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チューリップ畑に囲まれた小学校に
ティムは体育館に向かった。内戦の反市民団体からの講義の依頼だ。
多くの人間が、自分の体験談を聞きたがっている。
ティムは車を小学校の体育館の運動場に止めて、
体育館に入った。
多くの戦争への政府批判者と多くの大学の生徒たちが、ティムの話を聞くために集まっていた。本が好評で小学校の体育館でティムを迎えることとなった。
「ノーマンロイスです。牧場の仕事をしています。貴方の講演を楽しみにしていた」
「キャサリンです。私も嬉しい」と歳のいった人や若者も多く様々だ。ティムに握手を求めた。
小学校に入った、道を抜けて、体育館に入る。ティムは何度も自分の講義の練習を一人で口ずさんでいた。
体育館に入ると拍手で迎えられた。
ティムは、少なめの数の人達に頭を下げた後、台のミネラルウオーターを少し飲み、
静かに話しはじめた。
「今、僕がウスティオ内戦に言えることは、いままでのウスティオはベルカなしでは考えられなかった。
今、ウスティオは独立を達成して、新しい国になりつつあります。
経済や資源も安定していて、天然ガスはウスティオの大切な資源です。
今、ウスティオの政治は変わりつつあります。
ウスティオ独自の運営できる力を持っているため、ベルカの経済は今、恐慌状態にあり、独立当時、豊かだったウスティオもその影響が激しい。
今、ウスティオは内戦下にありますが、ウスティオを独立を記念すべき時、古くなった主義を根底から生まれ変わらす必要があります。
ウスティオは、大国の干渉をつねに受けている。大国からの利益を中心とすれば、腐敗しやすい。大国を理想としない。
それは、ベルカの失敗から学んだ事だし、ウスティオの国力もそうではない。では大きな国でない良さと、新しい国として、
十分にやっていける力を持っています。工学的な近代化に遅れても、
先進的な文化国として、豊かで良き国を目指したい。今、それが出来る機会に恵まれている。
ベルカの理想とする、古き超大国は時代遅れだ。それで失敗した。今、ウスティオは変わる必要がある」
椅子に座り、聞いていた人間から、一人手を挙げた少女がいた。
ティムと人達は、その少女を見つめた。
「質問があります」
「ハイ、教えてくれ」ティムは、少女を見た。
眼鏡をかけた、痩せ型の身長の高い少女だ。
「貴方の理想をもっと知りたいです。貴方が内戦で学んだ事は、どんな事だったのですか?
貴方の兄は政府軍らしいですが」
ティムは少し沈黙して目をそらせ、ふたたび少女の方へ向きなおると、語りはじめた。
「内戦は、いろいろな人達との出会いだった。いろんな人間と様々な思い出を作れた。
兄は政府軍だ。子供の頃からいい兄だった。僕は父を亡くした。
父も戦闘機乗りだった。それよりも兄は空が好きだった。
僕達は、父の事を尊敬していたし、優秀だった。そんな父も戦争で死んだ。
この内戦とは違うが。
兄は僕達を育てるため、幼い頃から父の代わりをしてくれた。
そんな、兄とこの戦いで共にベルカに立ち向かう事になるなんて、思いもしなかった。
兄は軍人として、国の正義を信じている。
弟の僕が、思想的に間違っていて、思想的に理解しずらかったし、直接、兄弟が戦争で戦うわけでもないから、
軍の味方を兄はしているだけです。
敵意があるわけじゃない。兄は軍のため戦う事を選んだのも、自分の軍人としての誇りがあったのでしょう。
軍人としてのプライドと反政府の思想を理解したくないから。実際は人間的に優れています」