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2ヶ月後、ティムにニートベルトからの返信が届いた。
軍関係でなければ、家族のエルジアへの亡命の申請については構わない。
詳しい話を聞きたいから通信網で電話での連絡を取りたいと。
そして、返信への詳しい特殊な電話番号が書いてあった。
ティムは、自宅にしているホテルからニートベルトに連絡を入れた。
長い中、やっとニートベルトに連絡がとれた。
「ニートベルト久々だな」
「ああ・・・この番号は反政府軍の関係者にできるだけ内緒にしてほしい。
個人的な番号なんだ」
「家族をエルジアに亡命させたい・・・」
「エルジアへか・・・」
「政府軍の侵攻は確かにまだ及んでいない。だがもしもの時がある」
「民間人だし、まだ戦火の及んでない地域に移動するとか」
「家族が完全に大丈夫だとゆう保証はないんだ。
家族もエルジアへの亡命を早めに希望している。
戦争に負ければ、ウスティオの民主主義は破れ、ウスティオは元のベルカの影響力の強い閉鎖的な
戦争を基本とした国に戻る。
今のうちにベルカを離れさせたい。そして、民主化の進んでいる
エルジアへの亡命を期待したいんだ。
それに家族もエルジアの方が好きらしい」
「俺しか頼る人間はいないのか・・・?」と、数秒の沈黙が流れた後、
「大学時代の知り合いが何人かいるが、全員連絡がとれないから君に頼みたい」
「わかった。エルジアの大使館に連絡をとってなんとかしょう」
「必要な物はあるか?」
「それは後で連絡しよう。が、なにせ戦時中だからな、エルジアも何と言うか」
「そこをお願いだ」
「通れば、問題はどうやって政府軍の地帯を通過するかだな。
鉄道での通過か、それとも空の通過か」
「わかってる」ティムは短く答えた。
その年の11月、反政府軍陸上部隊は、ウスティオ政府軍の首都ディレクタスを
陥落させ、開放に成功する。
ティムは町の残っていたが、首都ディレクタス開放の知らせを聞いて、
ディレクタスに向かう決心をしていた。
老人もディレクタスに行くか話をした。
老人も行く気らしい。
ティムはそう聞くと、自分もディレクタスに行く準備をしていた。
老人は、
「ディレクタスに行くと前線になるんでな。あんたも気をつけとけ」と言う。
「そろそろこいつの出番だな」と、自分の銃を大切そうに撫でた。
「ディレクタスを早く落とせませたね。想像以上の快進撃だ」
「あんた負けると思っているのかね?首都だが、そんな大都市じゃあねえ」
「いや」
「北部戦線に回っていた部隊の到着が
猛吹雪で遅れたから、簡単に落とせたが、政府軍は強えよ」
赤ら顔の老人は、そう言って、
自分の持っていた瓶に毛布をくるませ、
それを頭にやり、横になった。
「俺もこの戦争がないと田舎でひっそりやれたのに、
でも俺にとっちゃこの戦争が全てだ、
何が共和国だ」
「子供さんはおられるのですか?」
「息子が一人それと娘が一人、孫が一人だ」
「その方は?」
「息子は戦争で死んだよ」そう言って黙った。
そのうち、反政府軍の自分と同じ歳の若い奴らが、部屋にたくさん来た。
「ディレクタスは開放された、もうじき、ディレクタスに向かおうと思う。一緒に来るか?」
ティムは老人とともに一緒に行くと答えた。
「ディレクタスに行くんだろう?足はあるのか?」と言った。
「今はない。乗せてほしい」
「わかった」
その次の日は、ティムは町の広場でディレクタスへ向かう装甲車や戦車部隊を見た。
「壮観だな」とティムは思った。
反政府軍も強い。そう心に思った。
反政府軍の兵士が、勝利を願い装甲車にペンキで名前をつけている。
広場の向かい側で、反政府軍が作戦を立てていた。