19
町は楓の落ち葉の残る町だ。
ティムは町のホテルに泊まって毎日の生活をしていた。
ホテルのオーナーは、反政府軍の味方で料金を取らずに止めてくれた。
町に出歩くと、装甲車や戦車、建物には高射砲があり、
政府軍と戦う士気は高まっていた。
だが残念ながら、この町の戦力だけでは政府軍と互角に渡りあえる
だけの戦力はない。
FAL銃を片手に、兵士達が町を歩いていると敬礼する人も多い。
ティムは、軍事病院にきていた。
戦争の兵士達の見舞いに来ていた。兵士達以外に、少年達も含まれていた。
点滴をうける少年に、何か欲しいとせがまれて、
食事を禁止されている少年に、
ラリーはポケットにあった、チョコレートを出して、食べさせてあげた。
部屋の外の通路では看護婦と兵士達の妻が、
命に別状はないかとゆう話をしていた。
妻達はひどい心配性で、中には、患者の事で病院の物とヒステリックになっている姿もあった。
兵士の一人が重傷で運び込まれ、医者の数が足りないせいか、
狭い通路は、重症の兵士で埋め尽くされていた。中には血だらけの患者もおり、看護婦が忙しく、点滴を変えている。
その中のタンカにのって、ぼうっと暗い天井を見つめていた。
看護婦達や医師が電気心臓マッサージをしている。
兵士の一人をラリーはあの反政府の兵士達を重ね合わせて、
思い出し、じっと見ていた。
自分の信じている正義とは政治的思惑にはちっぽけな物なのだろうか、
それを理解さすためにこんな重傷者を出す戦いを人間はどうして繰り返すのか・・・。
今、ラリーを信じている純粋な正義感と違って、
患者はタンカに乗って次々と運ばれてくる。ラリーは、勤務を終えた後、病院に立ち寄るのは日課になっていた。
ラリーは身寄りを戦争で失った、あのチョコレートを分けた男の子の心配をした。
車椅子に若くしてなっていて、自信を喪失したのだろうか、ラリーの問いに少年の顔は暗かった。
ある日、少年を車椅子で散歩させてあげた。
その日は、会話しながら公園を散歩するくらいで終わったが、
ある日、風呂に看護婦に入れてもらっている時に、その姿を見て何人か、
「あんなふうになりたくない」なんて声が、患者の男の子まで聞こえてくる。
その時、男の子は黙っていたが、男の子は言う。
「夜になると、僕と同じ戦争の患者がよく口にするのです。こんな車椅子生活が永遠ですか・・・。昔は陸上をやっていました。速かった・・・。自分の事ですが、
若くして足を失った人間の気持ちが解りますか?」と、ラリーに愚痴をこぼす。
ラリーは考えていた。
「この少年が大人になる頃自分は何をしているだろう」
「貴方は軍人で素晴らしい方です。反政府を倒して戦争を終わらせてください」と、言う。
ラリーは、「ああ」とだけ答えて、
そのまま車椅子を動かしていた。
そんなある日、
自分のシーツと衣服の洗濯をするため、基地のコインランドリーで小銭を払い、ラリーは、勤務を終えた後、病院に立ち寄るのは日課になっていた。
ラリーは身寄りを戦争で失った、あのチョコレートを分けた男の子の心配をした。
車椅子に若くしてなっていて、自信を喪失したのだろうか、ラリーの問いに少年の顔は暗かった。
ある日、少年を車椅子で散歩させてあげた。
その日は、会話しながら公園を散歩するくらいで終わったが、
ある日、風呂に看護婦に入れてもらっている時に、その姿を見て何人か、
「あんなふうになりたくない」なんて声が、患者の男の子まで聞こえてくる。
その時、男の子は黙っていたが、男の子は言う。
「夜になると、僕と同じ戦争の患者がよく口にするのです。こんな車椅子生活が永遠ですか・・・。昔は陸上をやっていました。速かった・・・。自分の事ですが、
