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列車に乗って東京に章吾は向かっていた。
外はまばらな集落が見えるだけだった。列車は東京に向かった。
夕暮れ時には、列車は東京に着いた。
東京は昔の面影を少し残すものの、集落のようだ。
列車を降りて、章吾のヤクザの事務所に向かう。
章吾が行ったところにはもう事務所はなく雑貨店になっていた。
雑貨店の眼鏡をかけたおじいさんが何か虫眼鏡でカメラをいじっていた。
章吾はその人に尋ねる。
「20年前にここにヤクザの事務所があったでしょう?」
「この店ができる前だよ。もう世界崩壊後、別の地区に変わったみたいだがなぁ」
「住所はわかりやすか?」
「わかるわけないよ」
章吾は携帯でヤクザの子分に電話をかける。
ほとんど電話番号は変わっていて繋がらなかったが、一人だけ電話に出た。
「章吾さんひさしぶりやなぁ」
懐かしそうに一人は言う。
「刑期を終えて、約束どうり出てきた。おやっさんに会いたいなぁ。今どうしてる?」
「数年前に癌で死んだわ」
その答えに章吾はいきなり声を出して泣いた。
「ここまでしてくれたのおやっさんのおかげや」
「おやっさんが組の金章吾さんに残してくれとるみたいやで」
「じゃあ今から会えないか?」
「わかった」
そう言って、章吾と子分の男は会った。
「おやっさん、死ぬ前、章吾さんの事、よう言ってましたわ」
「ああそうか」
「章吾さん、新しい組の事務所案内しますけん」
「もう金もろたら、俺この世界から足洗おうと思うとるから・・・」
そう言って章吾を組の事務所に案内する。
ヤクザの会の名前も頭からあの殺害をもちかけた子分だったあの男が組の新しい頭になっていた。
章吾と会うと新しい頭は不機嫌そうに、
「何しに来たんですか?章吾さん・・・」
「刑期終えて出てきた、お金残してくれるゆうて」
「死んだ頭が章吾さんに金残してくれとるみたいや。これが口座です」
そう言って、めんどくさそうに言い捨てた。
章吾は銀行に行って金を引き出す。
「章吾さん、新しくなった頭が組のために金を引き出していて、あまり残ってないようですで」
「どうゆう事や!」章吾は頭に詰め寄る。
「組のために使った事です」
「ふざけんな!」
やっと怒りがおさまり、銀行から金を引き出す。
「この近くにパチンコ店はあるか?」
子分が「まだやっている店はあの店があります」そう言って、章吾から去る。
章吾はパチンコ店で1日を終える。
その次の日、手下に教えられた所の頭の墓参りに章吾は来た。
水を墓石にかけて、
「頭・・・もう死んでしもたんか・・・」
と言って、思い出話を墓石の前で章吾はいろいろとした。