12
囚人はウスティオの森が広がる、町とは遠く離れた刑務所に収監されていた。
ティムは、刑務所に囚人を引き取りるため来ていた。
「こちらの刑務所に収監されている囚人の身元引受人として伺いました」
刑務所の薄暗い部屋の事務員が名前を確認する。
「名前は?」
「ニートベルト」ティムは言った。
「囚人番号189」刑務官はそう言って、ニートベルトを電球の明かりが切れている、
薄暗い通路を懐中電灯を持って案内した。
刑務官に案内されながら、暗い通路を進み、刑務官が独房に案内された。
刑務官が囚人番号を確認して、スイッチを押して牢屋を開ける。
牢は開き、ティムを通して、それだけして刑務官はそのまま戻っていった。
手探りで部屋のスイッチのある所を調べ、電気をつける。薄暗い明かりの電球が灯った。
独房の椅子に座り、髭を生やして変わり果てたニートベルトの反対側の椅子にティムは座った。
「ニートベルト、内戦は終わったよ」
「ああ・・・そうか」ニートベルトは短く答える。
そのまま沈黙が続いた。
「変わったな」ティムはニートベルトに視線を合わせながら口を開いた。
「さすがにきつかったよ」
「今日で釈放だ。」
ニートベルトはその言葉に黙っていた。
「君と久々に話せて嬉しい」
「そう」短くニートベルトは答える。
「何か、してほしい事はあるか?」
「今は家に帰って、少し休みたい」
風邪で、咳が止まらないようだ。
ニートベルトはときおり苦しそうに咳込む。少し微熱があるのを隠しているようだ。
「政権は倒れた。戦争反対の意見で、来年2月には停戦協定が結ばれる。
お前もやっと自由だよ」
「さすがに疲れたよ」
それから刑務所暮らしの事をニートベルトは不満を何度もティムに語った。
それと夜に掃除に来る爺さんだけが話相手で少し寂しいと語る。
それから、刑務所の夜になると他の囚人の喚き声が聞こえて胸が耐えられない話とかをティムは黙って聞いていた。
それからニートベルトを元気ずけようと話題を変え、
「これから後、食事でもしよう。好きな物を腹いっぱい食べさせてやるよ」
「俺の身元引受人になってすまない。これからどうするか考えているんだ」とニートベルトは、言う。
「ベルカに帰るか?ウスティオに残るか?」
「ウスティオに残りたいな。」
「とにかく、酒でも釈放されたら飲もう」
「ああ」
「君は何している?」
「とにかく終わったな・・・」
「あまり力にはなれなかった。悪いな・・・」
「ああ」
「ここを出たら何をする?」
「なんとか、やっていこうと思う。それより、なぜだか自分でも解らないが少し怖い・・・」
ニートベルトは短く答えた。
「なんだかんだで、長い仲じゃないか」ティムはニートベルトを軽く抱きしめて、
「ベルカの軍人に唾でも吐きかけて、もうすぐくる君の誕生日でも祝おうじゃないか」
と笑って答えた。