若くして足を失った人間の気持ちが解りますか?」と、ラリーに愚痴をこぼす。
ラリーは考えていた。
「この少年が大人になる頃自分は何をしているだろう」
「貴方は軍人で素晴らしい方です。反政府を倒して戦争を終わらせてください」と、言う。
ラリーは、「ああ」とだけ答えて、
そのまま車椅子を動かしていた。
そんなある日、
自分のシーツと衣服の洗濯をするため、基地のコインランドリーで小銭を払い、
洗濯を手前のソファーでラリーは、ぼうっと見つめていた。
洗濯が終わると、衣類とシーツを皮袋につめて、車で移動した。
病院に立ち寄った。
捕虜の男は病室にいた。
ティムは病室の捕虜に語りかけた。
捕虜の男は、「引き出しを開けてくれないか?」とティムに言った。
「足が動かないから、引き出しを開けるのも人手がいるんだよ」と言う。
捕虜の男の横にあるすぐ近くの引き出しの扉を開けると、
ノートと子供の写真が出てきた。
「これは?」ティムは尋ねる。
「この戦争の思い出を記録したノートだよ。動けないから、どうして僕がこの戦争に参加したいきさつや戦争の思い出を書いているんだ」
「この写真は?」子供の写真を見て、ティムは言った。
「僕の子供だよ。この戦争が終わるころには、大きくなっているんだろうなぁ」男は言った。「息子さんの写真ですか」
「アルバムなら、まだ下の引き出しにあるよ」ティムはまだ下の引き出しを開けて、アルバムを取り出した。
アルバムをめくる。「この戦争用のアルバムだよ。家族の写真は戦争の勇気つけに持ってきた。軍に見つかったらどうせとり上げられるし、息子と家族の写真以外、ほしかったら君にあげるよ」男は言った。
ティムは家族の写真やアルバムの戦争の写真を1つ1つ見ていた。
ベルカ軍の情報を知りたいとゆう意思もあったからだ。
「家族の写真を見せてくれ・・・」突然、男は手を差し伸べて言った。
ティムは困惑した表情で男に家族の写真を渡した。男は写真を握りしめて、その写真を見て、泣いた。ティムは男の手を掴んで、男を抱きしめた。
「戦争が終わったら、家族に会えるよ。きっと。きっとだよ」ティムは言った。
男に、親元がいないなら、施設に行くのをラリーは進めた。だが、話は決まっているそうで、
おじさんが面倒を見てくれるらしく、ラリーも安心した。
病院で多くの人を励ましていた、ラリーは、疲れからか、その後、病院のロビーの長椅子で眠っていた。
その後、外に出て、男の子の戦争の事を聞かせてほしいとゆう問いに、
素直に応じ、話していた。弟が反政府にいる事や戦場での事。
男の子は別の子供達にラリーの事を教えていて、
ラリーが名誉勲章を取ったのは、空軍の仲間達だけでなく、多くの患者の子供達が知る所となり、
多くの話の種だった。
そして、皆ラリーを尊敬の目で見ていた。
人間的に尊敬なんて関心ないラリーは困った顔で問いに答えていた。
その後、病院から出た。
外は針葉樹がおおい茂っていた。その景色を病院から出て、数分眺めた。
親しんだウスティオの自然である。その日の午後、
病院中を騒がす事件が起こった。
「一人患者がいなくなった」と、看護婦が騒ぎ立てている。
ラリーも病院にいた。
「患者がいなくなった。あなた、知らないですか!」と若い看護婦がラリーに問う。
「知らないが。何処にいったのか・・・」と、それが自分に足の事を言っていた少年なのは、大分たってから理解できた。
「あなた、ずっとそばにいたじゃない?」
「昼前一緒にいたあの子よ」と、言う。
「そこらを一緒に探してきましょう」と看護婦は言った。
