第1奏
ディオside
父が亡くなった後、ジョースターという貴族の家から手紙が来た。
姉弟である俺達を養子として迎え入れたいと。
なんでも、あの屑野郎がジョースター家に恩を売っていたらしく、
死ぬ前に俺達の事を手紙に書いて知らせていたらしい。
まぁ、あの屑の事だから何か企んでいたと思うが……俺には関係ない、利用できる者はなんでも利用してやる。
ジョースター家を踏み台にして伸し上がり、姉さんと共に腐った貴族どもを嘲笑ってやるんだ。
そういえば、ジョースター郷には二人の子供がいると書いてあった。
その二人は一卵性の双子らしく、
一人はジョナサン・ジョースター、
もう一人はセレネ・ジョースターという兄妹だ。
妹の方は何もしなくても大丈夫だろう、今の時代は普通男が家を継ぐものだ。いずれ結婚して家を出ていくだろうし、形だけでも仲良くしておけば良いだろう。
問題は兄のジョナサンだ……どんな奴かは知らないが、奴より優秀であることを認めてもらい、ジョースター家を俺が継ぐという形に持っていけば……
後は此方のものだ。
ガタゴトと揺れる馬車の中、頭の中でそう計画しニヤリと笑う。それを見て、俺が何をしようとしているのかを悟った姉さんは、深い溜め息をついた。
後に兄よりも妹の方が厄介になることを、この時のディオは知らない。
†††††††††
セレネside
―近々、僕らに家族が増える―
それを聞いたのは、この間の晩に家族と食事をしていた時だった。
「え…それはどういうことですか?父さん。」
カチャカチャと皿の上でナイフを動かしていた手を止め、僕の双子の兄であるジョナサンは、父にそう尋ねた。
「先日、私の恩人であるダリオ・ブランドー氏から手紙が届いてね。彼はもう長くは生きられないらしい。そこで彼は私に、自身の子供である姉弟を養子として引き取ってくれないかと言ってきたんだよ。」
命の恩人である彼の頼みを断るわけないじゃないか、と父は言った。
その姉弟は名をレイ、ディオ・ブランドーというらしい。弟の方はジョナサンと同い年だという。ということは、僕とも歳が同じだということだ。
一体どんな子なのだろうか……。
兄であるジョナサンは、当日になった今日も普通にダニーと遊んでいるが、僕は終始ずっとウズウズしていた。
「あ、来たッ!!」
ガタンッと大きく揺れ馬車が止まった。
僕はダニーとじゃれていたジョナサンを呼び、馬車の方へと駆け寄る。
すると突然、バンッ!!と馬車の扉が開き、
二つのトランクがドサッと地面に落とされる。スタッとブロンドの少年が華麗に降りてきた。
バーンッ!!
………なんだか今効果音が聞こえた気がするが、あえて聞こえなかったことにしよう。
少年はスッと手を差し出し、馬車に乗っていた同じ髪色の少女が降りるのを手伝う。
ジョナサンはタイミングを見計らって、
少年達に話しかけた。
「君がディオ・ブランドーだね?」
「そう言う君はジョナサン・ジョースター」
「じゃあ、君がレイ・ブランドーかい?」
「えぇ、そうよ。」
「皆ジョジョって呼んでるよ、これから宜しく!」
そう言ってジョナサンとディオは握手を交わしたが、ディオはなんだか不服そうな顔をしていた。
どうやらディオはジョナサンをあまり良く思っていないようだ、というかこれは……嫌悪感?
そう思って僕はディオに意識を集中させる。
……うん、ディオからは悪意しか感じない。
これからはブラックリストとして要注意だ。
ワンッ!と元気な声が聞こえてきた。
その方向を見ると、ダニーが此方へと走って来ている。
「ダニーッ!!紹介するよ、ダニーって言うんだ!僕の愛犬でね、とても利口な猟犬なんだ。心配ないよ!決して人は噛まないから、スグに仲良くなれるさッ!!」
と、ジョナサンがダニーの事を説明している最中に、ディオの悪意がより一層強くなった。
「!」
ダニーを蹴る気ッ…!?
バッとディオの方を見ると目が合い、ディオは自身がダニーを蹴ろうとしているのを僕が気づいた事に驚くが、スグに表情を変えニヤリと笑った。
そんなことさせるわけにはいかない。
彼にとっておきの魔法を見せてあげよう。
彼がダニーを蹴ろうとした瞬間、僕は笑う。
「It a magic!!」
ふわっ
「!!」
「なッ…!!」
僕がそう言った途端、ダニーの体は風でふわりと浮き、ディオが蹴ろうと降り下ろした足は宙を蹴り、それは無駄に終わった。
ディオは目を見開き驚いた表情で此方を見る。
うん、良い表情だ。
「僕の名前はセレネ・ジョースター、
ジョナサンの双子の妹だよ。」
宜しくと言って、僕はディオにニッとした笑顔を向けた。
To be continued…