09
そんなうち、同じ生活をして10年の歳月が経っていた。
同じ官房の囚人も出所して、官房は章吾一人になっていた。
章吾は窓から外を見る。雪が降っていて、凍るような寒さだった。
章吾は刑務所内で仲間も増え、
「出所してからも友達でいよう」と言われた。
「出所したら章吾さんと飲みたいなぁ」と言われる。
「出所したら住所を章吾さんに送りますわ。ええ友達でいてくださいや」
「ああ。わかった。じゃあ俺の携帯の番号」と言って、囚人の仲間に教える。
そのうち、章吾の仲間も次々に出所していった。
ある日、章吾が官房でいると、空が淡色になり、光輝いた。
凄い爆風が吹いてきたが、章吾はそれが何かわからなかった。
他の官房の囚人も何が起こったのかと窓を見つめていた。
それが数分続き、収まった。
「今の爆風は何だ?」
「わからない」
章吾は刑務官に何が起こったか尋ねたが、刑務官は何も答えなかった。
それから数年が経った。
ある夜、章吾は寝支度を整えて、休もうとしていると、
官房で奇妙な声を聞いた。
「おい」
その声に驚いて、章吾は声を上げた。
「なんだ」
「私は悪魔だ。神がお前の人生の味方もしてくれないので、かわりに来た。
お前は罪を犯した。私は知っている。これからお前を私が姿を竜に変える。
その恐ろしい姿に誰も近寄らなくなり、忌み嫌われるだろう。
おもしろい男だ。
お前は、ここを出て、数年で姿は竜に変わる。
お前が助かるのは、では本当に悔い改めれば姿を人間に戻してやろう」
その問いに章吾は、
「俺は誰からも愛されなかった、いっその事、俺を殺してくれないか?」
「だめだ。お前が人間に戻りたいと努力すれば救われるだろう」
その声に驚いて章吾は飛び起きた。
「夢か・・・」
章吾は呟いた。