05
母の家に着いた。
インターホンを押す。
「誰?」
「僕です、直樹」
沈黙が続く、
「直樹、どうしたの」
「実は・・・」
続けて、
「父が死んだんです・・・。僕の親は母さんしかいないから」
「育ててほしいの・・・」
「家庭裁判所から連絡あったはずですが・・・」
「お父さん、死んだの」
「そう」
「まあ入って」
母は僕を育ててくれる意思はあるようだ、
「お母さんは結婚はしていないの?」
「してない」
その日、母は僕を外食の美味しい店に誘ってくれた。
そして母との共同生活、
父との生活を振り返る。
最低の父だった・・・
その父から逃れられた・・・
毎日、虐待、スラムの家では僕への父の怒鳴り声が響かない日はなかった・・・
破産、
普通の父じゃない・・・そう考えたのは幼い頃からだった。
てんかん発作が続いて、障害となり、
学校ではいじめ、テレビも部屋にないから話題についていけず、
嫌われていた。父が死んで、あの地獄のような日々が終わる・・・
母と暮らし始めて、成長期は過ぎたけど、普通の食事がとれるようになり、
少し栄養失調の僕の体もすこし、おなかは太った。
ある日、アルバムを整理していて、アルバムを見つけて、
見ていた。
僕の子供の頃の写真。
母と映っている写真が1枚だけあった。
僕の写真も少ない。
父と母の子供時代の写真は1枚もなかった。
どうしてだ・・・
子供ながらに思う。