32
駅は、太陽の光で白く光っており、
少し長旅になるティムを勇気ずかせた。
駅長室では、駅長が何か仕事をしている。
ティムは自動の切符売場で行きの切符を購入して、
切符を切ってもらった。
誰もいないホームで腰掛けて、周りを見渡して一息つく。
20分程、列車を待っていると、
列車が到着した。
政府軍に通じている政府軍の線は2つで、一つは政府軍により爆破されていてこの線しかなかった。
ティムは父を戦場で落とした黄色の13のパイロットにウスティオで会うためだ。
連絡は取れなかった。彼の情報はウッドマンから聞いた手がかりしかなく、ダメもとで話を聞きに行くつもりだった。ティムは内戦で参加している彼の事を知りたかった。
この内戦が終わってから彼と会ってもよかったろうが、彼の手がかりはウッドマンが言った、
ウスティオでの彼の家の住所しかなかった。列車に乗り込み、車掌が合図して思い切り首に掛けている笛を吹いた。それから列車が動く。
内戦下で、元々多い乗客も見あまり見かけない。
列車が進むうちに見通しがよくなり、青く透きとおったコバルトブルーの海が広がってきた。
反対側は切り立った崖で、列車に揺られていると、
ティムの座っている席の空いた窓に白と黒の綺麗なセキレイがとまり、
不思議そうに首を動かしていた。ティムが目を細くしてじっと小鳥を見つめていると、
やがて飛び去っていった。
カタカタと揺れる車内で他の乗客の列車の棚の荷物もカタカタと揺れて、
車窓から吹きこむ、心地よい潮風が潮の匂いを感させる。
ティムはふたたび透きとおる海を見つめ直した。
そしてウッドマンから聞いた、ウスティオの住所を書いた緑色のメモをティムは取り出し、握りしめた。
そのうち窓に日の光が差し込んで、影の部分と光の差し込む部分が確認できた。
それからは、広大に続く、白い砂浜と海を窓から見ていた。
反対側の切り立った崖を抜けると、反対側の景色も広く続いていた。
そのまま、車内で飲んだアルコールのせいだろう、長旅の疲れかティムは少し疲れて眠ってしまった。
5時間ほどして気ずくと、もう外は夜になっていた。
時間を確認して、そのまま揺られていると彼の手がかりの住所の1番近くの駅が近づいてきた。
列車は駅に轟音とともに停車した。
ティムはポケットの財布とメモや筆記用具を確認すると、外へ出る。
それから到着すると駅を出て、1時間程で見つけた近くの店で牛乳とパンを買って、
その日は予約した安いモーテルに泊まった。
夕食はパンと牛乳の簡単な物で済ませた。
それから2日目の次の日、朝食を室内でとって、地図を確認する。
これから彼の家は近いけれどもこの辺の地理には疎い。
道に迷う。手がかりの住所はこの近くだ。き
ティムはいろいろな店を訪ねては、彼の家を聞いた。
苦心の中、やっと手がかりの居所に着くには、もう更けていた。
家は大きい立派な建物でなかなか綺麗なたたずまいだった。彼のマンションは木々に覆われていた。
階段を登り、13の部屋の番号が書かれた折り畳まれたメモをポケットから取り出し、
部屋の前で広げて部屋の番号が間違っていないか確認する。
彼の部屋に着いて呼び鈴のブザーを鳴らす。そして軽くノックをする。
「おいまた集金の奴が来やがった。最近よくきやがる。おい見てきてくれ」
大声が中から聞こえる。そうして中から太った中年のおばさんが顔を出した。
「誰よあんた」
「旦那さんはおられますか?」
「父と夫と3人暮らしだけど。見ない顔ね。主人は今出てるわ」
部屋の中から女の父らしい男が飲んでいるアルコールの臭いが鼻につく。
どうやら彼女の父はアルコール中毒者らしい。
ティムは興奮していた。