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彼女の夫は居なくて、
その日、男が6時頃に帰ってくるまで、自転車で、夜はティムは近くの公園で過ごす事になった。
帽子を顔の上に置いて、公園の長椅子で寝転んで疲れを癒やしながら、帰ってきていないかと、何時間感覚で家に寄って、そのつど家に確認をしに行っては、呼び鈴を鳴らす。
待ち切れなくなり、すぐ寄ったりもする。
いない事を確認すると、また公園で昼寝をしに行った。
6時頃に呼び鈴に男が帰って、出たのは幸いだった。
眼鏡をかけた背の低い男だった。ティムは興奮に震えていた。玄関で男に尋ねる。
「貴方にお話があって、はるばる来ました」
「どうゆう話ですか?」男は戸惑いながら言う。
「貴方は軍に所属していましたよね?ベルカ軍の。いや・・・貴方に会えるなんて光栄だ。
今回もウスティオの内戦に参加している。
話を伺いたいのです。個人的にぜひ会ってみたかった。
貴方とのいきさつをぜひ執筆したい。話はいいですか?」ティムは言う。
「話・・・ですか・・・私との?」
「ええ。ベルカ軍にいましたよね」
「ベルカ軍ですか。いえ、私は軍の人間ではないですが」
「えっ。退役したのですか?空軍でしょう?」
「いや私は軍関係の仕事ではありません。
「どうゆう事ですか?」
「実は、ベルカ軍のパイロットの名前は分からないですが、空軍の友人から住所を聞いて、
ここまで来ました。いや、足が痛いな」
「僕は空軍なんかではありません。銀行員ですが」
「えっ」ティムは言う。
「住所がここだと聞いたもので」そう言いながら、
「私は空軍のパイロットなんかではありません。人違いでしょう」そうゆうと男はドアを閉めてしまった。
ティムは沈黙した後、
もう一度呼び鈴を何度も鳴らす。
「ああ」
「お願いします出てください」
「またあんたかしつこいな。僕は空軍なんかじゃない。人違いですよ」
それから彼は自分の身分証明書をティムに見せる。
「私は軍なんかには居ない事分かったでしょう」
「でも、ここだと聞いているんですが」
「理解したなら、行ってくれ。軍の知り合いはいますか?前に住んでいた人とかは住所は知りませんか?手がかりは、そうだ黄色の13」
「私はとにかくそんな人は知らない」
「いつ頃から、この家に?親戚に軍人はいますか?」
「この家に来たのは、2年前からだ。前に住んでいた人の前の知り合いが、誰か内戦が起こるのでこのアパートを手放したいそうで、買い取った。前の人間がベルカからウスティオに亡命したかったから、このアパートを買い取ったそうだ。その人の家族が住んでいたのだが、その人が出て、今僕がこのアパートの部屋を持っている」
「とにかく僕じゃないですよ。その空軍パイロットって人は」その男は言った。
「それはわかりました」ティムは納得すると、もう一度男を見て、
「僕の唯一の彼の手がかりは、彼がウスティオに亡命したかった事とこの住所しかないんです。
なんとか彼の居所を知りたい」と男に言った。
「僕も夕食がある。もうすぐ帰ってほしいな」と言う。
「僕は、やっと彼の手がかりを掴めたのにこのまま帰れない」とティムは懇願し、
しつこく聞き、20分も家の前で粘った。その意気に驚かされたのか、男はティムに、
「じゃあその手がかりを見せてみな」と言った。
ティムは、ポケットからウッドマンの言った住所を書いているメモを取り出して男に見せた。
男はそれを見ていたが分からないなとだけ言った。
そのうち、その家の前に一台の車が止まり、中から化粧の濃い女が出てきた。
話を聞くと、その女はこのアパートの管理人で共働きの仕事から帰ってきたようだ。
「どうしたの?」
「この人が、前住んでいた人間を探しているようだ」
最初はそれだけ聞くと気にも止めず、ティムと男の話ている家の前を素通りして、家の中に入ってしまった。
「知らないと言っているだろう!」
そのうち男とティムは口論になり、高い声が響いてくると、
どうしたのかびっくりして男の妻の女が出てきた。