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その数ヶ月後、
ベルカ参戦のニュースが大きくTVで報じられた。
流れていた、CMも中断しての特別番組が流れる中、
ティムは、反政府の管轄の目を受けながら、ニートベルトに連絡を取っていた。
持っている電信網から連絡をとる。
コンピューターを起動させ、少し長い読み込み時間を過ぎ、
ニートベルトに連絡をとる。
「家族は、エルジアに無事着く事が出来た。
ビザの申請についてのエルジアへの面接の手続きの審査を軽くしてくれて本当にすまない。
君のおかげだ、礼を言う」
「ああ。僕もよかった」
そして、数分の沈黙の後、ニートベルトは言う。
「とうとうベルカ参戦だな。君と建前上もう少しで敵どうしになる、
この通信もそろそろ使えなくしないと困る。他に何か依頼はないか?
今の内に出来る事があったら言ってくれ」
「いや・・・色々と、ありがとう。それだけだよ」
「じゃあ。いいかな」
「ああ」
「じゃあ」
「いや、ちょっとまって」
「何?」
「兄と話たい・・・」
「君の兄さんとは僕は知り合いだ。祝賀会で見かけた。知り合いだ」
「兄と戦争の事や色々と話たい」
「なんとか伝えておくよ。それだけか」
「ああ」
「ベルカ万歳」そう言うと、ニートベルトは電信を切る。
ティムは理解して切ると、窓から身を乗り出し、町を眺めた。
この美しい町の景色もベルカの参戦で炎に包まれるかもしれない。
ティムのいる町はもう夜で、赤々と明るいのは都市部の
離れた景色で、ティムのいる所は薄暗く、電燈の光が道を照らしていた。
ティムは冷蔵庫から上等なウイスキーを取り出し、
コップに並々注ぎ、それを片手に窓から都市部の夜景を何十分も眺めていた。
ティムは、荷作りをして、帰る準備をした。
その後、世話になった、管理人に礼を言い。
老人を持っているお金で、町一番のシーフードの料理屋に、
ご馳走を振舞おうとした。
老人は、これといって最近美味しい物を食べていなく、あっさりとOKした。
夕闇の中、町のネオンが綺麗だ。
老人をその町のシーフード店に案内した頃には、午後7時を回っていた。
明るい電灯の中、談笑していると、外から警察のサイレンが聞こえた。
「あいかわらず、通信は良くないな」とティム。
「ディレクタスと比べればたいした事ないぜ」と老人。
「ディレクタスに行った事があるんですか?僕はウスティオ人ですが、ディレクタスへは初めてです。
政府軍の反撃もディレクタスから予想されています」
「ディレクタスへ行くのか?」
「ええ、従軍記者として、ディレクタスはどんな町ですか?」
「ディレクタスは戦争がはじまる前は賑やかだったが、戦争がはじまるって事で、夜は暗いよ。人通りもいない。軍のおかげで夜は猫一匹いないよ。ディレクタスは、住んでいた事がある。結婚後だけど長かった」
「どんな、町です?」
「マスカルーとかに比べれば、賑やかじゃないが、首都だけあって都会だよ」と、老人は、とれたて
の牡蠣のフライを口に含むこの人も久々のご馳走でうれしいんだろうなと個人的に思い
祝日でもないのに混み合った、店内を横目で見渡しながら、テーブルの上の水の半分入ったコップを片手で
もちながら、ティムは、水を落ち着いて飲み干した。
「家族をエルジアに亡命させたいらしいな」老人は言った。
「ええ」
「この戦争のさなか、大変な事だろうな」
ティムはそう聞きながら、戦争のさなか、この店の経営が賑わえるのも、状況が悪化してないだろうからだと思う
店の店員が、海老のロースを運んできた。
「おお、今日は豪勢な日だ」と老人は言う。
その内に老人は大胆に、「この店は反政府を支持しているのか」と店員に尋ねる。
「私達は、政治には」と店員は言う。
「おい、反政府は今、この地区を制している、したがわねえ奴等は、俺がぶっ殺してやる」
と、意気揚々だ。
「この店の飯もこの地区は反政府が占拠してるんだ、払う必要はねぇんじゃねえか。俺は反政府のもんだ、
普通の客とは違うぞ!」とご機嫌だ。
そして、周りが一瞬、静かになった後、
「知り合いは、どいつもこいつももうじじいになって理想なんて語れる歳じゃねえ奴らばかりだよ」
と嘆いていた。その後、老人は、
「まだ、美味いもん食いてえなぁ、でも金はあんたが支払うんだから、文句は言えねえな」
と、すこし笑いながら言った。
そう言った後、自分の財布を取り出して、持っているお金を確認すると、「あんたとは、ここで別れても
これから別の事で付き合っていきたいなぁ」と、言った。
「そういや、電話番号も教えていませんでしたね」と、静かに言った。
「あんたとは戦争以外に別の事でも、知り合いになりたかったな。ああ満腹だ。こんなに美味い飯を食べれた
のも久々だ、今日ほど胃が沢山ありゃなぁ、と思った事はねえよ」
その後、店を出て、夜の町に繰り出した後、
老人は喘息と満腹のせいか、道に倒れこんだ。
老人を起こすと、老人は真剣なまなざしで、ティムに対して敬礼をした。
「司令官どの、政府軍をぜひ打ち破ってください。貴方は勇士です」
ティムは、困って、
「恥ずかしいからやめてください」と言った。
「はい、司令官どの」
と、老人は言う。ティムも、少し真剣に、
「ええ」とだけ短く答えた。