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町のカフェでティムは昼食をとりながら、記事をどう書こうか悩んでいた。
記事の内容と書き方の参考にしようと様々な新聞をありったけ集めて、
カフェでその切抜きをうまく張り付けて、書く記事の参考にしていた。
構成の面での参考だ。カフェにも色々な出会いがある。
まだ幼い両親ずれの子供がメロンソーダを飲みながらティムを見ていたり、
老人が談笑していたり、たくさんある物だ。
ティムはコーヒーを飲んだ後、店員にコーヒーをもう一杯頼んだ。
店員は朝から、カフェにきて、何時間も記事の構成を考えるたびに、
朝から、コーヒーを何度も頼んでいて、そのたびにコーヒを頼み、夕方頃にはもううんざりした感じだった。
スハルスキーをのけての代からの極右政権をどう解りやすく批判するか?
ベルカとどう向き合うか?と考えていた。
ウスティオの国民にどう思想を解りやすく説明するか?
はたして、皆は受け入れてくれるだろうか?と。
その日は夜まで、カフェにいた。
兄から聞いた、死んでいった兵士の声、あの老人の姿等。ティムは、
1ヶ月、カフェで朝から夜まで記事を考える日々を費やした。
そして、ティムは思い出を振り返っていた。
ラリーはラリーは、軍事病院にきていた。
戦争の兵士達の見舞いに来ていた。兵士達以外に、少年達も含まれていた。
点滴をうける少年に、何か欲しいとせがまれて、
食事を禁止されている少年に、
ラリーはポケットにあった、チョコレートを出して、食べさせてあげた。
部屋の外の通路では看護婦と兵士達の妻が、
命に別状はないかとゆう話をしていた。
妻達はひどい心配性で、中には、患者の事で病院の物とヒステリックになっている姿もあった。
兵士の一人が重傷で運び込まれ、医者の数が足りないせいか、
狭い通路は、重症の兵士で埋め尽くされていた。中には血だらけの患者もおり、看護婦が忙しく、点滴を変えている。
その中のタンカにのって、ぼうっと暗い天井を見つめていた。
看護婦達や医師が電気心臓マッサージをしている。
兵士の一人をラリーはあの反政府の兵士達を重ね合わせて、
思い出し、じっと見ていた。
自分の信じている正義とは政治的思惑にはちっぽけな物なのだろうか、
それを理解さすためにこんな重傷者を出す戦いを人間はどうして繰り返すのか・・・。
今、ラリーを信じている純粋な正義感と違って、
患者はタンカに乗って次々と運ばれてくる。
海岸の森を抜けて、ティムの車は海岸に出た。
そのまま、車は港へ向かっていた。
車で1時間ぐらいかかっただろうか、ティムの車は港に着いた。
多くの船が港に停泊している。
港に着き、車のエンジンを停止させ、
港に着くと、ティムは車から降り、港近くの公衆電話から新聞社に連絡を入れた。
「この数ヶ月は、取材で新聞社には行けそうにない。休んでいるんじゃないから。
従軍記者と同じ対応でお願いする」と、連絡を入れた。
公衆電話から離れると、取材を約束した人間に会うために歩いて港に向かった。
多くの桟橋に白い船がたくさん泊まっていて、潮の匂いと海鳥達の鳴き声が聞こえてくる。
桟橋にティムが向かうと、多くの海鳥が騒がしく鳴いて群れていたのが、
ティムが近寄ったので、いっせいに海鳥たちが群れをなして飛び立った。
桟橋に待ち合わせた、男が釣りをしていた。
男は、ニートベルトの通信の時に手助けしてくれた男の紹介だった。
「取材をお願いした、ティムフォルクです」とティムは言い、日焼け顔で赤くした男に握手した。
「ああ、そうかね」と、男は言う。
「何か釣れますか?」
「アジやシイラやサバが多く釣れるよ、いつも木曜はこうやって釣りにいくのが、私の老後の楽しみでね」
「ベルカには長かったのですか?」
「ああ、軍に長く勤務していたよ。ニートベルトは私の軍の教え子だ」「ウスティオに来て長いのですか?」と、桟橋の海岸の光を眩しそうにティムは言った。
美しい透きとおる海に光が反射してとても美しい。
「最初は、私は航空局に勤めていてね、軍に入ったのはそれからだ。
ニートベルトとは親しい関係だったよ」男はゆったりとした口調で言った。
「それで?」
「ベルカの経済不況の中、ウスティオに来た。君が知りたいのは何の事かな」
「ベルカの事ですよ」
「ベルカの不況は著しい。ウスティオの方が豊かだとゆう声も多いよ」とウスティオの事は生き生きと語る。
「自分が知りたいのは、ベルカは当所、ウスティオについてに侵攻の意志があったとゆうかとの事ですよ。
男は、釣竿を置き、ハンカチで顔を拭くと、
「戦争当所の頃は、凄くあったと思うよ。国民もベルカに尽くす意志はあったろうし、
侵攻と言われればそうかもしれない」
「ウスティオに来た理由は何だったんですか?」
その問いに、少し沈黙していたが、
「当時は、貴方が考えるよりベルカは、今より大変な時期だったんだ。亡命者は後をたたなかった。
私もその一人だっただけだよ」
「軍人なら、ベルカで扱いもよかったでしょう」
「当時はスハルスキーの時代でね。私の意志に反して、軍人でも多くのベルカ運動の犠牲者がいた。
友人も多く失ったよ。
軍人が政治を批判しただけでも大変な時代だったんだ。
ベルカの軍人ならよかった?軍人でもウスティオがよかったよ」
ティムは、ポケットから紙とペンを取り出すと、
男の言葉を一つ一つ自分の新しく買いたてのノートにメモっていった。
「ベルカ運動の事なんて、思い出したくないよ」男はしんみりと肩をおとす。
話を聞き、それから近くの男の家によって、話を大分聞いた後、
無言で、封筒に入れてあった取材費を渡すと車で後にした。