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病院からは、アルコールの臭いが立ち込めていた。
手術を終えた、看護婦たちが、手術服を脱ぎながら、手を消毒して、
水で洗っている。
ラリーは、勤務を終えた後、病院に立ち寄るのは日課になっていた。
ラリーは身寄りを戦争で失った、あのチョコレートを分けた男の子の心配をした。
車椅子に若くしてなっていて、自信を喪失したのだろうか、ラリーの問いに少年の顔は暗かった。
ある日、少年を車椅子で散歩させてあげた。
その日は、会話しながら公園を散歩するくらいで終わったが、
ある日、風呂に看護婦に入れてもらっている時に、その姿を見て何人か、
「あんなふうになりたくない」なんて声が、患者の男の子まで聞こえてくる。
その時、男の子は黙っていたが、男の子は言う。
「夜になると、僕と同じ戦争の患者がよく口にするのです。こんな車椅子生活が永遠ですか・・・。昔は陸上をやっていました。速かった・・・。自分の事ですが、
若くして足を失った人間の気持ちが解りますか?」と、ラリーに愚痴をこぼす。
ラリーは考えていた。
「この少年が大人になる頃自分は何をしているだろう」
「貴方は軍人で素晴らしい方です。反政府を倒して戦争を終わらせてください」と、言う。
ラリーは、「ああ」とだけ答えて、
そのまま車椅子を動かしていた。
そんなある日、
自分のシーツと衣服の洗濯をするため、基地のコインランドリーで小銭を払い、
洗濯を手前のソファーでラリーは、ぼうっと見つめていた。
洗濯が終わると、衣類とシーツを皮袋につめて、車で移動した。
病院に立ち寄った。
男の子に、親元がいないなら、施設に行くのをラリーは進めた。だが、話は決まっているそうで、
おじさんが面倒を見てくれるらしく、ラリーも安心した。
病院で多くの人を励ましていた、ラリーは、疲れからか、その後、病院のロビーの長椅子で眠っていた。
その後、外に出て、男の子の戦争の事を聞かせてほしいとゆう問いに、
素直に応じ、話していた。弟が反政府にいる事や名誉勲章の事や戦場での事。
男の子は別の子供達にラリーの事を教えていて、
ラリーが名誉勲章を取ったのは、空軍の仲間達だけでなく、多くの患者の子供達が知る所となり、
多くの話の種だった。
そして、皆ラリーを尊敬の目で見ていた。
人間的に尊敬なんて関心ないラリーは困った顔で問いに答えていた。
その後、病院から出た。
外は針葉樹がおおい茂っていた。その景色を病院から出て、数分眺めた。
親しんだウスティオの自然である。
その日の午後、
病院中を騒がす事件が起こった。
「一人患者がいなくなった」と、看護婦が騒ぎ立てている。
ラリーも病院にいた。
「患者がいなくなった。あなた、知らないですか!」と若い看護婦がラリーに問う。
「知らないが。何処にいったのか・・・」と、それが自分に足の事を言っていた少年なのは、大分たってから理解できた。
「あなた、ずっとそばにいたじゃない?」
「昼前一緒にいたあの子よ」と、言う。
「そこらを一緒に探してきましょう」と看護婦は言った。
探せるだけ探してみたが、病院にはいないようだ」
「外出かも」と、別の看護婦は言った。
その慌てぶりを横目で見つめながら、ラリーは少年を心配する。
「外を探すの?外の雪はだいぶおさまりつつあった。
「大雪じゃない」と、看護婦は言った。
「そのうち帰ってくるんじゃないか」と患者の一人は言う。
「でもあの足で外へ行くのは危険だわ」と看護婦は慌てていた。
「あの足じゃ、そうと遠くへは行っていないと思う。近くを探してみましょう」と、看護婦は人数を集めて言った。
「僕も手伝うよ」とラリーは言った。