第一話:はじめまして、そして旅立ち
皆さん、こんにちは。
突然ですが俺はトラックに轢かれて目が覚めたら赤ん坊になっていました。
いや、何言ってるか分からないと思うけど俺も何言ってるか分からない。
よし、まずは状況を整理しよう。
その1
俺は誰だ?
逢沢 陸。
私立高校二年生でアニメオタク。
『コードギアス 〜反逆のルルーシュ〜』と『機動戦艦ナデシコ』、『マクロスF』の大ファンだ。
その2
どうしてこうなった?
学校の帰り道、信号を渡っていると信号無視して突っ込んできたトラックに轢かれた。
そして目が覚めたら俺は赤ん坊になっていた。
その3
ここは何処だ?
不明。
俺の家は一戸建てだがこんな広くも豪華でもない。
この事から察するに俺は他の人物に転生・憑依したらしい。
これ、なんてテンプレ?
余りにも王道過ぎるこの状況に俺はそう思った。
俺・・・もとい私がこの世界に転生・憑依してから20年が経った。
・・・何、早い? しっかり書け?
それは仕方ないだろう。作者がそこまで書く能力がないのだから。
まぁ、これまであった事を何個か紹介しよう。
一つ目
転生・憑依した混乱ですぐに気づかなかったのだが私は男では無かった、れっきとした女になった。
それを知った時はかなり落ち込んだし最初の頃は気にしていたが成長していく毎に気にならなくなった。
男の矜持? 何それ?
二つ目
私が転生・憑依したのはただの世界では無かった。
何と、機動戦艦ナデシコの世界であった。
初めてそれを知った時、呆然とした後に喜んだ。
ある意味、憧れのナデシコの世界に転生したのだうれしく無い訳が無い。
三つ目
私の家はどうやら代々続く軍人一家らしい。
父は極東方面軍ヨコハマ基地司令で私も長女として軍人になるらしい。
まぁ、その事に関しては反感とかそういうのは感じない。
転生・憑依の影響なのだろうか?
四つ目
自分の顔に何処か見覚えがあるなぁ〜と思っていたんだが。
親にコーネリアと呼ばれて直ぐ誰だか思い出した。
コードギアスに出てくるキャラクターのコーネリア・リ・ブリタニアである。
あのアニメの中で一番、好きなキャラクターだ。
因みに私のフルネームはコーネリア・L・ラルフォートである。
五つ目
私が生まれて(?)から四年の月日が経った時、私に妹が出来た。
ピンクの髪の女の子。
間違いなく、ユフィだ。
両親がなんと言う名前を付けるのかと思っていると父がユーフェミアという名前を付けた。
私はそれを縮めて原作通り、ユフィと呼んでいる。
妹とは可愛いものだ。
ユフィは一人で歩けるようになると「お姉ちゃま〜、お姉ちゃま〜」と言って後を追ってくる。
あれは原作のコーネリアでは無いが確かに癒される。
軍学校の長期休暇で家に帰れば直ぐに笑顔で出迎えてくれる。
ユフィの笑顔は軍学校での訓練で疲れた私の精神を良く癒してくれる。
ドが付く程のシスコンであるルルーシュの気持ちが良く分かった。
因みにユフィは軍人になる事はない。
知ってる人も居ると思うがユフィは優しくて人を殺せるような人間ではない。
父もそれを分かっているらしく、ユフィは普通の学生として暮らすらしい。
そんなこんなで私は軍学校を卒業した。
卒業した私たちはそれぞれいろいろなところの基地に配属される。
因みに私が配属されるのは・・・。
『火星アルカディアコロニー基地』
自分が火星配属なのかを教官を問い質したところ。
どうやら私の父、シャルが暗躍していた事が発覚した。
・・・父よ、私は貴方を今日ほど憎んだ事は無い。
私は本当にそう思った。
余談だがそれを知った母は
「貴方は大事な娘を何処に送りつけようとしているんですか!?」
と、大激怒。
「実家に帰らせて頂きます!!」
離婚まで持ち出したらしい。
それを父は慌てて止めた。
母と同じくそれを聞いたユフィも
「信じられません!! お父様なんて大っ嫌いです!!」
と、泣きながらそう叫んだらしい。
愛娘にそう言われた父は白い灰となって崩れ去ったらしい。
それを聞いた私は思った。
父よ、貴方はそれでもラルフォート家の当主で中将という歴戦の猛者なのですか?
だが、そう思っただけで同情は少しもしない。
今回は父が全面的に悪い。
家でそんな騒動があっても私の配属先が変わる訳が無い。
そんな事がある中、私の火星への出立の日が来た。
宇宙空港には父のシャル、母のリリス、妹のユフィと軍学校時代の友人達が見送りに来ている。
シャトルの時間までまだ余裕がある為、私は皆と暫しの別れの挨拶を交わしている。
最初は家族達とだ。
父はユフィの「お父様、大っ嫌い宣言」からまだ立ち直っていないらしくただ立ってるだけだ。
そういう訳で私は母とユフィと会話している。
「ごめんあんさいね、コゥ。私も知っていたならなんとか出来たんだけど」
「構いませんよ、母上。私もラルフォート家の長女で軍人です、これも任務です」
「ふふふ、強いのね」
「弱くないつもりです。・・・それに」
「それに?」
「火星に住む人たちはどんな暮らしをしているか知りたいので」
「流石は私の子ね、なら貴女の心配はいらないわね。・・・問題は、あの子だけど」
そう言って母はチラッと後ろに視線を向けた。
そこには俯いているユフィの姿があった。
私はユフィの前に立ち、話しかける。
「どうした? ユフィ」
「・・・お姉さま」
優しく声を掛けるとユフィは顔を上げた。
ユフィは目頭を赤くし涙を溜めている。
私はポケットからハンカチを取り出し、それをふき取ってやる。
「私が心配か?」
「はい、お姉さまは私の自慢で誇りです。そのお姉さまが火星へと行く、私はもの凄く心配で不安です、そのままお姉さまが帰ってこないんじゃと思うと余計に・・・」
そう言うユフィの瞳からツゥッと涙が零れた。
私は再度、それを優しくふき取りながら語り掛けるように話す。
「ユフィ、お前は私を信用しているか?」
「も・・・勿論です。お姉さまは私の憧れで目標です、いつも信用しています」
「そうだ、そして私もお前を信用している。お前は私の妹だからな」
「はい!!」
「私はお前の期待を裏切った事があるか?」
「いえ、お姉さまは何時も何時も私の期待に答え続けてくれました」
「そうだ、私はお前の期待を答え続けた。だから、今回も私を信用してくれるな?」
「はい!! 勿論です、お姉さま!!」
そう言ってユフィは笑みを浮かべた。
それを見て私も自然と笑みを浮かべる。
やはり、ユフィには笑顔が一番だ。
沈んだ顔などユフィには到底似合わない。
「あの・・・お姉さま。これを・・・」
そう言ってユフィは一つのペンダントを首に掛けてくれた。
ペンダントの蓋を開けると中には本体の方に父、母、私、ユフィの四人写真だ。
「ユフィ、これは・・・?」
「はい!! お守りです!!」
ユフィは満面の笑みを浮かべてそう言った。
その笑顔に先ほどまでの泣き顔は一欠けらも無かった。
「お姉さまが火星に行ってもご無事でありますようにと思いまして私とお母様の2人で作りました!!」
「そうか、ありがとう」
そう言って私も笑みを浮かべた。
その後、立ち直っていない父に挨拶してから友人たちと挨拶をし、私は火星へと旅立って行った。