02
ラリーは最後の任務なのに普段どおりだった。
山は雪深く、静かだ。
ラリーは空の上から、山脈を見下ろす。
山脈の険しい美しい風景を見るのはこれで最後かもしれない。
今の内に目に焼き付けておきたい。
いや、最高の風景なんてたくさんあった。
自分が気に掛けなかったせいだとラリーは自分を攻めた。
「こちら管制官。以上はないな」と管制官は言う。
ラリーは、「自分の最後の任務だ。じっくりやり遂げたい」と伝える。
「こちら、フォックス2。燃料が心配だ。確認出来るまでは確認出来たが」その後、
仲間に異常はないか確認すると、
「こちら管制司令室よりウォードック。燃料を各自確認した上で距離の飛行をお願いする」
若い管制官の声が響く。
「普段のエンジンの調子が悪い。補助エンジンに切り替えても長くもちそうにない。
問題はない、基地への帰還が良い選択だと思う」
管制官が、「基地への帰還を認めます」
「では、基地に帰還する」と言った。ラリーの編隊は方向を変え、ゆっくりしたペースで帰還していく。
そしてラリーは機首を西にかえて、帰還しだした。
管制官の老人はチョコレートを食べながら、ラリーに最後の任務を普段どうり、
出迎えた。
「今日で俺の任務は全てだった。俺も、軍で最後だ。
いろいろとありがとう」とラリーは管制官に無線で伝える。
基地に帰ってくると、基地から滑走路に多くの人が集まってラリーを誘導して出迎えた。
滑走路から、ラリーに向けて手を振る人間もいた。
基地は夕暮れが残っていて、ネオンが輝いている。
エンジンを停止させ、機体を斜めから、正確に滑走路に機体を止める。
「貴方といれて光栄でした。中尉」と若いパイロットがラリーに握手を求めた。
「ラリー、君の事を僕は最高のパイロットだと思っているし、尊敬している」とラリーに言う。
若いパイロットが花束まで用意してくれた。
「定年のサラリーマン扱いじゃないか。逆に恥ずかしいよ」とラリーは笑う。
ラリーは笑いをさそう発言を何回かして、笑いを誘った。
鼻をくすったジェット燃料の燃える匂いもかすれ果てた。
それからラリーは、軍生活を共にしてきた機体をまじまじと見つめた。