01
大雪の少しやんで、小降りになってきた中を多くの労働者達が、まるで断罪されたかのように、
雪の多く積もった道路を500人ぐらいの数で歩いていた。
道路は雪のためか、白くなり見えなくなっている。
ベルカの労働者のデモ隊である。
中には、仕事をボイコットしてデモに参加している人も多くいた。
雪深い道になり、雪に足跡がつき、雪に足が入り動けなくなりそうな時でも、
労働者のデモ行進は止まらなかった。
I do’t need you スハルスキー
をスプレーの赤い色で、木の板に書いてあり、多くがそのフレーズの元、ベルカの国会を
取り囲もうとしていた。
国会には、労働者の数の半分くらいの多くの長靴を履いた警察官が国会を守っており、
一触即発であった。
警察が放水車で、労働者達に水を浴びせかけた。労働者達はそれに屈せず、
より声を張り上げた、首相官邸にも取り囲みが多く、警官隊が配属されている。
労働者達の怒りの声は、警察官達の放水の中、響いている。
寒さのためかその水は、何倍もの冷たさに感じる。
首相官邸から労働者達を見ながら、
またかね・・・こううるさいと、好きな食事も喉を通らんと嘆く、人間もいた。
雪雲が、町を薄暗くさせている。労働者の声とは裏腹に、雪は美しい。
労働者達を止めているのは、道路にある、雪を被った赤の信号機だけだった。ニートベルトは書斎のコーヒーポットからココアのミルクを注ぎ、スプーンでかき混ぜた。
その後、ため息をついた。
ニートベルトの家には、何人かの友人が来ていて、
談笑している。ニートベルトはカーテンごしから、労働者のデモを眺めていた。
ミルクココアが彼の気持ちを少し、和ませた。
友人は数人来ていて、ニートベルトの誘いに、ココアはいらないと熱々の紅茶を飲んでいた。
「こう、うるさいと大変だね」と友人の軍服の人が言う。
「日曜日になると私の家の近くの職業安定所なんか長蛇の列だよ」と一人も言う。
ニートベルトは紳士ふうのスーツを着て、キザにココアを飲みながら、
「労働者の怒りは解る。パンの値段も値上がりするばかりだ。国民は物価の値上がりに、
苦しんでいる。何か対策を考えれないのか。
ニートベルトの妻がせわしなく食器を片付けている。
どうして政府は何も解決策をとれないんだ。いたずらに戦線を拡大して、
まさに戦線は、明らかに侵略だよ」
「ベルカが負けるわけがないだろう」と言う。
「それは、ニートベルト、君もわかっているんじゃないか?」と友人の一人は紅茶の椀を飲み干して
まだ、残っているか、確認した。
「国民の暮らしは良くならない。こんな時期に戦争なんて・・・。
今、こんな事をしている場合じゃない。何か政策を考えるべきだ。上層部は何をしているんだ。
戦争の費用も馬鹿にならないし」とニートベルトは椀に親指でコツコツと椀を指で弾きながら言う。
「今、ベルカはいたずらに戦線を拡大すべきでない。政党に疑問だ」と言う。
友人はあっけらかんとした表情だ。
ニートベルトは、また労働者の方に目を向ける。
労働者の必死の叫びが響いていた。