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赤い絨毯が、搭乗用の飛行機まで引かれていた。
政府高官のエルジア訪問用のジェット機である。
政府高官はマスコミからのインタビューでひっきりなしだった。
ラリーは赤い絨毯の引かれた政府高官の搭乗用の道の端で、
正装に身を包んで警護にあたっていた。
高官はマスコミに手を振ってジェット機に乗り込んでいた。
ラリーは飛行場のロッカールームで正装から警護用の服に着替えると、飛行場に向かった。
音を立てて、飛行機が飛び立つ、ラリーは後から2番目で空に上がった。
高官の乗るジェット機1機と警護用の戦闘機が5機。
皆、初対面での仲間との会話を楽しんでいた。
ラリーはラジオの野球中継を聞きながら、一人黙ってジェット機を見守っていく。
同じ低スピードでゆっくりとした感じだった。
ジェット機の中では高官は昼の食事の洋食を楽しんでいた。
眩しい光と暑さの中、編隊は進んでいた。
そんな中、飛行場の管制室はデータ上に無い7機の航空編隊を見つけた。
「妙だな・・・」
管制官は思う。
「よくわからないな。民間の飛行機では無さそうだな」
無線で編隊5機に伝え、
「エルジアの航空機かな」と一人の管制官は思いつつ、
「こちら管制官、不明機7機発見。
エルジア空軍かもしれないので丁重に迎えるように」と伝えた。管制官の言葉に、洋楽のポップの50年代の女性曲なんで聞いていた
護衛機の操縦士の一人は「ハイ、ハイ」と言葉を返した。
そのまま、暇のせいか鼻歌を歌っていた。
護衛5機のミラージュ
戦闘機が近づく中、管制室は荒れていた。
「何処の機だ?エルジア軍か?」
「今、確認中です」
「もっと、早くできないのか」
「解っています、急ぎます」
管制室より呼びかけが響く。
「管制室から、未確認機に告ぐ。こちらウスティオ軍管制司令室、機の確認を急いでいる
安定飛行に変えよ」
それでも7機のMiG戦闘機は近づいて来た。
緊張が走る。
一人の機にミサイルが発射され、爆音とともに、ズズ〜と空気音が響き1機は通り過ぎた。
残りの4機は、反撃体制を敷いた。
「通信指令室より、ジェットは今すぐ撤退してください」
「通信指令室より、各戦闘機に継ぐ、撤退は認められない、反撃してジェットを守れ」
混乱の中、一瞬で戦闘機のもう2機も撃墜され、2機だけになった。
その中、バートレットとラリーだけは冷静であった。
1機に「君の機は、後ろでジェットの護衛に努めてくれ」
「貴方は?」とラリーが言う。
「俺は片付けてくる」とバートレットは全速で敵7機のMiGの方に向かった。
激戦の中、バートレットは7機を撃ち落としたが、1機は敵に落とされたがジェット機を守った。
「どうゆう事だ」バートレットはその後、管制室に怒鳴り込んだ。
「大尉、落ち着いて」
「仲間が死ぬところだった、敵機か未然に確認するのが自分らの仕事じゃないのか」
「落ち着いて」
バートレットは止めに入ったラリーを振り倒し、管制室に怒鳴り声を上げた。
バートレットはラリーに、
「いいかポンコツ、これは軍人として最低限の事だ、仲間が死んだんだ」
「大尉、管制官もチェックが甘かった、でもミスはある事だ」
ラリーをバートレットは振り払う、
「ちっ」バートレットは泣いた。
ラリーは「自分の中で怒りが収まらないなら僕を殴ってください大尉」と言う。
それを聞いて、少し顔をしかめたバートレットは、
ラリーを思い切り殴る。
ラリーは倒れ込んだ。
「今、調べているんだ、よもやの事態だよ。発表によっては大変な事になる」
管制室は慌ただしく動き、「何処の国籍の機だ?」
「ベルカの機では無いでしょうか?」
ウスティオの管制官は国際通信でベルカとの関わりを調べていたが、ベルカ側はこれを否定。
その2時間後、ウスティオのクーデターが始まる。