15
広大な葡萄畑をたくさんのトラックが走っていた。
反政府軍のトラックだった。
トラックの運転手は鼻歌を歌いながら、トラックは整備されてない道路を通るためかガタン、ゴトンと荷台はよく揺れていた。
その中に従軍記者のティムもいた。
ティムは革のコートにを包み、帽子をかぶらず、
少し寒そうにしながら身震いした。
同じトラックに乗っている老人が話しかけてきた。
老人は帽子にコートで襟巻きをしている。
「あんたはどこからの志願兵だね?」と聞く。
「元々、この土地の人間だったのですが、数年前、ベルカに移住して
今は従軍記者として戦争を見極めたいと思っています。貴方は?」と言った。
「わしは政治の事はよくわからないんじゃが、子供は前の内戦の時、ベルカに殺された、それで反政府についた」と、少しベルカ訛の老人は言う。
他のトラックにはまだ、16にも満たない少年兵がたくさんいる。
「あんた、何で戦うんだ?」と老人は言う。
「理由ですか?」と、ティム。
「武器の事だよ」
「僕の武器は内戦をカメラに収めたい。ただ、それだけの事です」と言った。
「こいつをもっとけ、護身用だよ」と、老人は自分の隣から護身用にAK74の自動小銃を取り出して
ティムに渡してくれた。
「ありがたい」そう言って、懐に収める。
その後老人は自分の銃のM70を大事に抱えると、
「敵はまだいい銃を使う、でも負けない」と言った。
そして、老人は銃のレバーを引きトラックから空へ3発空砲を打つと、
「政府軍には負けねえぞ」と言った。
「ここの山々を抜けると、平地が広がってるんだ、馬か何かに乗り換えて、基地へ行こう」
ティムは黙った。
そのうちだんだんと雪の高地の山々が見えだした。荒れた、断崖絶壁の多い高地でトラックは足を止めた。
「ここからは馬か驢馬でこの高地を越えるんだ、さあ早く降りて」と仲間がうながした。
山道を行くと、山間部の広い平地にでた。
少し土地が隆起している所で多くの味方達の同士たちのいる場所が見えてくる。
一人は馬に荷物を積みながら、こちらを目を細くして見ていた。
少年がヤクを引いて高地から降りてくるのが見える。
「ここの高地を抜けて、あの峠を越えたら町が見える。まずあの峠をこえるんだ」
と、峠を指差しながら老人は言った。
「町には味方の戦車や装甲車と会えるで」
この高地の場所で仲間達が多くのツァスタバ銃を渡されたり、作戦を練っていた。
「食事はありますか?」とティム
「飯食ってないのかね」
「国境を越えるのが大変で、この2日何も食べてないよ」
仲間が「付いてきなさい」と言い、キャンプに似たバラック小屋に案内してくれた。
「ここで食事は食べられる」
「何かあります?」
「パンとビーフシチューがあります。それと冷えるでしょう」
そこではコーヒーも振る舞ってくれた。
「何かしてほしい」
「ビーフシチューを作ってあげよう」
小屋の女は言った。
ティムはそのまま座り込むと、長旅で疲れた足を揉んだ。
少年の一人が、
「貴方は何処から?」と訪ねた。
「ベルカから」ティムは短く答えた。
その答えに少年は一瞬戸惑った。
「いや、仕事は新聞記者で取材のため」
と言った。
しばらくして、広い荒野について、トラックは足を止める。
荷台からティムを含め3人が飛び下りて、外に出た。老人もゆっくりと荷台を降りる。荒れた荒野は広大な平原になっていて、広い土地だ。
革命軍の多くが焚火をしていたり、荷物を運んでいる。
ティムに軍の上官が声を掛ける。
「従軍記者とは貴方の事かい?」
「はい」ティムは上官に自分の身分証を見せる。
そんな中、革命軍のいる場所で爆発が起こる。
大騒ぎの中、「敵軍か!」と兵達は銃を構えるが、
上官に報告が入った。「誰かが地雷を踏んだらしい。地雷原はたくさんある地帯だ。驚きとためらいがティムを襲う。
「こんな事はここではよく起きるよ、従軍記者さん」
他の兵士をティムは見る。
ティムに兵士が声をかける。
「従軍記者さん、美味い飯でも食べんかな」
そのまま声をかけた兵士がパンをちぎって渡してくれた。
「いただきます」ティムはほうばる。
「戦地にくれば、こんな毎日ばかりだ。水がどうだの飯がどうだの、家がこいしいよ」
そのままティムに上官は毛布を渡して、
「今日1日こして、明日になれば出発だ。もうじき暗くなる」と言った。