25
ラリーとバートレットは、祝賀会に帝国ホテルのパーティーに招待されていた。
社交界の皆が、踊りに明け暮れたりしているのと対象的にラリーは完全に浮いていた。
ラリーは盛り上がっている中、チーズや海産物を食事と酒を他の人と違って、口に無理やり放り込んでいた。
その様子が可笑しかったのか、社交界の自分を見つめていた金髪の女性の一人は、
ラリーの様子を見て、グラスから口に入れたワインを完全に吹きだしそうになりかけた。
それを見て、恥ずかしかったラリーは、逆に酒のためか吐き気を覚え、トイレに向かうのを逆に女性達にからかわれていた。会場の音楽が変わった後、ラリーの近ずいてきた、バートレットに、ラリーは、「酒や食事は美味しいがな、この雰囲気どうしても馴染めないよ」と少し口の辺りのケチャップを拭きながら、
ラリーは言う。バートレットは、笑いながら話しかけた。
「べつだん社交界も慣れてくると悪い物じゃないぜ。はは、俺は初めてだがお前もか?」
「ああ、軍人には、縁の無い物だから」と気まずそうに答える。
「じゃあ俺は、あのねいちゃんと踊ってくるよ」とバートレット
そんな中、軍の関係者が、パーティーのホテルに姿を見せだした。そのまま数十分、ダンスした後にバートレットは、酔った雰囲気でラリーに話しかけた。「お偉いさんが来てるぞ」と言った。
そう言って、政府軍の軍服の将校達を指差して、説明する。ラリーの所属する、ウスティオ軍第7航空連隊の中でも、
下の隊員がこんな大きな社交界に招かれる
のは、珍しい事である。
ラリーも心では浮いていたが、実際は思ったより浮く存在である。
夜の中、明るい光に照らされた広間は、多くの上流階級者が集まっていて、
皆、政治の話等ばかりしている。
バートレットは泥酔していたが、意識は確かだった。
本人もこんな所で泥酔は出来ないと思っていた。
軍の上層の、ラリーをこの席に招いてくれた少佐が席につく
ラリーは席に招待された。
「かけなさい」と居づらくしているラリーを気遣い、政府軍の一人が言う。
敬礼をした後、ラリーは座った。
少佐と軍の上層部が、これからについて話をしていた。
「まず、これからについてだが・・・」一人は言う。
「できれば、首都奪還に大規模な人数をかけたい。
上層部へも負け続けの報告ばかりだ。
敵軍の戦力は強い。戦況は互角だが、我々の実力で、この戦いをなんとか勝利したい」
「ベルカは何時ごろ参戦してくれるとの情報は」と少佐は言った。「様子としては、来年か、まだ早いかもしれない」
「ベルカはどれ程の戦力を投与すると踏んでいる?」若い上官が言った。
「ベルカの強さをご存知ですか?」少佐は言う。
「いや、実際に実感は沸かないね」
「そのうち反乱軍もわかりますよ」と少佐
ウエイトレスが、食卓の蝋燭を取り替えている時、ラリーは一心に飯をほうばり
少し浮いていた。
自分への目に気づいたラリーは、そのうち居づらくなって、トイレに行ったと見せかけて
自分の席に戻ってくる事はなかった。
そんな事は相手にせず、軍の議論は真剣だった。
ラリーは、バートレットの所へ行く。
バートレットは、眠たい目を引きつり、女性と話まくっている。
「おい、軍にいると出会えない上玉ばかりじゃねえか。何かの出会いを探したいもんだな」
「ここでは軍の話はやめよう」と、注意した目で言う。
外は、大雨が降りしきっていたが、そのうち止み、気温も少しずつ過ごしやすくなってきた。
自動車のクラクションや町の賑わいもここには勝てない。
バートレットは、同じ祝賀会に招かれた人物と話をしていた。
ベルカの人物も多数いた。
ベルカ軍の情報部出身が多く、その知り合いを多く作っていた。
その中に、ニートベルトの姿もあった。
時間は過ぎていく。音楽がクラシックのまた、次の曲へと変わり、
場の雰囲気も一層盛り上がる。
バートレットが言った。
「いいスーツそうじゃねえか」
「気付いた。この日のために特注してもらったスーツなんだ。高かったんだぞ」
と和やかな雰囲気で言う。
「あっちで、ベルカ将校さんの紹介がお前にあるとよ」と言う。
「ああ」ラリーはそういってそちらに向かう。
ベルカの将校が、一人ずつ、ラリー達に人を紹介していく。
情報部といっても沢山いた。
「ベルカ情報局ヒスナーです」一人一人握手を交わす。
「レイベル」です。自己紹介は続く。
ニートベルトは、ラリーと違い緑の軍服姿で、
「ニートベルトです。ラリー・フォルクですね」
と、軽く握手を交わした後、高い身長の青年のニートベルトは、ワインを片手に話しかけた。
「貴方の弟さんと知り合いです」と、ニートベルトは言った。
初め、拍子ぬかれたような感じだったが、ラリーは答えた。
「弟とは、どういった関係ですか?」「友人の関係です。大学時代ですよ」
「ティムの兄のラリー・フォルクです」
「ニートベルトです」
ニートベルトは静かな好青年で、ラリーの感覚も良かった。
「今は交流があるのですか?」
「ええ。ティムとはね」短くニートベルトは答える。そして、
「ティムから依頼は、この戦争中でもあります」
「というと?」
「貴方の家族をエルジアに亡命させる手続きをしててほしいとの依頼を受けていましてね」
それを聞いて、ラリーは、真剣になり、
「僕の家族や弟の力にぜひなってほしい。母はもう歳だ、巻き込まれたくて、
こんな戦争に巻き込まれているんじゃない。エルジアへぜひ、亡命を希望したい。
弟や家族に連絡を取りたいのですが。なにせ戦争中だし、家族は、反政府地区ですから
通信手段が制限されてね」ラリーは飲みかけのグラスを片手に言う。
「弟はどうしてますか?最近連絡がない」とラリーは言う。「ティムは反政府軍です」ニートベルトの答えに、ラリーから笑顔は見れなくなった。
「そうですか・・・」ラリーは答える
「皮肉な物だな・・・戦争は貴方達二人の兄弟の友情を超えて、ベルカ寄りとそうでない思想を戦わせ
ている。ティムはベルカ思想に果敢に抵抗している。貴方の理想とは何ですか?」
ニートベルトは言う。
「俺は、ただの軍人だ、戦争で弟が死ぬような事があっても、それはそれで仕方ない、
僕の事も弟もそう考えているでしょう。
ただ、影ながら、弟の力になってやりたい」とラリーは言う。
「ティムと連絡はとれますよ」とニートベルトは言う。
「本当に?」ラリーはそう言うと、
「通信方法を教えてほしい」と言う。
「今は、戦争中だ、そんな事は貴方では無理だ。僕だってそうやすやすとはいかない。厳しいのですから。ですが、ぜひ、ティムと連絡がとれるようしてみましょう」とニートベルトは言った。
「それは本当ですか」
「ええ。内容は?僕が初めに伝えます」
「家族とこれからについてです」
「話たいんですね?」
「ぜひ」
「分かりました」そう言った後、祝賀会の演奏はゆったりとした演奏に変わった。