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「初めて飛んだのは何歳の時だ」バートレットは昔を懐かしそうに言った。
「高校を出てすぐの頃です。父が僕の中学の頃亡くなって、家族の生計を立てるため軍に入った」
とラリーは語る。
「ウスティオの為とかではなくて、たんに家族を養うため。ただ、飛ぶことが好きなだけだ」と言う。
「大尉は?」
「はは、俺か?俺は軍に入る前は、ラグビーをやっていてな。ラグビーの1流選手になるのが、
子供の頃からの夢だったんだよ。
お前と一緒で、政治なんて解らなかったし、色々勉強したほうさ。
子供の頃から、ラグビーの試合があると毎週見てたもんさ。大尉まで昇格はしたが、
本当なら、ラグビーの選手になりたかった。家族もラグビー一家さ」
「うまかったんですか?」
「これでも、アマクラスじゃトップクラスの選手だったんだぜ」と
「はは」
「笑うとこじゃねえよ」
「想像つきませんね」とラリー。
またカモメの1羽が飛んできて、ラリーの座る、長い椅子に止まり、
困ったように顔をクリクリと回していた。
「プロからのスカウトもあったんだ」と自慢そうにバートレットが言う。
「なぜ、その道に行かなかったんですか?」
「靭帯を怪我してな。それがないと今ではプロだったさ」
「それで軍に」
「そうだ。コーチの話もあったけどな。給料が良かったから入隊した」
ラリーは少し笑った。
「それだけで軍の大尉に?」
「最初は軽い気持ちだったんだ。だが軍に知り合いが増えていい仕事もなかったから、ラグビーしか取り柄がなかったから」
二人の会話は、クリーム色の黄色い夕日の光を浴びて、
静かにまどろむ海と砂浜に明るく響いていた。