潜入捜査
彼女の頭に電極を付けて、自分の頭にも電極を繋げる。
膨大なコンピューターと超意識でのニューロンの電気信号の情報に自分の意識と情報を組み込む。
コンピューターが映像化され、その世界に政人と山下は侵入する。
ニューロンからの膨大な電波信号を暴走し続けるシステム用に作り替えている世界。
その後、二人の意識は転送される。
彼らはコンピューターが暴走を続ける、超意識での彼女の存在意識の世界に行った。
それは彼らの本体の意識でなくもう一つの仮想現実にインプットされた世界。
「起きろ」
政人は眠りから覚め、
制服の警備員が政人を起こした。
「ここは?」
「存在意識の中だ、私もそれは知っている」
システムの仮想現実に侵入した政人に携帯で電話がはいる。
同じ捜査の連中からだ。
「まず仕事は何にしておく?年齢は?それと住居もいるな」
「役所で1定の権限があるよう。歳は30代。
君の住所は東京都の品川区のマンション6階の603号室だ。
トイレは同じ階にあって皆が使う、エレベーターは1階からある」
たまに潜在意識が狂いかけているのか、道路が移動していく。
町は暗闇に包まれている。
どうせ潜在意識の中のプログラムじゃないか・・・と考える。
でもこの世界に彼女は存在している。本体が死んでいるから、強制的に意識だけ、
出られずに。
彼の言ったとおりだ、このままいくと彼女の脳の世界は2次元の仮想現実の世界からぬけだせなくなるぞ・・・と思う。
刻々と変化する、巨大化するシステムの大都市、
その6番街に彼女はひっそりといる事を政人は突き止めた。
建物の2階のベランダから観葉植物を外に置いている人が目に付く。
その建物に行き、彼女の部屋に行く。
彼女の部屋は薄暗い部屋で台所は洗っていない汚れた食器で満ちていて、
使っていない物で満ちていた。
部屋は政人の鼻についた。
洗濯のしていない毛布や紙類。
プラスチックで出来た、大きな物が所せましとあり、
お世辞にも綺麗とは言えないゴミ屋敷の狭い部屋の足場をなくしている。
部屋は薄暗く、電気もまばらにしか通ってないようだ。
彼女は子供の頃の母との思いでのオルゴールが置いてあった。
「なんですか?」
暗がりの中、女がいた。
政人が手元の映像のホログラミング装置を消すと、若い顔はおばあちゃんになった。
「言いにくいがとにかく一緒にきてほしい」
「美保」
山下は言った。
「誰?」
「俺だよ、山下だよ。君を迎えに来た」
「山下さん」
山下は美保を抱きしめた。
「やっと君を救えるかもしれない。迎えに来たよ」
彼女の意識は狂っているに近かった。
ベッドに横たわった、歳は80代だろうか、
山下の問いに彼女は泣いた。
「貴方を開放できるかもしれない。一緒に来てほしい」
「私はもう80代です」
彼女は沈黙した後、真剣な目つきで、
「システムに睨まれたら、私はそのうちこの世界の人間ではなくなる・・・。
いっその事、私を殺して」
「とにかく助かるかもしれないんだ」
「山下さん」
彼女は山下をもう一度抱きしめた。