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ティムはどうやら、父の機を落とした男の戦友であった男の取材にこぎつけれた。
男は、ティーエール・ウッドマン
ベルカ軍航空師団第7航空連隊大尉
今はウスティオに亡命していて、中学で数学を教えている。
とても、軍人だった面影を残す、がっしりとした体格の黒人の男だった。
そのウッドマンの話を聞こうと、中学の内戦での長い休日の日に登山を誘われた。
二人で山を荷物をおって登っていくと、
見える景色は、山々の峰は美しく、ところどころで雪が積もっているのが確認できる。
山」の中腹あたりに来るとところどころが丘になっていて、
急になっている所も見られる。ところどころ丘から見える見下ろす平野の景色が広がる。
自分達がいる所がどんなに小さいかを実感する。
そして、一面の針葉樹林が多くあったが、高くなるにつれ、その景色がごつごつとした、
岩肌に覆われていた。気温が高くなるにつれ、雪が溶けてティムの目にその水滴が確認できた。
山を二人は無言で登っていた。
呼吸が荒くなるのを自分で感じると、
雪ぶかい高原を、よく見える頂きを越えていった。
険しい道を階段を登るかのように簡単に登っていく。
特に会話する内容もなかったのだろうし、とにかく一番に疲れがあった。
遅く足取りが重いティムと比べて、ウッドマンは慣れた様子で山を登っていた。
だいぶして、ウッドマンは、山の頂上の所で休憩の木造小屋を見つけて、そこの前で、
ウッドマンは、水筒を飲んで、ティムの到着を待っていた。
20分程して、ティムは小屋に遅くたどり着いた。
悲鳴のような凍えるような風が吹いていて、
小屋の中で寒さをしのごうと、
小屋の中へ急いで入る。
小屋の中の窓ガラスは、外から入った雪だろう。
室内は温かく、気温が高いせいか、水蒸気が結露していて曇っていて、
水滴が少し落ちるのが見えた。
彼が特別に作った物で小屋は狩猟で採った、動物の剥製が少し飾られている。
この地帯の山を登るのが好きなようだ。
「疲れるかい?だろうな。私も最初は慣れるまで大変だったよ。一番腰にくる・・・」
それから取り留めのない話をした後、
「父の機を落とした人を知っていますか?」とティムは問いかけた。
彼は、なんともいえない表情をうかべると、
「ああ。戦友だった。君の父を彼が落としたのは、かすかながら覚えているよ・・・。
僕も彼も若かった。
僕は大尉で彼は入りたての若いパイロットだった。
戦線は中部戦線の基地の攻撃だったかな。広い雲に包まれた、暑い夏だった。
彼は一機だけで、激戦だったが、知らぬ内に俺と彼だけ残っていた。
敵は君の父さん一人だけしか残っていなかった。
それは一瞬で勝負は決まった。君の父さんを乗せた機はクルクルと回って落ちていった」
ティムは、この山を降りたらこんなエピソードをもっとメモに書き留めよう。そう誓った。
父のために。
そう言うと、
ウッドマンはティムの体が少し寒さのためか震えているのに気付いた。
無言で彼は小屋のキッチンの方に行き、
「コーヒーならあるよ」と言った。
「お願いします」とティムは答えた。
そして、赤く錆びた所がところどころ見うけられる安そうなポットに水を入れて、
沸かしてくれた。沸かしている水が少ないせいだろう、数分で湯気の蒸気が小さく隙間から出てきた。
「こう古くなると大変だ」と呟いて。
沸かした水に持参したコーヒー豆をフィルターに2つ入れて、
ティムの前の机に置いてくれた。
「この辺は水がよくてね。コーヒーも美味しいよ」とウッドマンは言う。
小屋は杉の木材で出来ていて、四角いテーブルと黒いシワだらけのソファーとキッチンと、
ストーブと簡単な清掃用の箒とゴミ入れだけがあり、壁には彼の採った剥製と時計が掛けてある。
時計をウッドマンは見て、「あの時計は少し遅れていてね」と沈黙の中、少し言う。
ティムは一口、急いでそれを飲んだが、熱さのためか、反射的に口を離して、
一息入れた。
「俺の戦友の事を聞きたいかい?」
「ええ今、何処にいるか分かりますか?」
「いい奴だよ。まだベルカ空軍にいる。今度の内戦にも参加しているんじゃないかな」
と答えた。
「ぜひ、その人に合わせてほしい」とティムは頼んだ。
ウッドマンは無言でペンでメモ用紙に、
「軍時代の若い頃の居所は知っている。住所が変わっていなければの話だが。
彼もウスティオに亡命を希望していた時期があった。
家族の顔も見たことがある。連絡はしていないがね。
母はもう病院だろう。詳しくは知らないが、友人に問い合わせたら、彼の軍でウスティオにいるようだ。住所はここだよ」
そう言って、居所をメモ用紙に書いて渡してくれた。
「どんな方なのですか?詳しく聞きたい・・・」
「いい奴だ。歳は聞く所によるとおそらくアンタの兄さんより少しいったくらいだろう。
30後半か40代か。俺がベルカ空軍に入隊したのが18の時だったな。
はは、そういや歳の話なんて、仲間なのに聞いてなかったな・・・。それぐらいだろう。
俺が大尉であいつは、1等航空兵だった。戦闘機の番号は・・・黄色で13だ。
よく言っていた記憶がある。俺は軍でいくつもの機を落としたが、それなら英雄。でも軍を辞めれば、
多くの幸せを奪った男だ。政治は常に1流だ。でも1流でも本当に正しい思想とは限らない。
皮肉なもんだ。だから俺は本当に正しいと思える思想のために死にたいって」
「彼の写真はありますか?」とティムは聞いた。
「直接一緒に撮った写真は無いよ
多分、残ってないよ。空軍時代の写真はベルカ軍がうっとうしいとゆう理由から捨ててしまったよ」
「確認できる一つでもいい。ぜひ彼の事を知りたい」
「悪いがおそらくないよ・・・。家に帰って確認しなければ解らないが。おそらく諦めてくれ」
ティムは残念だったが、
「そうですか・・・とにかく今日はありがとう」ティムは言った。
外は日が昇ってきた。
ニールウエンズ
ベルカ空軍の名パイロットだった男、今は除隊している。
ティムはウエンズの所に取材にきていた。
ウエンズ、病院の広間の椅子にもたれている男だ。
もう60過ぎの年寄り、
看護婦がウエンズとゆう男に薬をわたしていた。
ティムは、「貴方は二ールウエンズ?」
彼は何も答えなくて、上目でティムを眺めた、
ティムはウエンズからベルカ戦争の事の取材をして、
取材費を渡す。彼からベルカ戦争の凄さを詳しく聞いた。
ウエンズは言う、「ベルカ戦争が終わって、私は必要とされなくなったよ、軍にいなくなって誰も私の事を必要としないがね」
退役軍人の彼にはもう理想などはなく、人生の喜びももうない・・・、
ウエンズはもう歳で頭の機能も弱っているようだ。
最後に黄色の13のパイロットについて聞いた、
「私は上官だった」
ただそれだけだった。