18
連合軍の150機大編隊は、バルトライヒ山脈を南に向かっていた。
バルトライヒの山脈にはオーロラが輝いていた。
「敵のレーダ網に引っかかるな。できるだけ低空を維持しろ」
作戦本部の命令が無線で聞こえた。
低空で雪に包まれた山々は暗い。
「視界が悪い。高度に注意しろ」仲間の声が、ラリーに耳元で伝わる。
「今の所どうだ?」
「敵空軍のベルカ軍は見当たりません。順調です」ラリーは答える。
連合軍はオーレリア機の数が多い。
バルトライヒ山脈は2000メートルの山々が連なっている。
まるで、沈黙した巨人達のような、人間の意志に屈せぬ、誇り高い自然の建造物なのを思い描かされる。
途中で雪崩が観測できる。そのうち、風が轟々と悲鳴のような風が吹いてきた。
「高度、3000メートルを維持。」
「今の所ベルカの編隊は見あたらないな」と仲間が安心そうに答えた。
「アルジーニにはもう少しだ」
ラリーは報告をいれる。
若い味方の兵士が、
「中尉、来週僕誕生日なんです・・・。生きて帰れたらいいな・・・」と言った。
「ああ。俺も誕生日だ」
ラリーは言った。
その内、戦闘機のガラスに小雨が降ってきたが、
それは雨から少しずつ雪にかわり、風とともに雪はしだいに吹雪になってきた。
「風が鳴いている・・・」ラリーはそう呟いた。
稲妻の光が輝き、数分感覚で爆音が響く。空が荒れ狂っていた。
今まで、反政府軍の土地だったバルトライヒを抜けている。
アルジーニには着けるだろうか。ラリーはそう思った。
山脈は日の光がなく、暗い白さに包まれていた。山々を確認するには、非常に暗すぎた。
仲間の一人が無線越しから反戦の歌を歌いはじめた。
エストバキア軍の一人が「我々もその歌を歌わせてくれ、その歌は大好きだ」
と言った。
その歌は連隊の皆が歌う歌へと変わっていった。
このままいくとバルトライヒ山脈のハードリアン線を抜けそうだ。と、そう思っていた頃、
レーダーに機影が近づいてくるのが確認できた。
確認できた機影は、初めは少なく、やがて雪崩のようにレーダーに映る機影が多くなっていく。
管制官の声が変わった。
「各機迎撃体制をとれ。おそらくベルカ軍本隊ではない。くりかえす本隊ではない」
「ベルカ軍に気づかれたな」ラリーの仲間のパイロットがそう言った。
「管制官の旦那。簡単に言うなよ。ちびりそうだ・・・」
「突破して、一刻も早く、山脈を抜けるぞ。」
「ただでは通してくれそうにゃあないな」バートレットはかすかに笑って、無線で答えた。
連合軍120機の連隊に迎え撃つ、
ベルカ軍の最新鋭FA18FとF14の機が空を埋め尽くしていた。
総勢、有に100機は超えている。
凄い数だな・・・。それでもわずかながら数はまさっている。ラリーはそう思った。
「おい、きやしたぜ」仲間がラリーに無線で知らせる。
「各機迎撃態勢をとれ」バートレットの声が響く。
ベルカ空軍の特殊部隊のパイロットが、「野犬狩りだ」と同じベルカ軍に伝えた。
「各機に次ぐ、連合軍にハードリアンラインを絶対に通すな」
「壮観だな。ここは通さんぞ」ベルカ語で軍パイロットは答える。
ラリーは、操縦桿を握りしめ、「さあ、いよいよだな」と仲間に伝えた。