07
帰宅したラリーは、その夜CDをがんがんにかけていた。ラリーは冷蔵庫から、牛乳をコップに注ぐと、
それを飲みながら、キッチンにある、椅子に腰掛けて、音楽を聞いていた。
音は、初めの内は音量のせいか、聞こえなかったが、インターホンの音が聞こえた、
初め聞こえて出たのは周りの部屋の人間で音がうるさいとの苦情だった。
次のインターホンが聞こえたのは、時計をみると9時を回る頃だった。
出てみて、周りを確認しても、人は居らず、手紙が入っているだけだった。
手紙をハサミで開くと、明日、町はずれの運動場で会いたいとの事だった。
席は端から3番目の席とだけ書かれてあった。
次の日の夜、行ってみると、少年達が運動場で野球をしていた。
少年がヒットを打つたびに歓声がおこる。
そのまましばらくすると、端から3番目に黒ずくめの男が近ずいてきた。
「貴方にこれを渡すよう依頼されまして」そして、茶色の封筒を渡された。
「誰から?」ラリーは尋ねる。
「誰からとは直接には知りません。私が知る限りでは、それだけです」男はそう言うと立ち去った。
ラリーはそのまま野球の試合を見ていた。
投手の男の子の投げたカーブを少年のヒットの音が、響き渡る。
観客が数人の静かな夜の運動場に響いていた。電灯が夜の運動場をだいだい色に染めていた。
ラリーは、その後も試合を見ていたが、封筒の中身を早く知りたい欲求にかられて、
15分程でその場を離れた。そのまま、家に戻り、茶色の封筒の便箋を机から出したナイフで丁寧に開いた。
細長い紙に、見知らぬ電信番号が載っていた。
byライズ
偽名なのはすぐに分った。これを送ったのは、ニートベルトだろう。
内容は、貴方の弟ティムフォルクへの通信番号とだけ書かれてあった。
ラリーはあわてて細長い紙を一度、封筒に戻すと、
息を吐き、別の紙に番号を書き写した後、
ふうっと息を漏らした後、自分のパソコンに電信番号を入力した。
通信は出来るだろうか。
今、弟は反政府軍として戦っているようだ。
その日は何もせず、次の日の夜に連絡を入れた。
その日は何も起こらなかったが、次の日に返信の記録があった。
弟からの通信にラリーは反応する。雑音が数秒の後、
「兄さんか聞こえる?やった。やっと繋がった」
弟が反政府軍だからか気まずい沈黙の後、ラリーは、兄弟は互いの無事を確認してティムは歓喜あまったか、
ティムは少し泣いて喜んだ。
「ああ。ラリーだ、ラリーフォルクだ」突然の家への通信に買ってきたハンバーガーを食べていたラリーは自分の机の電信の音声にラリーは興味をもった。音声の番号をペンでチェックして、無線の音声に耳を傾けて、言葉に反応した。「この戦争が終わってから話がしたかったが」ティムだ。
「誰だ」
「ティム。ティムフォルク。聞こえるか?」
沈黙の後、ラリーは話した。
「貴方が誰かは知らないがラリーフォルク」ラリーは答える。
「ティムです。君の弟だよ」
ラリーは気ずいた。
「ああ。母さんや妹は無事なのか?」
「もう、それは僕がしました。1年前に」
「どうなってるのか?心配なんだ」
「僕がエルジアに亡命させたよ・・・」
「お前がどうやってこの番号を知ったかは知らないが、言っておく。戦争には関わらないほうがいい。弟だからお前のために言っているんだ。俺が政府の人間なのを知っているだろう」
「ああ。」
「用は何だ?もうじきこの通信も政府に探知されるぞ」
「僕も反政府にだ。兄さんの声が聞きたかった。今生きているのか・・・」
「声が聞こえるなら、生きているってことだろう。」
「その後の家族の返事は?」もう一度ラリーは聞き返した。
「無事さ。今は戦争で、通信はチェックされている。この通信はベルカ経由。軍関係の話題は、つつしんでほしいから」
「謹んでで通る話ではないだろう」
「これ以外、通信手段がなくて」
「いいか、ここは、政府軍の土地だ。通信網をこんな個人的な話で通るなんて、そんなうまい話があるかとゆう奴も出てくるんだよ。
これを内緒にするのも、俺の判断に任しているなんて、呆れた奴だなお前も。
実際にこれは軍だ。反政府軍との情報のやり取りがあったなんて知れれば大変な事になる。
ただ、家族の亡命の話は、お前のベルカの友人に頼んで依頼したかった。
それは、ありがとう」ラリーはかすかに安堵していた。
「兄さんは、なんで政府軍なのかな」
「反政府が何をした?反政府が勝っても大して変わらないと思う。今、ウスティオはまだ、ベルカの経済に依存している。どうやって
現実的に生き残れるんだ。それは、仕方のない事だし、まだ国自体大きくなりすぎていないん」だよ」
「兄さんは、ベルカの犬のウスティオ軍だよ。何でも、やっと過去の強かったベルカ時代からの脱却と権利や思想の改革で必要な戦いなんだ」
