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魚市場の活気は夜でも衰えず、魚のおろし入れが多くあり、
多くの市場の仕事をしている人が、魚の値段をひっきりなしに自分のメモに書いていた。
一人の男が、魚を市場で焼いて調理しているのが見えた。美味しそうな臭いがラリーを誘惑する。
「そこのアジの塩焼きを一切れ僕にください」と市場の男に話しかけた。
それを聞いて、市場の男は発泡スチロールから、綺麗なアジを選び、取り出すと、
男は無言で、魚を焼きはじめた。
調理師の男は、まだ、色々な魚を別に見てきたい。調理師の男は市場の広場を指差すと、30分後に落ち合おうと話した。調理士な長年の経験を自慢して、いい食材をすすんで選んでいた。
「もっと、見れないかな?料理人なんだから、クリスマスに出す、仲間の料理を考えて、買ってきてほしい。
ここなら、十分に満足できる品を買えるよ」とラリーは言う。
魚を焼く煙が、道に立ち込めた。魚を焼く音と塩のいい匂いがラリーの鼻をくすぶる。
やがて魚を焼くのを見ているラリーの周りに塩の匂いの混じった煙がたちこめる。
ちょっと俺も周りを見てくるよ。と、調理師の男に言い、
ポケットから金を取り出して、計算して半分ずつで、これで美味い食材を探して買ってこようと言った。
市場に並んでいる食材は、魚の鮭、しいら、まぐろ、白身魚、海産物の貝等が所狭しと並んでいる。
客の依頼をうけて、市場の人が、ビニールに新鮮な魚を入れて、差し出している。
ラリーは塩焼きのアジを口に放り込みながら、クリスマスの事を考えていた。
「とても生きのいい奴ばかりだ。普通の店とはちょっと違う美味さだな」
と塩焼きのアジを食べてラリーは言う。
「ここの魚なら、料理によっては、最高だ」クリスマスを想像するだけでわくわくする。
30分の間、ラリーは、市場をうろうろした。多くの人達のいる中、
新鮮な魚を多く買い、クリスマスでは、自分の料理も出そうと意気込んでいた。
その内、小雨が降ってきた。時間がたつにつれ、少しずつ雨の勢いは増していく。
雨は、黒いコンクリートを色ばませ、
男達の声を掻き消していく。
30分がたって、多くの魚や貝や蟹を買った後、
広場で集まり、自分の買った魚を色々と自慢した。
雨が多く降ってきたので、ラリーと調理師達は車に戻り、
車の中で時間を過ごした。ラリーはシートに体を寝かせて、市場の方をじっと見ていた。
市場も雨のためか、早めにしまうようだ。多くの人が片付けに追われている。
ラリーは車の中で、調理師の仲間に、
「雨がきつくなってきているようだな」と言う。
そのまま、ラジオをつけて、チャンネルを調整する。
「天気予報を知りたい。このまま雨が厳しいか」とか知りたい。
ラジオでは、週間天気予報しかしていなかった。放送は、内戦中で控えており、
ワイパーで雨を掻き分けながら、ラリーは雨が止むのを車の中で過ごしていた。
雨が少し降るのがマシになったのを確認すると、基地への帰宅に急いで車を走らせた
その内、クリスマスで出す料理をラリーは帰って考えていた。たまには、仲間達をねぎらいたい。
クリスマスまで、2日ある。ラリーは、買ってきた魚を一つずつ、厨房の冷蔵庫に入れていた。
その後、調理師達に、なんとか飯ぐらいは、年に一度だ、美味い物を頼むと何度も言っていた。
クリスマスは誰でもやってくる。今年はいいクリスマスにしたい。
クリスマスにその料理を振る舞いながら、厨房で数人の仲間とクリスマスの思い出話に盛り上がっていた。
バートレットがラリーの事を、「3年前のラリーのクリスマスは、酒に強くないこいつは、たった7杯飲んだだけで、便器にゲロってたぜ」とラリーを馬鹿にして、大笑いしていた。
無口なラリーは、バートレットにからかわれていた。
その後、冷える基地にラリーは、温かいミルクが飲みたくなって、厨房に行き、
冷蔵庫からミルクを取り出し、温めてカップに注ぎ、飲んで、時間を確認した。
基地の夜の厨房は誰一人いなくて、静かだった。
厨房は薄暗い。そのうち、厨房にライトを持って、誰かいるのかと確認しにきたバートレットがラリーを見つけた。
「ラリー・・・」
「飯は美味かったか?」バートレットはもう一度言う。
「ああ」ラリーは短く答えると、
「それと・・・。軍に退役願いを出すつもりだ」とラリーはこぼした。
「どうゆう事だよ?」
「もう、自分の中で、この内戦を続けるのが嫌になった。
戦争なんてもうこりごりだ、のんびり帰って過ごしたい.。俺に翼はもう必要じゃない」
「仕事はあるのか?」
「もう翼のない、飛ばない俺になんて軍も関心ないだろう。
仕事もまた、見つけるさ」とラリーは言う。
「お前は軍人として、生きる気はないのか?」
ラリーはミルクのコップをテーブルに置くと、
「最初は俺もそのつもりだった。だけれど、いろいろあって考えが変わった」
「お前の弟が出した本でか?」バートレットは呟く。
「いや、そんな事じゃない。嫌になったのさ」
「お前は、名誉勲章受賞者だ。少佐も大きくお前を評価している。
軍の若い奴らの士気も下がりかねない」とバートレットは言う。
「簡単に言うと、もうこんな毎日にうんざりだ。軍の初戦は、政府の理想に燃えていた。
ウスティオのため、その理想は絶対と思っていた。でも、変わったんだ。そうゆう見方が、
弟が従軍記者で、活躍したからじゃない。自分の中での別の生き方に目覚めたんだ。
もう、俺はウスティオの事ばかりでなく、家族の事を考えたい。俺が負傷して使い物にならないって事でも言って、軍を離れるつもりだ。
なんとでもなるだろう」
「それからどうするんだ?」バートレットは厳しい目つきでラリーを見つめる。
「田舎でも帰って、仕事を見つけるさ。自分には唯一の母や妹もいる。俺より先に弟のティムが、エルジアに亡命させてくれた。
自分は、なにもできなかった。帰って母の面倒を見ながら暮らすさ」
バートレットは沈黙の中、ため息を吐き、
「ああそうか、少佐に言っておこうか?」
「そう願いたいが、今は黙っておいてほしい」
ラリーはそう言った後、黙ってその場を離れた。
少年のいる酒場に13は訪れた。
13は少年を呼ぶと、
「レジスタンスなんてわかるのも時間も問題だ」と言う。
「はい・・・」と少年は呟く。
「俺が少し危険だが町の外の避難所まで車で乗せてってやりたいんだ。」と言った。
「町の外なら避難した人に追いつく。列車で追いつきそうだ。このままだと大変になる」
それを聞いた少年は13とともに車に乗り込む。
そのまま町を出て、何もない車道を走る。
「ミスの爆撃はなさそうだ・・・」
終始車の中の13は無言だった。
「じゃあこれでいいな。頑張るんだぞ」
別れ際に交通費や戦争が終わるまでの費用を
「俺の金だが大事に使え・・・」
何も言わず、避難所に着いて、別れようとした13に少年は抱きついた。
「ありがとう」
そう言った少年を13は抱きしめた。
「戦争の保証金が出るまで親を見つけるまで一緒にいてやりたかったが・・・」
13はそう言って、二人は離れる。
少年は列車の切符を買って、無事、保護区までたどり着く。