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ティムは大学で法学の4時間目の講義が終了した後大学の階段を登って、大学の屋上に顔を出した。
大学は赤い煉瓦造りの構造で、講義を終えたティムは、大学の屋上からの景色を眺めたかった。
屋上から見るベルカの景色は、標高2000メートル級の雲がかかった山脈が連なり、
その下に長い川や北西には広大なベルカの平原、小麦色の穀倉地帯が広がり
穀倉地帯を黄色く染めていた。そしてうっそりした針葉樹林の森が広がっている。
川と丘の近くには大きなダムがあり、町の景色は夕方の太陽が町で一番高い大聖堂の尖った屋根
を夕日で赤々と照らし出している。町は工場に石炭を運ぶトラックや労働者が休みなく行き来していた。
今で言う50年代式の自動車が町を走っている。ティムは大学を終えた後、町の大きな川に架かっている鉄橋の手すりに寄りかかって疲れからか物思いにふけっていた。
広い川は海に続いていて、港の方では多くのカモメが餌を横取りしようと多く飛んで見かける。
川の景色も夕日に赤々と照らされている。ティムは、桟橋の様子に目をやる。多くの漁師の人間が、魚を、
網にかけて、川辺の魚を取っている。ベルカではよく見られる光景だ。
近代文明の進歩している各国と比べ、ベルカは古い国である。そうよく話す、校長の声が頭に浮かんだ。
その人間もベルカの体制に不満をもっている。失われつつあるベルカの知識人の一人だろう。
ベルカ運動を知っている年代の一人だったからだ。
ベルカ運動が盛んだった、当時の強いベルカの時代と比べ、今は閉鎖的で、財政難に陥っていた。
ベルカは、国力もあり、常に列強の一員として、代表される国であったが、時代遅れの国になるつつある。
政治なんてわからないが、ティムは幼気ながら、そう思う。北欧の大国ベルカも、優れた指導者も歳を重ね、
かっての大国の威厳は、何処に進もうとしているのか・・・。