「ベルカのために戦っているんじゃない。そうしないといけないのを解っているからだ。
反政府軍は確かに強い。でも反政府の理想は、そこまで、違うものだろうか」
「まだ、反政府の思想も政治的に進展するまだ途中なんだよ。今、主張しないと。誰かがやらないといけない戦いなんだ。
この国を動かしている根本がベルカからの脱却を計らないといけない。
今はその段階なんだよ・・・」
「お前は、悪いことは言わない。今から、政府軍に付け。ベルカが出てきたなら、反政府の旗色は悪い。軍人でもないし、生きのびられる。
自分でもわからないんだと、あの捕虜になり死んでいった兵士の言葉やバートレットとの思い出をティムに語った。
そして2人でこの戦争を振り返る。
「僕は、ウスティオを良くしたいだけそれだけだ。母さんにも言われたよ。でも、危険だから非難した。ベルカは古い国だ、ウスティオは新しい。
ウスティオは変われる。
兄さんは理想なんてものはないのか?僕はある」
「一昔前までは、あんな子供だったのに、お前は立派だよ。そんな理想がないから、俺は政府軍なんだ。
皮肉だな。これ以上戦場にいくな。戦争は反政府に任せておけ」
「戦争を記録したいんだ。記者として」
「兄さんはそうやっていつも僕や家庭を気にしないで、働き手がいないっていつも軍の事を優先してきたね」ティムは少し言った。後、
「兄さんとこんなになるのは嫌だ。なんでそうゆうふうに思うか。兄さんは軍人だね。そんな事ばかり言ってる。
こんな感じの関係になりたくなかった」
「勝手にしろ!」ラリーは声を荒わらげた。
「それだけ」ティムはそう言うと、通信を一時的に切り、解らないよう通信番号の控えをとった。
ラリーは、番号を書いた紙をベッドの横の時計の裏に隠した。
軍人の言う政治なんて大した事ない。今、ラリーの中では軍人としてのプライドとティムの言った事を理解しようと戦っていた。
自分はあまり勉強はしてない。飛ぶことが好きなだけだ・・・。ただ、それだけで、家計を支えるために言われるがままに軍に入った。
そして、国に尽くしてきた。そして、あの死んでいった反政府軍の兵隊の事を思う。そう振り返りながら、ティムの身を案じていた。
その後、ラリーは少しため息を吐いた。夜、ニートベルトはベルカの友人と名の知れたレストランで食事をしてから、
とりとめのない話をして、レストランを出て、友人とのその日の夜の別れの所だった。
抱きしめて、キスをして、外に出た。そのまま、酔ってタクシーを探して、それに乗り込んだ。
「旦那さん。何処までかね」とタクシーの運転手は言う。
「フィフイシア大通りまで」
「大分、酔ってるね。あいわかりました」
そのまま、ニートベルトは、自分の腕時計に目をやった。
時間は、10時を回っていて、大都会でもないから、人通りは少ない。
だが、ニートベルトは、運転席の鏡から、
自分がタクシーを見つけた時からじっと跡を付けている黒い車がいる事に気ずいた。
ニートベルトは、タクシーの運転手に、
「あの後ろの黒い車を振り切ってくれないか?」
「どの車です?」
「あの、乗ってからずっとぴったりと付けている車だ」
「お客さん、面倒は困るよ、うちの商売だから」と言った。
ニートベルトは、それを聞くと、軍の証明書を見せて、
タクシーの運転手にチップを手渡した。
運転手は、うなずくと、タクシーを大通りに繋ぐ別の道に変わろうとした。
「別に大通りにすぐ行く道じゃなくてもいいんだ。あの後ろの奴をまいてくれて、
そのうち通りにつけばそれでいい」と、ニートベルトは言った。タクシーの運転手は、ミッションのギアを入れて、少しずつ速度を上げた。
後ろの黒い車は、それに気ずいたのか、速度を緩めた。
ニートベルトはあまり気もせず、運転手に不況だとか、生活苦だなんて話に色々と答えていた。
そうするうちに黒い車は見えてこなくなった。
角を曲がった所でニートベルトは、
「ここでいい。フィフィシア大通りまでは歩くよ」と言った。
「はは、お客さんが振り切れっていうから、最初面倒になるんじゃないか困った」
「お金で今日はいい物を買いなさい」
「ありがとう」と運転手は申し訳なさそうに言った。
角を曲がり、大通りに急ぎ足で向かった。
3つ目の角を曲がった所で、ニートベルトは再び時間を確認しようと、腕時計に目をやる。
時間は11時を回っていて、その日はそのまま帰宅した。
翌日に、ニートベルトは、軍の関係の資料を手に入れるため、軍の資料館に足を運んだ。
資料室は地下にある。
眠たそうな警備員に、自分の軍の自分の証明書を見せてパスすると、
資料室の多くの非開示文章の資料を探していた。
資料館は綺麗であり、ざっと見ただけでは埃が感じられない。
暗めの照明だった。