24
ラリーは、朝食をすませて、基地の広場でいた。
広場に仲間が数人、バスケットボールをしていて楽しんでいる。
その日の朝の基地は海からの潮の匂いに包まれていた。
朝頃降っていた雨はもう止んでいた。
ラリーにバスケットボールが転がってきて、
ラリーは、転がってきたボールを仲間に放ってかえすと、
「基地は、厳戒態勢だ。それは十分に気をつけおいてほしい」
「こんな、いい朝は、ひさしぶりですよ。中尉」と部下がラリーの方を見て、笑って答えた。
ラリーは、基地から見える、山岳地帯を見つめた。
そして、その山間から見える、朝日を見つめて、
「ああ。いい朝だな」と言った後、
自分の部屋に戻った。基地では別の部屋でロスマンが、基地の報告書に目を通していた。
ラリーは、コカコーラでも飲もうと、外へ出て、基地の長い通路を歩いていたら、
歩きながら本を読んでいたロスマンと鉢合わせした。
ラリーは目を背けて何も言わなかったが、ロスマンが振り向いてラリーを呼び止めた。
「たいした話じゃない。暇じゃないが、ラリー、君にこの本は、今政府の人間には特別しか読めない本だ。君にあげるよ」そう言って、自分の手に持っていた、読みかけの小さな本を黙ってラリーに手渡した。
「何の本ですか?」自然にラリーは聞き返した。
「読んでみれば解るさ」とだけロスマンは言って、ラリーに本を手渡すと黙ってそのままどこかにいってしまった。
ラリーは、手渡された、本を見た。
ティムが出した本だった。
「ティムの本じゃないか」ラリーは思った。
ラリーは、その本をいつも自分の部屋の引きだしにしまっていて、
その夜、机に足をあげて本を読んでいた。
それには、ティムのベルカでの思い出から、
従軍記者として、戦場を戦った思い出や様々なエピソードが書かれていた。
自分の兄と敵どうしとして戦っている現状についてはふれられてはいなかったが、
戦場での写真が多く載っていて、ラリーは幾度も読み返し、
個人的に少し感銘をうけた。
自分は何のために戦っているのか・・・。ロスマンは何を伝えたかったか?笑いたかったから
自分に手渡したのだろう。きっとそうに違いない。だが、自分は政府の軍人として尽くしてきた。
無学な自分に弟からのメッセージだろうか。政治の事は解らない。じゃあ無学なままで、
弟と共に戦う。そんな道もあったろうに。
でも自分は軍人だ。国のために尽くしてきた。多くの敵を破り、名誉勲章までもらった。
でも、それは自分の中で今、何の意味も無いのを感じていた。
今、弟と兄弟として接せる事もあったんじゃないか?
じゃあ俺の今までの戦いはなんだったんだろうか?
俺は国のために生きる・・・。
そう心の中で何度も言い聞かせていた。
でもラリーはティムの本を読んで、内戦の考え方を考えてきた。
俺は軍の事しか知らない。でも弟の書いた本はラリーの内戦についての考え方を変えていった。
戦いに勝利すれば、そうなるだろう。でも自分はもう少しで内戦は終わる。自分もこれからの事を考えなくては・・・。
名誉勲章までもらった。
家族はどうしているだろうか・・・。そうラリーはよく思う事を思った。
灯火管制によりディレクタスは夜の闇に包まれていた。
暗い道の中、万引きの少年はその暗い道を走っていた。
爆撃誘導用のレーザー発振器を仕掛けていて、ベルカ兵に見つかったのだ。
心臓の息使いが頭にも感じる。
笛が鳴らされた。少年はなんとか振り切って、物陰に隠れる。
そこからレジスタンスの集う酒場に向かおうとすると1台の車が止まった。
「見つかった・・・」
少年はそう思う。
中から出てきた男はあのまぎれもなく13だった。
少年は少し顔をしかめた。そしてこう叫んだ。
「僕達の町から出ていけ!侵略者め!」
13は無言だった。自分の敵が敵でもなく、身近な所にいたのだ・・・。
その声を聞いて、兵士が笛を鳴らす。
それを聞いて、少年は動揺する。そして、
「見つかったら捕まる・・・」
と13に言った。
13は無言で嫌がる少年を自分の車に入れた。
集まった兵士は、13の服のネームを見て、
「空軍の方ですか、こっちに子供が来ませんでしたか?レジスタンスの奴らでしょう」と言った、
「来てない」とだけ言う、
兵士は「おい、あっちを探せ、お前は向こうだと言って、走り去った」
兵士が行った後、少年を車から出した13は、
「行け!」とだけ伝えて、その場を去った。