探せるだけ探してみたが、病院にはいないようだ」
「外出かも」と、別の看護婦は言った。
その慌てぶりを横目で見つめながら、ラリーは少年を心配する。
「外を探すの?外の雪はだいぶおさまりつつあった。
「大雪じゃない」と、看護婦は言った。
「そのうち帰ってくるんじゃないか」と患者の一人は言う。
「でもあの足で外へ行くのは危険だわ」と看護婦は慌てていた。
「あの足じゃ、そうと遠くへは行っていないと思う。近くを探してみましょう」と、看護婦は人数を集めて言った。
「僕も手伝うよ」とラリーは言った。雪の中、ラリーは看護婦と一緒に雪道から、
少年の姿を追っていた。大声を出して、少年を呼ぶ。雪は大分とまっていたが、地面は真っ白だった。
その中から足跡を見つけたとの声が聞こえた。看護婦の一人の声だ。息ずかいの中、
初めはそれが何の声か解らなかったが、数秒で看護婦の声だとは解った。
その場に行きよく見ると、足跡らしきものが雪に残っていた。推定すると、それが大きいものでなく、
子供の足の大きさぐらいなのは解った。まだ新しい。
「雪で足跡が消えないうちに探さないと」と、ラリーは言う。子供が一人、こんな寒い中だと、
ラリーは少年の安否が心配だ。
看護婦の一人が必死に手招きして、仲間を集めている。
「とにかく辿ってみましょう」と、看護婦は言った。ラリーもうなずいた。
辿っていくと、その足跡は、バロック式の大きな聖堂に続いていた。
「ウスティオのあの聖堂じゃないかな?」ラリーは看護婦に予想を伝えた。
看護婦は頷いて自分もそうだと思う意志を伝えていた。「急ごう」とラリーは看護婦に伝える。
「ここで足跡は途切れているな」仲間の一人が言う
。「この近くにいる」とラリーは次に大声で「この近くだ」少年の名前を大声で叫んで後を追う。
「早いところ探さないと俺達までヤバイと仲間の一人は言う。
ラリーは、その場で考えていたが、「どうしてそう簡単に諦めるような事を言う?きっと近くだ」と仲間を励ます。
「なるべく離れないようにするんだ」とラリーは全員に訴える。そして、開けた所に聖堂はラリーに見えた。
聖堂まで着くと、聖堂の入り口の階段に少年は倒れていた。
少年だと解るとラリーは安堵して大声で仲間を集めながら、すぐ、そばに言って話しかけた。「大丈夫か?」と、ラリーは聞いた。
看護婦が心配している。
その目は笑っていた。
「いや、外出したくて、ここまできただけ。車椅子で自分の力で動きたかっただけ」
「どうして許可もないのに、こんな所まで、みんな心配したじゃない」
車椅子が雪のおかげで動かなくなって、車椅子をひっぱって、自力でここまで来たようだ。
「ごめん・・・」少年は少し泣いていた。
少し雪が降ってきた。
「寒いから聖堂に入ろう」と、ラリー。
看護婦とともに町の聖堂に入った。聖堂を管理している神父の一人に、
「患者の少年が病院で外出したところ、雪に足をとられて動けなくなってしまって、少しおいてくれませんか?」と、神父に尋ねる。
神父は自分の眼鏡をハンカチで拭きながら、
「私も別の用もありまして、その悪い人間でないのは、すぐわかりますが。出来れば、雪が収まるまで」
「それは、わかります。とにかくありがとう」と、雪に濡れた自分の上着から雪を払い落としながらラリーは言った。
神父は家に案内して雪の間、いさせてくれるのには大して何も言わなかった。
「家にきなさい」と短く言った。
看護婦は少年にひどく注意していた。
その神父の家で、雪がおさまるまで神父の家の暖炉で、体温の低下している少年に毛布でさすって、休ませてもらった。
寒いからと、神父が熱いミルクをカップに入れて、少年に無言でさしだした。
