04
そのうち反政府軍の攻撃を乗り切った、戦車の1台が市街地に迫ってきた。
反政府軍の兵士の一人は手榴弾のピンを抜き、戦車に投げつける。
爆発音とともに、戦車の動きが止まった。
反政府軍の兵士達が一斉に戦車にバズーカ砲で砲撃する。
爆発音ととに、戦車は動かなくなった。
市街地の入り口では、味方の高射機関砲の砲撃が激しく繰り広げられている。
その砲撃音は、市街地に休みなく響いていた。
戦車の一つが塹壕に足をとられて動かない状態になっている。
それでも乗り越えて、戦車は近ずいてきた。
あの戦車をなんとかしないと
ティムは、装甲車を操縦して、戦車の側面に体当たりさせて、動きを止めた。それから装甲車を脱出すると、
砲台を使って、装甲車もろとも爆破する。
味方軍の戦車も戦闘に参加した。
「もっと、戦車をよこしてくれ」反政府の兵士の一人が連絡する。
「こちら、軍司令部。わかった。敵軍はどこまで来ている?」
「第一陣は少数ながら突破されそうだ。」
「第2陣は?」
「なんとか持ちこたえている」
ティムは自分の心臓の鼓動が激しく揺らいでいるのを感じながら、市街地を移動して、
敵に応戦していた。そのうち敵の兵士が、市街地に多く突撃してきた。
その中もティムは、従軍記者として、映像をビデオカメラに収める。
その内、となりで機関銃を放っていた兵士の塹壕に砲弾が命中し、その兵士の頭もろとも吹っ飛ばされた。
ティムは、撃ち殺された、味方の機関銃の兵士の
代わりに機関銃をとり、迫り来る、敵兵士に対して撃ちまくった。
夜が更けてきた。
風の感じでそれをティムはいち早く悟った。
反政府軍の猛攻を乗り越え、物量で勝る、ベルカ軍の進撃は凄まじかった。
反政府軍の狙撃兵の疲れ、ティムは憔悴しきっていたが、意識は神経をとぎらせ、
迫り来る、陸上歩兵を見つめていた。
反政府軍は、ディレクタスの地下水道を利用し、敵軍の近くまで行き、ゲリラ作戦を展開していた。
市街地の広場にいたティムに兵士の声が聞こえた。
「おい、そんな所にいたら死ぬぞ」兵士の一人が声をかける。
「もっと、炸裂弾を」
「みんな頑張ろう」かたわらの反政府軍兵士が大声で叫ぶ。
敵の戦車が、味方の地雷原に踏み込んで、爆発して動けなくなるのを見届けて、
味方の兵士達が突撃を開始した。
だが、それも多くの装甲車に阻まれた。
そして、8時間に及ぶ激戦の末、
ディレクタスは、スピルー率いるベルカ軍の前にディレクタスは陥落した。
「もう無理だ」ティムはそう言って、
「記者の方、ウスティオの記者だろう、俺はベルカ陸軍と渡り合ったって、残してほしいな」と
言う、兵士達をなだめた。市街戦の敗北は、自分も解っていた。
「ここはもうもたないな・・・」
「今は、あんた命がある事だけを考えときな。久々に凄い戦いだった。
この戦いは大きく自分の中で残ると思う。これから何十年とな。まあ死ななければ話だけどな。」
中年の兵士の一人が言う。司令部からの撤退命令が出た。
長引く戦線で疲労は限界に達した。
それを感じさせない緊張が解け、
反政府軍は、ディレクタスからの撤退を余儀なくされた。
撤退の途中、ティムはトラックから、煙のもうもうと上がっている、ディレクタスを眺めていた。
町は落ちた。
3列のベルカ軍の入城行進を市民達が脇から、見つめていた。その中に寂しそうな顔の少年の姿もあった。