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ちょっとした長話が続いて、男の大声が響くと
さっきの女が上の階から出てきた。
「貴方、何をしたの?大きな騒ぎなんて起こさないでよ。心配だわ」
女がそうゆうと、男は、
「アンタ、名前は?」
「ティム。ティムフォルクと言います。ウスティオの新聞局に努めている物で、その空軍パイロットの
事を取材したいと、この住所を手がかりにここへ来ました」
女は事情を聞くと、
「あら、前に住んでいた人の事ね。覚えてはいるけれど、用があるの?」と言った。
ティムはその答えにかじりつく。
「黄色の13の軍人を知っていますか?」
「ぜひ、その前に住んでいた方の情報を聞きたい?」とティムは続けて言う。
「前の人・・・。仲介業者に頼んでこの家に越してきたから分からないけど」
「電話番号とかわかりますか?ぜひ、前の住民の電話番号か、もしくは仲介業者でもいい」
「どんな人でしたか・・・」ティムは女に聞く。
「軍人だったわ。私の息子が万引きして絡まれた時、その店の主人に金を払って助けてくれた・・・。ベルカ兵に絡まれた時も。
それから息子とは長い付き合い。
無口ないい男だったわよ。
あの人の電話番号は知らないわ。仲介業者も個人の番号なんて、秘密でしょうし、
もうだいぶたってるから、番号も記録しているかどうかは解らないでしょう」と女は言う。
ティムは、まだしつこく大声でしつこく聞いた。
「お願いです。調べてくれませんか?」ティムは言う。
そんな事している内にさっき男との大声を聞いたのか、
ベルカの見回りにとまっていた警察が目をつけたのだろう、
ティムの近くの道路に警察の車が止まり、中から2人の警察官が出てきた。
「身分証を見せて」
ティムはふさぎ込むと警察を無視してその場を離れようとした。
すると警察はティムの事を掴んだ。
「これは何の真似です」ティムは言う。
「同行願おうか」
ティムは少し、ちっ、とかすかに言って、視線を別に移した。
「どうゆう騒ぎだね?」警察の一人が言う。
さっきの男の妻がティムの事を聞かれて面倒くさそうに
「この男の人がこの家に前に住んでいた人の住所を教えてくれって、
大声を出すのよ。私の家が困って」
「何が警察だよ」とティムは大声で言う。
「今、内戦中だぞ」警察は言った。
「とにかく話は署の方で聞こう。車に乗りなさい」と警官の一人が言った。
「来た途端、警察なんて少し乱暴すぎやしないか?」と言ったが、
ティムの視線は男と妻を見据えていた。
「いいから乗り給え」警察はティムの背中を掴んで無理やり車内に押し込んだ。
抵抗していたティムは段々と落ち着いてくる。
ティムを乗せた車は、その場を離れた。