「この雪が収まるまで、時間かかりそう?」と、看護婦は言った。
「この感じでは、大雪にはならんでしょう。数時間で戻れますよ。この辺は狼が多いですしね。気をつけないと」
神父は、「私は別の用があるので、雪が収まったら出て行ってください」
「いろいろありがとうございます」と、看護婦は言う。
ラリーは、少年に何で足が不自由なのにそう遠くにいくなよ。なぜこんな事を。と尋ねた。
「ただの散歩です。よくティムと来る道じゃないか」と答えていた。雪が収まると、神父に礼を言い、外へ出る。
「どうしてこんな事を・・・」看護婦は捕虜に呟く。
捕虜の男は黙っていた。
ラリーは話しかけても無言だから、ラリーはいきなり少年を肩車して走り出した。
「見ろよ。俺が君の足だ。今君は走っている。オリンピックだって夢じゃないんだ。1番早いんだぞ」
北極星が輝く中、少年の笑い声が響いた。
ティムの腕時計が壊れたのは昼頃だった。
その日、ホテルの提供してくれた、
かぼちゃのスープとサラダの昼食を錆のあるスプーンで食べていて、
机に自分の手の所に腕時計を外して置いていると、
手を動かした時に誤って腕時計を下に落としてしまい、
誤って時計を踏みつけてしまった。
それで、秒針が動かなくなり、
その時計は捨ててしまった。
ティムは、町の人に道を教えてもらって町の時計店に新しい時計を買うために居た。
様々な時計が並ぶ、大きな時計店。
時計店には時間に関係なく、玩具の人形が沢山並んでいた。
ティムは、その時計店の老夫婦の仲の良い写真を1枚おさめた。
仕事熱心な老夫婦。
その後、ホテルに戻った時、そのホテルに同じ峠を渡った老人が訪ねてきた。
「ここにいると聞いたんですわ。なにせ、この町に来て右も左もわからんし、今、軍の施設で生活しとんじゃが」
「ここのオーナーが反政府軍の味方です。
軍の宿泊施設に不満があるなら、貴方もここで滞在できるよう聞いてみましょうか?」
若造のカメラマンは言った。
「いや、逆に迷惑ではないんかね」
「気になさらなくともいいのです」
その次の日からは、ティムに夕食の話相手ができた。
町は消灯制により暗闇に包まれていた。
その暗さは、泣き出した子供を力ずくで黙らせたような不気味な静かさだった。
ティムは家族の家に電話をかける。
最初の電話に家族は出ず、1時間ぐらいしてかけ直すと、
妹が出た。
家族は、父は死に、兄の他には自分と妹ともう歳の母がいる。
「母さんは元気?」とティム
「戦争がはじまって、今は病気がちだわ。元気もでないみたい」と妹
「もうじき、家族のいる所も戦火に包まれるかもしれない。母とかわってくれないか」
母にかわり、
「ラリーに会いたい」と母。
「兄さんの事が心配?戦争が終わったら会える」
「ティム?お前はどっちについているの?」
「戦争の事かい。ウスティオだよ。新聞記者としてだけどね」
「お前がつくのなら政府軍につきな。反政府より戦力があるし、ラリーがいる」と母は言う。
「ああ」ティムはそう言って、
「母さんの所が戦火に包まれそうだ、だからエルジアにいる叔父さんの所へ身を寄せるとか、
考えてくれないか?」
「ここを離れて何処行くのさ」と母。
「叔父さんの家とか?」
「とっくにどっかいってないよ。実際、私と仲良くないしね」と母。
「そうゆう問題じゃなくて、このままいくと母さんも大変になる」
「例えそうでも、私はここで死ぬさ。戦争がはじまって何も元気が出ない」
「もう時期帰るよ」
「お前がそう言うなら、エルジアにいくよ。戦争中は無事でいたい」母はそう言った。
「わかった」ティムはそう言って受話器を下ろした