解剖
政人はその日同僚と都市部をさけ暗い道を歩いていた。
「付けられているよ」
同僚は少し呟いた。政人は理解して角を曲がった時に同僚と建物の影に隠れた。
小声で、
「秘密警察の連中だな」
同僚は言った。
何処の連中かは自分でも察しがつく。
付けていた奴らは政人を見失い何処かへ消えていった。
政人はそいつらをじっと暗闇から姿を確認しようとした。
2人から3人の連中だった。
その日の次の日。
政人と山下は死体室に入り、死体の番号を死体室のおじいさんに伝える。
職員の座っている所の所が壁になっていて、職員の顔はよく見れないようになっている。
「889番ですな。ちょっとお待ちを」
二人はそこに案内された。
冷凍保存されているヤマクラからとってきた死体を見る。
「解剖はすみましたか?」
「ええ」
死体室のおじいさんは言う、
「意識的には超意識として生きています」
「とゆうと」
「実際の所、脳しか生きていない状態です」
政人は山下に言う、
「彼女は超意識になれたのに、誰かが人工的な処置をして、彼女の意識をシステムの中にいれたわけです。彼女はシステムの中で生き続けている。
わたりやすく言うと、つまり彼女は自分の意識ではなく、
システムの意識の中に組み込まれて出れない状態にあるわけですね」政人は言う。
すると死体は発作に見舞われる。
「死んでいるのじゃないのか」
「よく発作はおきます、心臓は動いていますよ。
彼女は死んだ事になっていますが、システムの発作です」
落ち着いてくると山下は、
「誰かが彼女の意識をプログラムに移植したのをはずさないといけない。
システムは暴走して大変危険な状態にありますし、システムの世界は現実よりも、
はるかに恐ろしい。
潜在意識の中の彼女も危険だ。我々の力でなんとかしないと」
「誰がこんな事を」
「この事に関わった人間は全員調べた。
だが時代が悪かった」と言うと、
「さすがに時代が悪いと司法の我々も介入できない情報にされる恐れもあるが、
常軌をいっしている。
「ここまで高度化できるとなると公開捜査はどうかと思うが・・・」
「超意識まで解読されているのか、彼女の仮想現実の世界の暴走は、
彼女を現実との境目がつかなくなるぞ・・・」
「仮想現実の消し方がヤマクラとかに独占されていて、私では止め方がわからない・・・」
「最初からデータを保存する必要がありますね」
それから暗い映写室で山下と政人は彼女のまだ人間の健全である記憶を映写室
で投影していた。
山下との若いころの思い出の映像もあった。
それを見て、山下は泣く。
山下と海水浴にきていた映像で、まだ彼女が幼かった頃の父と遊んでいた映像なんかがあった。
政人は彼女の記憶をペンでノートに書いていった。
「これが彼女の今残っている記憶はこれだけ?」
「残っているのはこれだけだよ」
山下は言った。