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自宅へ帰る頃は夕方だった。妹が、自分の得意なエビのグラタンを作ってくれた。
その日は、家でティムは長い間、何本ものシャンペンを開けた。その日は家族と夜遅くまで騒いでいった。
疲れて朝、ティムが目を覚まし、キッチンに行き、コーヒーを沸かして、気持ちを落ち着かせた。
「朝のコーヒーは落ち着く」とラリーは独り言を言う。
我々の内戦は最後を迎えた。ティムは新聞から、自分の書いた新聞記事をハサミで切り取り、
自分のアルバムに載せていった。内戦の悲惨さを物語っている。今度は武力でなく、
平和的議論について戦いたいとティムは誓った。
それと、いつものように朝の郵便受けを見ると、多くの手紙が溜まっている。
勧誘の書類ばかりだ・・・。と思いつつ、一つの封筒にあった手紙がティムを気づかせた。
宛名には、自分がベルカ軍兵士とゆう事で名を教えたくないとの事で、
ウスティオ内戦の終わりで手紙が自由になった頃。
手紙を送った黄色の13からの手紙だった。ティムはその宛名の名前の載っていない手紙を封を切って部屋で読んだ。
ティムフォルクに手紙の返信と文の初まりはそうつづっていた。
友人 ティム・フォルクさんへ
貴方がこの手紙を見る頃には、私は貴方と戦争が終われば友人になれそうです。
名前はあえて書きません。貴方の父を奪った人間として、非常に貴方に声も掛けれませんが、
これが軍人の任務です。
私にも家族はいます。それを戦争により奪われるのは誰よりも辛いことです。
心からその気持は察します。今、ベルカは古い国からの脱却を目指しています。
海外の豊富な考えを取り入れて、進歩していきたいと願っています。
ベルカを生まれ変わらしたい。それが私の夢です。貴方の父を堕としたのは覚えいます。
若い軍に入りたてでした。心から痛みます。でも私は軍人です。その誇りは持っています。
軍人である以上、それを踏まえるのが軍人の努めです。
貴方はウスティオ内戦でここまでになるとは想像以上です。いつかベルカも素晴らしい国になる事を祈ります。
それは、国境を超え、貴方がベルカ人だったように、政治が変われば、いい国になる力をウスティオも
ベルカも持っています。本来なら戦いたくもない。だが、私は職務をまっとうするだけです。
最後の任務だから行かなければいけないから・・・。私は飛びます。
貴方の顔は知らないが、戦争が終わればいい友人になりたいです。
手紙を本当にありがとう。
ティムはテーブルで何度もその手紙を読み返した。その瞳には涙が少しあった。
車から、海岸を見ながら、
そのまま窓を見ると、海岸に多くの人の海水浴客の姿が見える。
「やっと平和の訪れか・・・」ティムは海岸に車を止めて、海を見つめていた。
長かった内戦・・・やっとの平和が帰ってきた。
黄色の13からの手紙が届いた1週間後、ラリーが病院で危篤状態にある事をティムは知った。
すぐ家族を連れ、ウスティオのラリーの病院に向かった。
長時間の手術。家族のいる中、手術は成功した。医師の説明で手術は成功したのを聞いた後、
看護婦がティムを病室に案内してくれた。
病室でティムは、包帯だらけで見えないラリーの顔を見つめながら、何時間も意識が覚めるのを待っていた。
そのうちラリーの意識が戻ったか、ラリーの目が少し開いた。
「手術は終わったよ」とティムは言う。
「この分では、当分、飛ぶのは無理だな」ラリーはそう言う。
「兄さん・・・」とティムはラリーの手を持って、さすりながら言った。
「こうやって面と向かって話すのも何年ぶりかな」ラリーは答えた。
「兄さんの帰りを母さんとかとずっと待ってた・・・。」そう言うと繰り返し、
「今の気分は?」と聞いた。
「とにかく疲れたよ・・・ティム・・・。」そう言って少し目を少しうつむけてラリ−は瞳を閉じる。
「今、何か欲しい?」とティムはラリーに気をきかせて言った。
その言葉を聞いて、ラリーは目を開いて、一瞬考て、沈黙した後、
ラリーはまだダルそうだが、ゆっくりと口を開いて、
「そうだな。病院の近くのエル・グランテのコーヒー店で、少し高いけれど、ココア豆を買ってきてほしいな。
あそこのココアは美味しいから。
病室で熱いミルクココアでも入れてくれないか」と言って、少しはずかしそうに微笑んだ。
それから、病室でティムとラリーは抱き合い、再会を喜びあった。