05
大きなホールで舞台には能をつけた着物を着た女が歌舞伎の演技をしていた。
暗いホールで歌舞伎を見ていた、ヤクザの親分に手下の一人が小声で言う。
「章吾です、章吾がきました」
それを聞いてボスは、章吾を見る。
「おお、章吾」
「兄さん、仕事をかたずけてきました。下野組の奴らに括をいれてきやんした」
章吾は言う。
ボスは喜んで、
「お前は頼りになるわ」
と言った。
「それとおやっさん、金貸してくんねえか」
と言う。
「なんに使うんだ」
「俺の知り合いのソープの娘が死んじまった。葬式にいきてぇから、今、金がねえ。
香典でいるんだ」
「そんな金もねえのか」
「今はねぇ」
章吾は組の金で生活していた。
その次の日、死んだソープの女の葬儀に行く。喪服を着て、女の葬儀に行き、
焼香をあげ手を合わす。
身内の人が、
「娘とはどういった関係ですか?」
「昔に付き合っていた男です。別れた後も仲が良かったですから、
娘さんによくしてもらったから。少ないけど受取ってください」
そう言うと、その身内が、
「どうゆう事を?」
「俺、ヤクザやっとりまして、いろいろと」
そう言うと、
身内の人がざわついて声をかけるのがなくなる。
「帰ってください」その娘の母が言った。
「ヤクザの人となんて関わりたくないんです。あの娘の葬儀にそんな人が来るなんて・・・、警察呼びますよ!」と必死に母は叫んだ。
そう言って、言い争いになり、葬儀の人に外に連れ出された章吾は、
ぶつぶつ言って、そのまま家に帰る。
そのままボスの所を章吾は訪ねる。
ボスの組には金に困っていた、別の組に雇われた、税理士が組の借金の事について説明してきた。
税理士が帰った後に組の手下と一緒に話しをする。
「組も借金で首が回らん」
そっと手下が言う、
「あの税理士を殺せば、借金はチャラだ」
それを聞いて、
「あいつを殺せ」とボスは言う、
「わかりました。では誰にやらせるかですな」
ボスは考えて、
「誰かいないかな」
「章吾はどうですか?」と言った。
続けて、
「あいつは組の頭を次に狙っている奴だ。やらせてはどうですか?」
「うん・・・」
頭は言う。
そんな話をしているうちに章吾が組に来た。
章吾がきて、全員やさしくなり、
章吾は組長の部屋に呼ばれる。
「組長。お願いがあります」
「最近、お前の事について下のものがよく言っている。私の椅子を狙っているのじゃないかと」
それを聞いて章吾は、いい機会と思ったか、
「相談ですが」
「なんだ?」
「頭には世話になりました。そんな気はありません。実は・・・」
「なんだ言ってみ」
「俺も堅気になろうかと思いやして・・・」
ソープで女をなくした章吾はいい加減に表の道に進む事を決意していた。
「組をやめたいんか?」
「はい」章吾は言った。
それを聞いて、親分は、
「じゃあ条件がある」
「なんですか?」
「お前の最後の仕事だ。私が借金をした、よく出入りしている税理士を殺すよう指令した。お前に奴を殺ってほしいのだが。出所したらやっていける金はやる」
章吾はしばらく考えて、
「わかりました頭」と言った。