02
サムポート飛行場は、昼の2時だった。
強い日差しが、政府軍の兵士達に汗をもたらしていた。ラリーは強い日差しの中、
眩しそうに自分の戦闘機を見つめ直した。
高原にある兵器工場への爆撃の任務に兵士達はついていた。
一つ一つの戦闘機の発進する、エンジンから出る煙に飛行場は、白く包まれていて、
出力エンジンからの油臭いガソリンの匂いが立ちこめていて、鼻につく。
沢山の整備工の整備士達が丁寧に戦闘機を発進まで導いていく。
ラリーは煙に包まれても、青く陽の光で輝く自分の戦闘機に、
自分の背中を押してもらい、乗り込んだ。
「さあラリー次はお前だな」
久しぶりに飛べるな・・・とラリーは思った。
ラリーは首にかけた、十字架に軽く握って、自分の翼に感謝した。
出力エンジン音とともに、ラリーの機体は空中へ飛んだ。
彼の乗った機体は爆音とともに、飛び立った。
そして整備兵達の髪をなびかせた。
バートレットやその他の仲間の出撃後なのにうるさい声が飛ぶ中、
機体とラリーは、見渡す限りのウスティオの広大な田園風景を見下ろしていた。
田園風景は、戦争の感じではなく人々はせわしなく働いている。
その姿も確認できない高度に入る。
その田園風景を飛んでいると、兵器工場が見えてくる。
反政府の工業地帯は、この高度からでは静かで小さく感じる。
反政府軍の敵機は、数機だ。
「やっこさん、おいでなすった」とバートレット。
ラリーは操縦管を握り直した。敵機の1機は、まだ、空中で抵抗を続けていた。
「やっこさんしぶといな・・・」バートレットの独り言が、ラリーの無線に聞こえる。
その時、ラリーが集中力を切らしたすきに、そのしぶとい敵機からの機銃に、ラリーの戦闘機は、
翼を失った。一生の不覚。ラリーは、とっさに、非常用のパラシュートを開いた。
だが、ラリーもパラシュートで脱出する前に、その敵機に機銃を打って、その敵機を撃墜した。
敵機からも敵の兵士一人もパラシュートで脱出した。ちょうどラリーが脱出した所に近かった。
ラリーはパラシュートで脱出して、ゆっくり湖に面した森林の所で助かった。
助かった・・・とそう思いながら、敵のパイロットもパラシュートで脱出して、この森に落ちたようだ。
ラリーは拳銃を持って、敵の落ちた、パラシュートの方へ向かった。
敵は森の木にパラシュートが付いて、パラシュートを切り、
自力で脱出したようだ。敵は地面に寝込んで倒れていた。周りには残骸が少し落ちている。
ラリーは拳銃を片手に近づく。
ラリーは近づいた。敵は地面に苦しそうに寝転んでいた。その瞳は半分閉じていた。
まだ息はある・・・。
ラリーはそう感じ、話しかけた。
「大丈夫か?捕虜とする」彼は、重症である。
急いで、包帯で止血をする。
「お願いがある。娘に会いたい・・・」
「ああ会えるよ。立てるか?」ラリーは彼を肩にかけ、基地まで向かった。
軍服に彼の娘の写真がはみ出ている。
「その見えている写真は娘さんか?」ラリーは訪ねた。
最初は、少し無言だったが、その兵士は、「ええ。娘です」とだけ答えた。
「この娘に会いたいんだな、じゃあ頑張るんだ」とラリーは答える。
少し彼は礼をいったように意識はしたが、
もう昏睡状態にあった。捕虜を確保した。重体だ、ヘリを要請する」とラリーは無線で連絡する。
そう伝えて、もう一度ラリーは彼の事を心配した。
「娘には難しいかもしれない。基地まで案内しよう。基地なら優秀な衛生兵がいる」
しかし、彼は、重体の中、拳銃を取り出し、自分の頭に向ける。
ラリーは、驚いて引き金をひこうとしたが、彼の意識は薄れかけていて、引き金も引く力もなかった。
ヘリが到着し、ラリーを含め救助隊に助けられて彼は、タンカでヘリに乗せられる。
うわ言のように、「ああ・・・」と彼は何度も言った。
救助版が彼の治療をしている。少し落ち着いてから、
「貴方は確保された、反政府軍の動向について、詳しく知りたい」
「今戦っているのは、本当はベルカだ。多くの政府軍も軍に操られている」
ラリーは沈黙した、本当にこの敵の兵士は、何の理想のために戦っているのか?
「俺の話を聞いてくれ、この戦いでベルカはウスティオの反乱軍を抑え、このままでは、ウスティオは
ベルカの体制に組み込まれかねない。そこに自由はあるのか?」
この兵士はウスティオのために戦かっているのか・・・。では政府軍は・・・。
「皆、このままでは、ウスティオはベルカの支配体制に組み込まれている」
バートレットも知っていた。自分でも解っていた。
「ウスティオの英雄諸君の人・・・気づいてくれ・・・」
ベルカの怖さは解る。
「真剣に戦争なんてしてる場合じゃない。ウスティオが力を合わせてベルカと戦うべきた」と言った。
基地に帰ってきて、ラリーとバートレットは話し込んでいた。
ラリーは少し残念そうに言うと、
「なぁ、バートレット貴方は戦争の名パイロット、俺はこの戦争に全力をかけるつもりだが、勝てると思うか」
「どうゆう意味だ」
「ウスティオは各方面で押されている」
「まだ戦争ははじまったばかりだよ」
バートレットはそう言って、シャワー室に行ってしまった。