第7奏
ディオside
コンコン
俺はセレネの自室前で立ち止まり、扉をノックする。
「ジョナサン…?」
「俺だ。」
何故そこでジョジョの名前が出てくるのだ、腹が立つ。
「へっ!?ディッディディディディオッ!?」
「入るぞ。」
「えッ!?ちょ、ちょっとまッ…」
ガチャッ
俺は問答無用でガチャリと扉を開け、スタスタとセレネの元へ近づいていく。
「ど、どうしたの急に?ディオから僕の部屋に来るなんて珍しいね」
「お前こそどうした、いつもの悪戯は仕掛けて来ないのか?」
「!!」
「動揺しているのがまる分かりだぞ、今日の挨拶が良い例だ。」
「そっそれはッ…!!//」
「俺がキスしたからか?」
「そんなにハッキリと言うなぁぁああッ!!///」「フン、それくらいで「アレがそれくらいで済むの!?」………ふむ、初めてであれはキツかったか。」
「ていうかファーストキスが血の味っていう時点で可笑しいよね?//;」
赤くなった両頬を手で押さえ俯くセレネを見て、俺は自分の口角が自然に上がっている事に気づいた。セレネが俺の事を男として意識している、たったそれだけの事で俺は嬉しかったのだ。
……しかし、それだけではまだ足りない。
「セレネ」
「んー…何?」
「俺はお前が好きだ。」「……へ?」
「お前は俺の事をどう思っている?」
「え…ちょ、ちょっとまってッ!!え!?ディオが僕をッ!?///」
「そうだ」
そう、それだけでは足りない。俺はお前が欲しいんだ。
セレネは俺の言ったことが信じられないらしく、ジーッとジト目で此方を見つめてくる。
「……いつもディオの周りに罠を張り巡らせているこの僕を?」
「あぁ。」
「わざと僕に嫌がらせでキスしてきたディオが?」
「……それは悪かった。」
反省はしているが今は後悔していない。
………なんて言ったら怒るだろうな、別に身長の低いセレネが怒ってきても怖くないが。
「…………ディオが何を企んでいるのかまでは知らないけど、それを阻止しようとしている僕を…好きだというの?」
「……」
そう言って、不安げに瞳を揺らしながら此方を見つめてくるセレネの顔には、「何故?」という疑問が書いてあった。
「確かに最初は、俺にとってお前は邪魔な存在でしかなかった。お前の罠にはとことん嵌められるし、作戦は殆どと言っていいほど失敗する。この間のボクシングだってそうだ。」
あれは本当に酷かった。
ジョジョの眼球に親指を突っ込んでやろうと思い、そのままパンチを食らわせようとしたらセレネが此方に走ってきて、その勢いを殺さずに俺の後ろに周って膝カックンしてきたのだ。そしていつもの鬼ごっこが始まり試合は引き分けとなった。まぁそのお蔭であの取り巻き共が、「悪戯仕掛人に立ち向かっていくなんて凄い」と俺に引っ付いて来るようになったのだが。
「しかしお前は……敵対すべき相手であるこの俺を拒まず、寧ろ好意を持って本当の家族の様に接した。何故お前は敵の俺を嫌悪しない?お前にとっても俺は邪魔者でしかないだろう?」
俺がそう問うと、セレネはキョトンとしながら俺にこう答えてきた。
「え?だってディオは、敵とはいえ全てが悪いというわけではないだろう?人の良いところはちゃんと認めて褒めるし、それに敵だと認めている僕に悪意を持たずに優しくしてくれるじゃないか。例えばこんな風に触ったって…」
そう言いながら、セレネは俺の手を取りそっと両手で包み込む。
「僕のことを嫌がったりしないだろう?」
“ほら、こんなに温かいよ君の手は”「ッ……!!///」そう言って微笑むセレネを見て、俺は堪らずセレネを引き寄せ抱き締めた。
「へっ!?ちょっ…!?///」
「俺はお前のそういう所が好きなんだッ……お前のそんな所に…俺は惚れたんだ」
「……ディオ…」
「セレネ、もう一度聞く。お前は俺の事をどう思っている?」
「…………僕も…同じ気持ちだよ、ディオ。僕も君の事が…………
好きだ。」
それを聞いた俺はセレネにキスをした。
今度はあの時とは正反対の、触れるだけの優しいキスを。
To be continued…