ……。
そう思いセレネの方をチラリと見ると、セレネも俺と似たような事を考えていたのか、俺と同じタイミングで此方をチラリと見て、お互いに目が合う。
「……」
「……」
俺達はお互いをジッ…と見つめた後、ニヤリと笑った。
「これから“仲良く”しよう、宜しく…セレネ」
「そうだね、“仲良く”しよう……ディオ」
握手を交わした時、セレネは悪戯っ子の様な笑みを浮かべていた。
この出逢いが後に運命の歯車を狂わせる事になることを、その場にいる誰もが知るはずもなかった。
To be continued…